第25話「スタート」
2周のフォーメーションラップを終え、全車が隊列を整えてホームストレートに戻ってくる。
レッドシグナルがグリーンシグナルに変わる。
60台を超えるマシンたちが加速していく。
231号車もスタートしていく。
1コーナーは大混乱。
接触、スピンが多発し、コース上にマシンが反対を向いて止まっているのも見えた。
それでも、GTドライバーの大野はその状況を切り抜け、レースを続けていく。
1人のドライバーが運転できる規定時間に到達しようとしていた。
「大野、この周でピット、この周でピット。ドライバー交代、給油、タイヤ交換をするよ」
『了解』
青いBRZがピットに滑り込んでくる。
それと同時に作業が始まる。
タイヤが外され、新しいものに交換される。
給油タンクをマシンの給油口に押し付け、給油を開始する。
「颯先輩、ブレーキが少し怪しいです!強いブレーキは気をつけて!」
「あいよ!」
颯がBRZに乗り込む。
そしてBRZが作業を終え、コースへと戻っていく。
「あーい、お疲れ、どうだった?」
「そうっすね〜、やっぱ熱さが尋常じゃないですね。」
「そりゃあ、今日は34℃予想だもんな。それにレーシングカーのエンジンの熱が合わさればかなり車内が高温だよ」
実際、レーシングカーは基本エアコンがないため、車内の温度は60℃を超えてくる。
そのため熱さを和らげるには窓についているダクトから風を得るか、クールスーツを着るかになってくる。
ただ、最近のマシンには一部装備されているという話もある。
そして、ルーティン通り、菜央にドライバー交代の時が来た。
菜央はヘルメットを被り、スタンバイ。
その横で梨音がどこか落ち着かなさそうだった。
「梨音、緊張してる?」
「も、もちろんしてますよ。」
「じゃあ、1個アドバイスしてあげる。」
「なんですか?」
「緊張するくらいだったらね、自分、今日行ける気がする、くらいのことを考えておけば緊張は和らぐよ」
「なるほど。やってみます」
そして、菜央はピットに歩き出した。
入れ替わるように颯が戻って来る。
「まずいかもっす、日野森さん。ブレーキがかなりヘタってきてる」
「じゃあ、菜央のスティントが終わったら1回ブレーキ交換かな。」
「それで、義務ピットも消化できますしね」




