第31話「過去の記憶」
第3大会。
レッドフラッグが振られている。
AZUMIRacingのスタッフたちは騒然となっていた。
彼らが見つめるモニターに映し出されているのは大破した90号車。
その光景を後ろから見ていた91号車の菜央が現場を通過しようとする。
菜央はマシンを止める。
「梨音!!」
菜央は自然とこの時初めて梨音の名前を口にしていた。
マシンを降り、梨音の90号車に駆け寄ろうとする。
しかし、彼女の足が止まる。
彼女の中にはある記憶がフラッシュバックしていた。
それはJAF-F4選手権に参戦していた頃の記憶。
あの頃の大親友とともにF4に挑戦していたのだが、岡山大会で多重クラッシュに巻き込まれる。
そこで菜央は無事だったものの、親友のマシンは横転し、燃料が吹き出していた。
それがエキゾーストか何かにかかったのだろう。
マシンは炎上。
助けようと思ったものの、恐怖で動けず。
そして、親友はその場で亡くなった。
その記憶が最速の名を持つ菜央を唯一支配していた恐怖の記憶。
「…だめ…動かないと、梨音が死んじゃう…」
菜央の足は一歩ずつ、90号車に近づいていた。
そして、菜央は梨音のシートベルトを留める金具に手を伸ばす。
「梨音!大丈夫だからね!!」
いつも冷静な菜央とは違い、必死に梨音に声をかけ続け、意識を保たせていた。
マシンから梨音を引きずり出すと、すぐに気道を確保できる姿勢にさせる。
その時後ろからメディカルカーが駆けつける。
医療スタッフが梨音をストレッチャーに乗せ、梨音をサーキットに待機しているドクターヘリに乗せていく。




