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死して尚最強  作者: 0レンジペン
第一章 開拓者試験編
5/26

揃った駒

今回は少し未来のお話です。

 カツン、カツン。


 月明かりしかない、薄暗い廊下を進むヒールの乾いた音。


 その音が向かう先には一つの大きな扉。


 扉の上には会長室と達筆な字で書かれた標札が飾られている。


 コンコン。


 そう扉を叩くのは、赤いヒールを履いた、深い紫色の髪をしたロングヘアの美しい女性。


「入りたまえ」


 扉の先から聞こえてくるのは低く渋い男性の声だった。


「失礼します」


 女性は中へと入り、大きな窓の前で佇み夜景を眺めている人物の側へと歩み寄った。


「会長にお話ししたい事が」


 会長と呼ばれた男性は白髪の老人だった。が、その風貌はとても老人とは思えないものだ。若者と引けを取らない、いやそれ以上の筋骨隆々なその身体。何よりその圧倒的なまでのオーラ。それらがこのご老人が強者であることを表している。


「先日起きた、葛城ハクア氏による――」

「すでに何回も聞いたよ。こちらとあちらを繋ぐ門が崩壊し、モンスターが溢れ出てくるゲートブレイク。それにより死者三十七名、重傷者百二十九名、行方不明者二百九名を出したハクアくんによる魔王城掃討作戦。実に痛ましい事件だ」

 

 整えられた顎髭を人差し指の腹で撫でながら呟く会長と呼ばれた男性。彼のその背中はどこか怒りを感じるものがあった。


「それが私に話たいという事なのかな?」

「概ねその通りでございます。が、私がお話ししたいのは、魔王城掃討作戦に参加していた秦谷ユエという開拓者の事です」

「秦谷ユエ……聞き覚えのない名だな。ランクは?」

「シルバーです」

「ほう……」


 窓辺で佇んでいた男性は、部屋の中央部にある大きなソファーへと移動し深く腰掛けた。そして扉の前の女性へと視線を送る。


「その秦谷ユエさんがどうしたのかな?」

「例の一件の報告書によると、彼女に覚醒者の疑いが」

「覚醒者か……なるほど。それは面白い」


 覚醒者とは、能力が更なる進化を遂げた開拓者のことを指す。覚醒の条件は判明しておらず、極めて稀な例である。覚醒後の能力は個人差があれど覚醒前と比べ強大なものになる。


「その彼女は今どこに?」

「魔王城掃討作戦で亡くなられたと」

「……そうか。惜しい人材をなくしたな」


 少し落胆するような、暗い表情を見せる男性。そんな様子を見ると女性はこう続けた。


「次いでお話ししたいのは、秦谷ユエさんの兄、秦谷レンについてです」

「秦谷レン?」

「先日新たに開拓者となった彼ですが、とても気になる点が」

 

 開拓者になる為には開拓者協会の試験を受ける必要がある。試験内容は能力試験と学力を測る筆記試験、体力や戦闘スキルを測る体力試験の三つ。それら一つひとつを百点換算し、合計三百点満点で百三十点を超えれば開拓者として認められ、点数をもとにランクが振り分けられる。


 試験の中では能力試験がもっとも難しいとされ、オーバーロード級である葛城ハクアは九十六点。満点を叩き出したのは過去に一人だけ。


 会長と呼ばれるこのご老人。現、開拓者協会会長である山田巌龍だけである。


「そういえばたしか、能力試験中にひと騒ぎあったと聞いたが……」

「仰る通り、試験会場に門が現れゲートブレイクがありました。そこからは黒い角を生やした人型のモンスターが現れたとか」

「黒い角のモンスター?」


 女性は手に持つバインダーから一つの資料を取り出す。


 資料には目つきの悪いボサッとした黒髪の青年、秦谷レンの顔写真と能力試験中に起きた騒動について記されていた。


「この彼が秦谷レンくんかね?」

「はい。そして彼がゲートブレイクにより現れた黒い角のモンスターを追い払ったと報告書には。また黒い角のモンスターは五英衆と名乗ったそうです」

「!?」


 突如、会長の表情に映し出されたのは驚愕の二文字。 


 女性は続ける。


「先日の魔王城掃討作戦に突如として現れた六体のオーバーロード級のモンスター。それぞれ赤、青、緑、白、黒の角が生えたモンスターが五英衆と名乗っています」


 魔王城掃討作戦で多数の死傷者、行方不明者を出した原因として、突如として現れた五英衆と名乗る五体のオーバーロード級モンスターともう一体。青黒い角の生えた、五英衆と名乗ったモンスターをも超えるオーバーロード級のモンスターの存在が挙げられる。


 葛城ハクアらはこれらに大敗を喫した。

 

 また上記のモンスター達は開拓者協会と政府により極秘とされている。


「……今回の一件は魔王城掃討作戦の再来とでも?」

「はい。さらに報告書によると、黒い角のモンスターは山田巌龍会長と葛城ハクア氏を狙っていたそうです」


 山田巌龍は深く頷き思考する。


「五英衆と名乗るオーバーロード級のモンスター。あの葛城ハクアくんですら敗北した一角を追い払った秦谷レンくん。そして……」


 山田巌龍は力強く立ち上がり、再度窓辺へ移動した。


「……魔王城掃討作戦の再来。近い内に何か大きな戦いが起きるかもしれないな」

補足

 「極秘なのにユカちゃん喋ってるやーん」と思う方もいるかもしれませんが、極秘とされたのはユカちゃんが秦谷レンに喋った後のことです。またユカちゃん以外にも喋っている人はいるので噂話としては広まってます。

 政府と開拓者協会はそうした噂話にはノータッチで、魔王城掃討作戦の被害はあくまでも大規模なゲートブレイクのせいだった。というスタンスを取っています。

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