第37話「菜央、チャンピオンへ」
最終大会。
今週末、ついにKYOJO CUPのチャンピオンが決定するということでいつもより多くのファンが詰めかけていた。
今週末はいつにもましてパドックでのファンサービスが忙しかった。
あっちでサインすれば、こっちで写真を撮りたいと呼ばれ、かと思えばまたサインをしてほしい、とあちこちに呼ばれ続けた。
すでに気疲れしたような状態で2人がAZUMIRacingのピットに向かう。
「なんか、今日ファン多いね」
「だね、やっぱ、最終戦だから最後くらいは生でレースを見たいんだろうね。」
「菜央先輩は今日勝てればチャンピオンでしたっけ?」
「いや、まだわからないね。今ランキング1位だけど、まだ2位と3位の結果しだい。」
「そっか。でも、今日勝てればさらに有利になるんでしょ?」
「そうだね、今日勝てれば明日は表彰台にさえ上がれればチャンピオン。」
「やっぱ緊張する?」
「いや、もう慣れっこだよ。カートの頃からチャンピオン競ってきたし、あの時は今と違ってもっと速い男子もいたし。」
「そっか。じゃあ大丈夫だね。」
「あなたも結果出さないと、来年のシートないかもよ〜?」
「それはやだ〜!」
まるで姉妹のような2人はこのあとKYOJO CUP最終戦で大きな成果を出す。
予選はまた菜央がポールポジション、梨音も2位に続いた。
そしてここでファンたちが驚いたのが関城、ハンナが所属するシャークレーシングの低迷。
2台は持ち込んだセッティングが気温が下がりだすこの時期にミスマッチであり、タイムを上げることができなかった。
これにより、菜央のチャンピオンのチャンスが一気に近づいた。
「菜央先輩、これでチャンピオンほぼ確ですね!」
「そうね。でもわからないよ。もしかしたら私のマシンが爆発するかもしれないよ(笑)」
「それはありえないですよ〜!w」
午後、スプリントレース、スタート前。
「私をサポート?」
「そう。今、梨音は優勝のチャンスが一気に近づいてると思う。だから、私がサポートして後続を抑えて、梨音に優勝してもらう」
「やだ」
梨音は即答。
「やだよ。せっかく菜央先輩と戦えるところまで来たのに勝負を放棄してほしくない。正々堂々戦おうよ!」
「…そうね。」
そして今に至る。
『菜央、何も意識するなよ。お前はそのまま走るので十分速い。そのままだ。』
「…」
返答はない。
完全に集中モードに入っている。
『梨音、このままでも2位は最高の成績だが、今のお前なら優勝も狙える。だから、クルマを壊さないように、菜央とちょっと争ってみろ。』
「言われなくてもそのつもりですよ」
『その気持ちがあれば大丈夫だな。』
そしてフォーメーションラップが始まる。
AZUMIRacingの2台を先頭に走り出す。
菜央は今回のレースで勝つことでチャンピオンの可能性がさらに大きくなる。
そのため、少しプレッシャーも感じていた。




