第15話「いきなり」
午後、スプリントレース。
このレースで日曜日の決勝レースのスタート順位が決まる。
33台のマシンたちがレコノサンスラップを行い、最終調整を行っていた。
『菜央、あと5分、後5分でピットレーンクローズ。もうホームストレートに向かって』
「了解」
91号車が他のチームのマシンが集結するホームストレートに来る。
コースの真ん中を走り、2番手グリッドを目指す。
その途中、9位の梨音を見つける。
梨音は明るい笑顔で菜央に手を振る。
それに菜央もちょっとだけ手を出して答える。
2番グリッドに来ると、メカニックが誘導してくれる。
マシンを降り、開会セレモニーに出席する。
チームのペアで並び、国歌を聞く。
独唱が終わり、開会セレモニーも終了する。
拍手の後、ドライバーたちは各々のマシンに戻る。
「梨音、このレース、ローリングスタートだけど、回転数に注意ね。あと、1コーナーまでに自分のポジションを探ること。接触は絶対だめよ」
「はーい!」
2人はマシンに乗り込み、お互いのルーティンをこなす。
菜央は
「勝ってる私をイメージしろ…」
目をつむり、自分が表彰台の一番高いところに立っている姿を思い浮かべる。
「よし、行こう」目を開け、コースを見る。
梨音は
「私はできる、私はできる…」
梨音は言葉に出し、自己暗示をかける。
『梨音、スタート1分前スタート1分前、エンジン始動』
「はーい」
梨音は足元にあるスイッチを押す。
すると、自分のすぐ後ろにあるエンジンが唸りだす。
『フォーメーションラップスタート、前走車に続いて』
「わかりました」
その30秒後、8位のマシンがグリッドを離れていく。
『タイヤ、ブレーキをしっかり温めて!これでもスタート直後の走りやすさ変わるよ!』
その無線のあとマシンを左右に揺らし、タイヤを温める。
そして少し長い直線に来た時、一度フル加速し、一気にブレーキをかける。
これでブレーキに一気に負担をかけ、ブレーキの温度を上げていく。
そのままゆっくりと最終セクターのコーナーをクリアし、ホームストレートに戻ってくる。
コースサイドでは「GRID」のボードを持ったオフィシャル(係員)が立っていた。
このボードを通過した後全車、自分のグリッドの上を通過しなければならない。
2列の隊列でホームストレートをゆっくりと進んでいく。
するとシグナルがグリーンに変わる。
これがレーススタートの合図だ。
33台のフォーミュラカーが一斉に加速する。
この時、先頭集団では動きがあった。
スタートと同時に菜央に対して関城が幅寄せ。
「そんなに寄ったら危ないわよ!!」
しかし、引くことを知らない関城、そのまま菜央をコース外に押し出す。
その時鈍い音と感触がステアリングに伝わってくる。
ぱっと見た時には右フロントサスペンションのアームが折れてしまっていた。
抗議の無線を菜央はエンジニアたちに送る。
「エリカ、あいつ避けられない限界まで幅寄せしてきた!!」
『了解です、シャークレーシングには後で抗議しておきます。菜央さん、怪我はありませんか?』
「怪我はないです、マシン壊しちゃってすみません。」
『いえ、あれは避けられなかったです。しょうがないです。明日の決勝レースを頑張りましょう』
「そうですね」
『エンジンを切って、マシンを降りてください。現在セーフティーカーが出動中です』
その会話を最後にマシンを降りる。




