第38話「梨音の成長」
でも、それを上回る思いがあった。
サイドミラーを見る。
そこには90号車が走っていた。
そう、梨音の成長だ。
数カ月前までレースの基本もわからなかったのに、今となってはしっかり理解しているし、マシンに対する知識も私に引けを取らない。
『菜央、現在の気温は12℃、路面温度は…』
安住代表が今の天気、路面温度を教えてくれる。
タイヤ、ブレーキを温め、レーススタートに備える。
最終コーナーから立ち上がり、33台が隊列を組んでホームストレートをゆっくりと進んでくる。
5つ灯ったレッドシグナルがグリーンシグナルに変わる。
33台が一気にレーシングスピードに加速していく。
菜央が真っ先にスタートダッシュを決め、それに続くように梨音もついていく。
33台が一斉に流れ込む1コーナー。
後続集団では接触もあったようだが、大きな混乱にはならなかった。
菜央はサイドミラーを見る。
「梨音、離されるんじゃないよ…」
ミラーにはすぐ後ろを走る90号車がいた。
レース8周目。
菜央と梨音の差が急激に縮まる。
「しまった…午前中の予選でタイヤ使いすぎた…滑ってペースが上がらない…」
菜央はカウンターステアを当てながらコーナーを脱出していく。
そして、この変化を梨音も感じ取っていた。
「代表、菜央先輩とのタイム差教えてください!」
『えっと、6周目は1.3秒差だったが、今は0.9秒!差が縮まってる!』
「チャンスかもしれない。」
梨音は菜央のマシンの背後にピッタリ張り付く。
少しの隙も見逃さない。
しかし、菜央も歴戦の猛者だ。
そう簡単に隙は与えない。
「菜央先輩、抜けない。他のレーサーとやっぱ違う。」
ホームストレートではチェッカーフラッグが振られる。
優勝は菜央。2位に梨音。3位は周静麗。
いつもの3人がトップ3を独占することになった。
「梨音、やったじゃない2位で記録更新じゃない」
「ですよね!やった!」
「おめでとう、リオン、頑張った。」
「周さん!ありがとう!」
この結果により、菜央がポイントランキングのトップに上がった。
関城とハンナはポイント圏外でレースを終え、チャンピオンの可能性は潰えたも同然だった。




