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死して尚最強  作者: 0レンジペン
第一章 開拓者試験編
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開拓者検定試験 その一

 開拓者検定試験、縮めて開検。現在僕は開拓者協会所有の巨大な訓練場の中で、そんな試験を受けている。


 筆記試験、体力試験が終わり、次に行われる能力試験に向けて待機している最中だ。僕を含めこの場にいるのはざっと千人ぐらいだろうか。この中から一体何人が受かるのだろう。


 能力試験の特色には単に難易度が高いというだけでなく、試験毎に内容が変化するというのがある。例えば集団で試験を行うこともあれば、一人ひとり行うこともあり、会場が水辺や森林、或いは火山を模したものだったりと様々。


 内容ごとにより採点基準が違うのかと思いきや、細かな採点基準は共通だと協会側が明言している。


 もっともその細かな採点基準が明かされていないため、嘘か真かは僕ら一般人には判断つかない。


 とにかく僕が言いたいのは、こういった内容の変化が能力試験が難しいとされる要因の一端を担っているのだろう、ということだ。


 今日はなるべく簡単なのがいい。筆記、体力試験ともにベストは尽くしたがあまり自信がないからな。


「それでは皆さん! これから能力試験の概要を説明しますので、聞き逃しがないようお願いします!」


 拡声器片手にそう声を上げるのはスーツ姿の協会職員の女性。


「今から配る物をどちらかの手首に装着して下さい。無くさないようお願いします」


 そうして協会職員から手渡されたのは、デジタル腕時計のような物だった。それを左手首に付けると、突如画面に映ったのは数字のゼロ。


「これからこの場に仮想敵、モンスターを放ちます。一体倒す毎に一ポイント。中には二ポイントや三ポイントとといったモンスターもいます。ポイントが高い相手ほど強く、様々な攻撃手段を使ってきます。十分に気を付けて下さい。そして皆さんには、千ポイントを稼いでもらいます。それが今回の試験内容です」


 千ポイントと聞き、辺りがざわつき出す。一体倒す毎に一ポイント、二や三もいるらしいが、千に届くまでどれほどの時間が掛かることやら。更に言えば相手モンスターの強さも現段階では不明。なるべく高ポイントを狙いたいが相手の力量が分からないとなると、不安に駆られざわつくのも分かる。


 ただ先も上げたよう、能力試験の細かな審査基準は変わらない。千ポイントに届かなくとも、不合格になるという訳ではない筈だ。まあ千ポイント獲得がある程度の指標であるのには間違いないだろうが。


「腕に付けている端末が皆さんのポイントや敵の場所、制限時間を示してくれます。また今試験は団体で行動しても、個人で行動しても構いません。制限時間は三時間。怪我はあるかもですが、死ぬ事はないので皆さん頑張って下さい! それでは試験スタートです!」


 合図とともに、訓練場の内装が森林へと変化する。誰かの能力か、はたまた協会の技術か。場のざわめきが加速する。質問する時間すら無く、最後の試験は混乱とともに始まった。


 周りの人たちは一斉に動き出した。そう多くない限られた時間での千ポイント。スタートダッシュは大切だ。徒党を組もうとする者や、既に組んでいる者も見受けられる。


 さて、僕はどうしたものか。取り敢えずはモンスターを狩り続けるしかないだろうと、左手首の端末に目を落とす。


 画面の左上には現在の所持ポイントと残りの制限が、そして他全てを占めているのが森林へと変化した訓練場のマップ。マップには黄色い点が一つ、そして赤い点と赤と黄色が混ざったようなオレンジ色の点が幾つも表示されている。


 何の気なしに赤い点をタップしてみる。すると、『ゴブリン 一ポイント』と表示された。


 なるほど、と僕は頷く。赤い点はモンスターの位置や種族、そして倒した際に得られるポイントを表しているらしい。次いで黄色の点をタップしてみる。すると『レン』と表示された。どうやら黄色い点は僕自身の位置を表しているらしい。


 最後にオレンジの点をタップする。すると『カイト 十一ポイント』と表示された。もしかしなくともオレンジの点は他の試験参加者を表している。それに開始数分でもう十一ポイントも――


「うん? 待てよたしか……なるほどな」


 僕はふと、ある事に気が付いた。それは協会側がこの試験に組み込んだ裏のギミック。上手く使えればかなりの高ポイントを稼げるかもしれない。


「面白いが、果たして協会はそれで何を望んでいるのか」


 その真意が掴めない間は僕も他の参加者同様、がむしゃらにモンスターを討伐するとしよう。


 試験開始からすでに三分。周りには僕以外誰もいない。いい加減、スタート地点で考え込むのをやめるとしよう。


 マップを見て、一番近くにある赤い点を探す。が、どうやら近場は狩り尽くされたみたいだ。赤い点はマップの画面端にしか表示されていない。

 

 スタートダッシュは失敗したが切り替えていくとしよう。ユエの復讐を遂げる為にも。


「行くか」


 そうして僕は一番最後ではあるがスタート地点を後にした。


 

――



 場面は試験会場の訓練場から開拓者協会本部のあるビルへと移る。


 会議室と書かれた一室には、スーツ姿の男女ともう一人、灰色の長袖のTシャツに黒の丈の長いパンツ姿の非常にラフな格好をした女性がいる。その女性は黒い髪をハーフアップにし、青い瞳には目の前にあるプロジェクターの画面が映っていた。

 

「お手元にある資料の通り、今回の受験者は892名。目ぼしい人はあまりいませんが、確実に合格するのは彼女でしょう」


 プロジェクターには現在行われている能力試験の映像が映し出されている。スーツ姿の男性の発言に呼応されるよう、場面は森林でモンスターを狩る金髪の女性へと切り替わった。


「この子、臥雲さんのところの」

「流石白雪さん。ご存知でしたか」


 スーツ姿の女性に白雪と呼ばれたこの女性は、名前を白雪レイという。『吹雪の女王ブリザード・プリンセス』の異名を持つ、日本に七人しかいないオーバーロード級の一人。


 そんな彼女は審査員として協会に呼ばれていた。


「前に臥雲さんの事務所を訪ねた際、お会いしたことがあります」

「そうでしたか」

「白雪さんの言う通り、彼女はオーバーロード級臥雲ガロウさんの事務所の訓練生です。中でも実力はピカイチ。今試験も彼女にとってはあってないようなものです」

「そう」


 静かに零す白雪レイ。彼女はプロジェクターから手元の資料へと目線を落とす。


 数ページ程捲られた資料には、金髪の彼女、白銀カミラの情報が記載されていた。


 年齢、生年月日、名前、能力といった個人情報から、今までの経歴など、様々な情報が載っている資料の中、白雪レイの目に止まったのは白銀カミラの志望動機。


『両親を殺したモンスターに復讐をしたい』


「復讐、ね」

「どうかされましたか?」

「いえ何でも。それより、他の受験者はどうなのかしら」


 白雪レイが尋ねる。スーツ姿の男女は資料を捲り、何人かをピックアップしてそれを伝えた。


 だが、白雪レイの目に留まるような人物はいない。


 退屈。そう思い始めた白雪レイ。


 ボーっとプロジェクターを眺めるだけの数分が過ぎる中、彼女の退屈はついに壊された。


 とある一人の青年によって。


「彼は?」


 突如声を上げる白雪レイ。


「彼というのは、この黒髪の青年のことですか?」


 プロジェクターの画面には、ボサボサ頭の黒髪の青年が映っていた。青年は多数のモンスターを一人で相手取り、白銀カミラ同様、ただ黙々と狩りをしていた。


 モンスターの強さはそこそこ。もっと言えばかなり弱いよりだろう。


 この青年は協会がマークしてた人物ではない。スーツ姿の男女も、白雪レイのリアクションに少しだけ懐疑的であった。


「あっ、いました。えーっと名前は秦谷レン、年齢は二十四歳で、能力は物体の操作だそうです」

「物体の操作?」


 白雪レイは手元の資料を捲り、秦谷レンのページを探す。


「いた」


 秦谷レンのページを開き、彼の能力を確認する。そこには確かに能力『物体操作』と記載されていた。


 おかしい。白雪レイはまず思った。


 本来モンスター相手には銃火器といった人間が生み出せる兵器は通用しない。もっともそのモンスターの強さによって変わるところではあるし、魔導具という例外なんかもあるのだが。


 ただでさえ銃火器が効かない相手に、ステゴロが通用する筈がないのだが、彼は素手でモンスターを倒している。


 白雪レイは彼、秦谷レンを見た際、自身のパワーを上げるタイプの能力だろうとすぐに判断した。


 なにせ彼は素手でモンスターを倒しているのだから。


 しかし実際の彼の能力は物体の操作ときた。


 いくら相手が弱いから、いくら仮想敵だからとはいえ、能力でもないのにモンスターを素手でワンパンする人が何処にいるだろうか。

 

「秦谷レン……ね」

 

 白雪レイは小さく笑みを零した。

補足 

 訓練場の内装を変化させたのは、協会職員の『マツマエ』さんと『ハタミ』さんの能力です。一部協会の技術も含まれます。

 またちろっと出た魔導具についてですが、これは追々詳しい説明があります。

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