表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死して尚最強  作者: 0レンジペン
第一章 開拓者試験編
4/26

目標は開拓者

「どっひゃー。こりゃ酷え有り様だぜ」

「本当ですね。うわ、新発売のお菓子が……勿体ない」


 酷く荒らされたコンビニの中で、そんな会話を交わす二人組の男。一人は皺や白髪の目立った、老人というにはまだ少し若い渋い声の男性。もう一人は髪を綺麗な七三に整えている眼鏡の青年。


「お疲れ様です。沙汰仲警部。それと……」

「本日から能力犯罪対策課に異動となりました、原っぱの原に漢字の八とかいて原八です。よろしくお願いします」


 二人組の男、沙汰仲と原八は警察だった。


「それで、害者の名前と容態は?」

「害者は通報者であるこの方です」

 

 警官に促されて、沙汰仲と原八は目線を横へスライドさせる。そこにはコンビニのロゴが入ったシャツを着た、ポニーテールの小柄な女性店員が佇んでいた。


「彼女の名前は杉沢アカネ。年齢は二十三歳で、夜勤をしていた際に――」

「ちょっ……ちょいと待て」


 警官の説明を遮るように沙汰仲は声を上げた。その様子はどこか混乱しているように見える。


「害者はここに倒れていた男じゃないのか? さっき救急隊の奴から顎の骨が砕けていたって聞いたぞ?」

「ああ、その人が犯人です」

「何?」


 混乱する沙汰仲に警官は説明した。先程杉沢アカネを事情聴取した際に聞いた話を。


「犯人の名前は五味京馬。最近多発している連続コンビニ強盗事件の犯人だと目を付けられていた人物です。能力は頭髪を刃物へ変化させるもの。

 午前四時二十五分、五味はこのコンビニに来店。強盗目的だと思われます。実際に、レジから金を抜き取るところが、防犯カメラに映っていました」

「五味京馬……僕も聞いたことがあります!」

「……てことは何か? そのお嬢ちゃんが五味をボコったのか?」


 原八の発言をスルーして、沙汰仲は警官に尋ねる。すると警官は首を横へ振った。再度説明を続けようとする警官を遮って、杉沢アカネが口を開いた。

 

「助けてくれたんです。フードを被った長身の若い男性が。レジのお金を取られて、襲われそうになった私を」

「杉沢さんの言う通り、防犯カメラには五味と対峙する男性が映っていました。フードで顔は見えませんでしたが……」

「フードで顔がって、そいつは今何処に?」

「他の警官が捜索に当たっています。それより聞いて下さい。その男性、とても変というか、もしかしたらとんでもなくヤバい人かもしれません」

「何? とんでもない犯罪者なのか?」


 警官の含みを持った発言に沙汰仲と原八は喰らいつく。

 

 警官は一呼吸間を置いて話を続けた。


「三つの能力を使っているみたいなんです」

「何!?」


 沙汰仲の大声がコンビニの店内に響き渡った。



――



 アパートの階段を上っていくと、僕の部屋の前に立つ見覚えのある姿が見えた。


「ヒビキ」


 僕がそう溢すと、ヒビキの視線が僕の方へ向く。


「あれお前レンか? ええ! どうしたんだよめっちゃ背伸びてるじゃん! それになんかマッチョメン……大人にも成長期ってあるのな」


 早口で喋るヒビキに指摘されて、僕は自分の身体が少し変化していることに気が付いた。


 前はもっとナヨナヨとしていたのに、服を捲ってみれば腹筋が割れていたりと、所々に筋肉がついている。


 自分ではあまり気付かないけれど、背も伸びているらしい。通りで目線が高いと感じる訳だ。


「どうしたんだヒビキ。こんな朝早くから」

「どうしたもこうしたも、昨日受けてきたんだよ。開拓者になる為の試験。合格してるかはまだ分からないけれど、一応報告しようと思って」

「そうか。合格しているといいな」

「まあな……って本当に言いたいのはそうじゃない。俺……昨日協会で聞いたんだ」

 

 ヒビキは俯きながら静かにそう言った。


 何かを言い出すのに躊躇している様子で、どこか気不味さを感じさせるような雰囲気を醸し出していた。


「聞いたって、何をだ?」


 僕が訊くと、ヒビキは顔を上げ、覚悟を決めた表情でゆっくりと言葉を紡いだ。丁寧に、まるで壊れ掛けている物を扱うかのように、慎重に。


「レンの妹の、ユエちゃんの話」

「ユエの……」

「俺さ、お前に相談したあれの返事待っててさ。まあユエちゃんの都合とかあるだろうし、いつになったら来るのかなーって。んで待ち切れなくて昨日試験行って、俺がアドバイスなしに合格したら、レン驚くだろうなあって思ってたら、免許の更新に来てたおっちゃんと仲良くなって色々話してたわけよ」


 僕はヒビキの話をただ静かに聞いていた。


「そしたら魔王城掃討作戦の話になって、そん時はまだ、そういえばニュースで酷い事件だったって言ってたなあ程度にしか思ってなかったんだけど、そのおっちゃんが作戦の生き残りらしくて、話聞いてみたらおっちゃん、ユエって言う雷の力を使う人に助けてもらった、って」


 そう言えばユカちゃんはユエが色んな人を守ろうとして死んだって言っていたっけ。

 

 そうか、ユエは守り切れたのか。


「そこでユエちゃんが亡くなったことを知ったよ。それ聞いて、俺居ても立ってもいられなくなって……今は一人にさせた方がいいかなとか考えたけど、やっぱ友達として励ましてやりたいなって」


 なるほど。ヒビキなりに色々と僕の事を考えてくれたのか。有り難いな。


「ありがとうヒビキ。僕はもう大丈夫だよ」

「本当か?」

「ああ。それに変な気遣いさせてすまなかった。礼と言ったらなんだけど、お茶でも飲んでいくか?」

「いいよいいよ。俺この後用事あるし」


 ヒビキは先程までの少し暗い表情とは違って、いつも通りの明るい表情へ戻った。


「それじゃあ俺もう行くよ。悪いな、こんな朝早くから」

「全然。また遊びに来いよ」

「おう! またな!」


 軽く会話を交わした後に、ヒビキは足早にアパートの階段を下り、何処かへ駆けていった。


 そんなヒビキの様子が見えなくなり、僕は部屋へと入る。


 鍵を閉め、靴を脱ぎ、机にコンビニで買ったものを置く。次に洗面台の方へと移動し、手を洗い、うがいをしてからパーカーを脱ぐ。


 鏡越しだと尚の事。全くもって筋トレなんかしたことがないのに、身体中ムッキムキになっているのがよく分かる。


 この変化もあれによるものなのだろうか。なんて思いながら白色のダボッとしたシャツを着て僕は朝飯を食べた。おにぎり二個とクリームパン一個。そしてシメの乳酸菌飲料を一本。


「ご馳走様でした」


 ゴミを片付け、歯を磨き、次に行うのは例のあれについての考察。


 椅子に深く腰掛けて、思い起こすのはコンビニでの出来事。金髪の男の手を掴み、喉を貫かれ意識を失う。そして目覚める。この二つの出来事の間に起こったもの事を。


「グッドラック……幸運を、ね」


 思い出せるのは、暗い空間にゲームのステータス画面のようなものが存在していたということ。それと機械音のような女性の声と最後に聞こえたGood luckの一言。


「喉を貫かれ、たしかに僕は死んだ。でも気付いたら生きていた。それにあれ……これが僕の能力か?」


 分からないことだらけである。けれど、試してみる方法は存在する。


 スマホのカメラアプリを起動しビデオ撮影を始める。そして箱ティッシュで位置を固定し、椅子から立ち上がると台所にある包丁を手に取った。


 それを自分の喉元へ軽く押し当てる。肌に包丁の刃の冷たい感覚が広がる。このまま力を込めれば――


「成功したら復活。死んでもユエに会える。どっちに転んでも、僕からすれば当たりだな」


 僕はそう呟くと、そのまま包丁で自分の喉元を掻っ切った。




――




【1時間42分の人生お疲れ様でした】


【報酬として1時間42分を秒に換算した6,120ポイントを贈呈します】


【ポイントの獲得を確認しました。身体能力値の振り分けに進みます】


『パワー 126146650

 スピード 126146650

 体力 126146648

 反射神経 126146652

 耐久力 126146647

 持久力 126146649』


【自動振り分けを利用しますか? はい・いいえ】



【規定の時間内に返答がなかった為、自動振り分けに移行します】


『パワー 126147670

 スピード 126147670

 体力 126147668

 反射神経 126147672

 耐久力 1261467667

 持久力 126147669』


【振り分けが完了しました】


【全ての数値が基準を超えている為、能力『無限・物体操作』と『無限・分裂付与』のレベルがマックスになりました】


【Restartの準備を開始します】


【Restartの準備が完了しました。これより、Restartに移行します】


【それでは引き続き人生をお楽しみ下さい。Good luck】




――




「ハッ――」


 息も絶え絶えに意識が覚醒した。まただ。また僕は蘇った。


 喉元を触るが傷はない。血が飛び散った様子もない。


 手に握られている包丁を台所へ置き、急いで撮影した映像を確認する。カメラに映っていたのは、喉を掻っ切り血潮を吹き上げた後、まるで時間が逆戻りしているかのようにして生き返った僕の姿だ。夢なんかじゃない。僕は死んで、生き返っている。それも少なくとも三回。


「それに見えたぞ。今度はハッキリと」


 呟き、僕はまた椅子に腰掛けた。


 そして先程体験したものを振り返る。


 暗い空間に浮かび上がった文字とステータス画面。まず死んですぐに、どのくらいの時間生きていたのか説明。次にその時間を秒数に換算した分のポイントの獲得。


 ポイントの獲得後、身体能力値という僕のステータス画面に移行。パワーとかスピードとか七つ程の項目があったが、どれもとんでもない桁の数値だった。


 その後機械音のような女性声で振り分けがどうのこうの。勝手に自動で振り分けられた後に全ての数値が基準を云々かんぬ。


「僕の能力は不死だと思っていたが、たしか『無限・物体操作』と『無限・分裂付与』だっけか。二つって都市伝説でしか聞いたことないぞ」


 となると死なないのは何故なのだろうか。三つ目の能力か? というか三つ以前に二つの能力を持っている人なんか見たことも聞いたこともないのだが……。


 たしか最後にリスタートの準備が完了したとか、リスタートに移行とか言っていたっけ。


 正直謎だらけである。


 とにかく、これで僕が死なない事が証明されたという訳だ。これなら思う存分に復讐に臨める。


「取り敢えず、目先の目標は開拓者になることか」


 死なないことと、死んだら謎のステータス画面が出てくる。今回はそれだけ分かれば十分だ。本音を言うならもう少し踏み込んだ事が分かれば、なんて思っていたが、体験してみて分かった。今考えても埒が明かないだろうという確信がある。これらは追々考えるとしよう。


 それにメインはユエの敵討ち、復讐なのだ。あんなのは二の次。ぶっちゃけ力が貰えるなら、あれが神の仕業だろうが悪魔の仕業だろうが関係ない。


 ユエを殺した奴を殺す。それだけだ。


 勿論、僕はひたすらに暗中模索するつもりはない。それに相手はモンスター。モンスターを探し、殺すには開拓者という肩書は絶対。


 ユエを殺した奴の手掛かりを得る為にも開拓者になる他ない。


「ユエ、お兄ちゃん開拓者目指してみるよ」


 天国のユエに向かってそう決意し、僕は試験に向けての準備を進めた。

補足

 能力『無限・物体操作』は無限の数の物体を操ることが出来ます。例えば石を上げるとイメージすれば、ほぼ誤差なしでその通りに操れます。また数が増えても「前へ飛ばす」や「浮かせて落とす」といった単純な操作なら大丈夫ですが、「これは前に、これは上から、そしてこれは地面の中から……」と操作が増えるとその分脳のリソースを使います。

 

 能力『無限・分裂付与』は物体に無限に分裂する能力を付与出来ます。例えば刀に使うと、刀身が折られたとしても二本に分裂します。片方が破壊されたら、そこからさらに分裂します。上記の能力『無限・物体操作』と相性がよいです。また能力を解除すると元に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ