第22話「優秀な一家に生まれて。」
母は看護師、父は会社の重役という優秀な家系に生まれた私。
姉も東大医学部ということで一家揃って優秀だった。
しかし、私には勉強なんてできなかった。
一家とは逆にスポーツができるくらいだった。
これを家族はよく思ってくれなかった。
あるレースが私の運命を変えてくれた。
それは東京の市街地を封鎖して行われるフォーミュラEの東京e-prixについて特集された番組。
これを見た時、私はこの世界が輝いてみえた。
2人のドライバーのためにマシンを整備するメカニックたち、応援するファンたち、そして勝ったドライバーに惜しみなく注がれる祝福。
それを見て、なんて美しい世界なんだろう、と感じた。
その番組を録画し、繰り返し見ていた。
その時だった。
ブツッ、とテレビの電源が切られる。
「こんな危険なことに興味を示すんじゃありません!!あなたは勉強ができないのだから勉強をしなさい!それまでスマホも取り上げます!」
テレビを切られ、スマホまで取り上げられてしまった。
しかし、母のそんな教育方法は意味がなかった。
私も姉に次いで東大医学部を受験したが、失敗した。
浪人も許されず、母とは大喧嘩になった。
「東大にも合格できないような人間はうちの子じゃありません!!出ていって!!」
「頼まれなくてもそのつもりよ!!!!」
私は思った。
これでレースに挑戦できる。
彼女のレースに対する憧れをさらに加速させた存在がいた。
それが、F1で女性初優勝を決めた田邊飛花。
彼女が表彰台の一番高いところで輝いている姿を見て、私もこの世界で戦いたい、勝ちたい、と考えるようになった。
しかし、レースに出るための資金があるわけでも無ければ、レースチームとのつながりもなかった。
そんな時、安住食品を母体とするAZUMI Racingでレース未経験だった大野瀬成がF4で優勝を決めたことを知った。
そして安住食品に入社し、レースへの挑戦を決意する。
「なんか、うちより壮絶な人生過ごしてるじゃん。」
「そうですかね?」
「うん、私のこれまでなんて霞むよ。」
「でも、昔のことなんて関係ないですよ。今、戦えればいいんですから。」
「だね。昔よりも今だよね。」
気づけば0時を回っており、瀬成と颯もいつの間にか部屋に戻っているようだった。




