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死して尚最強  作者: 0レンジペン
第二章 開拓者編
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天を撃つ剣豪と復讐の孤独火 その四

「誰だ、あんちゃん――」


 刹那、青い角のモンスターにより剣天聖目掛けて斬撃が飛ばされる。剣天聖は右手で抱えていたハヤテを左手に移し、空いた右手ですぐさま刀を抜き斬撃を往なす。


「敵……ってことでいいな」

「ああ。勿論さ」


 青い角のモンスターは右手を天に翳して振るう。空を斬るその勢いが斬撃を生み出し、剣天聖へ向かって疾風の如く突き進む。


「けっ、変な技を使いやがって」


 剣天聖もまた同様。刀を振るい青い角のモンスターへ斬撃を飛ばす。二十メートルほど離れた両者の間で斬撃同士がぶつかり合い相殺される。


「俺はお前なんかに構っている暇はねえんだよ」

「なるほど。じゃあこれで構ってくれるかな」


 青い角のモンスターが指を鳴らすと、ゴルドドゥービィの身体が元に戻る。


「このゴルドドゥービィ君の毒は特別製でね。一度でも彼の毒が体に入ったら、いくら解毒しようが、彼の意思次第では、何度でも毒を体内に生み出すことが出来るんだ。こんな感じでね」


 次の瞬間、剣天聖が左手に抱えていたハヤテとユウキが叫び声を上げて藻掻き苦しみだす。


「まっ、僕が無理矢理蘇らせたから、彼の意思じゃなくて僕の意思で、だけどね」

「テメェ……」


 剣天聖は青い角のモンスターを睨見つける。反対に奴は不敵な笑みを浮かべていた。


「さて、これで僕に構ってくれるかな? 僕を殺さないと、君が抱えている人たちは毒で死んでしまうよ。苦しいだろうね……まあ、それはそれで面白い――」


 刹那、剣天聖は青い角のモンスターの眼前へ移動し、天高く掲げた刀を振るう。


「『常來天撃流』、天砕斬」


 モンスターはそれを片手で受け止める。だが、どうやら力は剣天聖の方が上のようだ。受け止めた腕ごと、青い角のモンスターの身体は縦に裂かれる。それだけじゃない。


「天昇」


 臍の辺りまで進んだ剣天聖の刀は、その刃を上へ向けて、天を昇るようにしてモンスターの身体を斬り進む。


「アハッ。強いね。でも――」


 ブイの字のように身体を斬られた青い角のモンスター。彼はすぐさま斬り口を再生させて、剣天聖の腹を蹴り飛ばす。すかさず剣天聖は刀の側面でそれを受け止める。


 本来であれば刀が折れても可怪しくない衝撃。それを受け止められたのには理由がある。


 剣天聖という男は、自身の筋肉のリミッターを自由に解除出来るという特殊体質である。また加えて人よりも二倍も三倍も力が強いのだ。


 故に剣天聖が使う刀はそれに適したものとなる。剣天聖の鬼神(オーガ)とも言えるその剛力に耐え得る刀。


 それが剣天聖の愛刀『聖天』。魔導具の一つであり、剣天聖の腕力に耐えれる『聖天』が蹴り程度で傷が付く、ましてや折れる筈などない。


 剣天聖は後ろへ飛び、いつの間にか地面へ寝かせた三人を背に刀を構える。


「この強さ。それにその青い角。なるほど、協会が言っていた五英衆ってのはお前だな」

「へぇ~。僕のこと知ってるんだ。やっぱり情報は共有されているか……」


 青い角のモンスターは軽く頭を下げて剣天聖に告げる。


「いかにも。僕は偉大なる御方により生を受けた五英衆が一人、ハリーユ。君は?」

「剣天聖、テメェを殺す奴の名だ」

「そう。じゃあ本格的に――」


 青い角のモンスター、ハリーユは少し間をあけて続ける。


「――始めようか」



――



「『常來天撃流』、天砕斬・桜」


 剣天聖の千をも超える斬撃をハリーユは正面から食らう。刻まれた身体は瞬きよりも速く再生し、ハリーユは剣天聖へ黒い火球を放つ。


「チッ……面倒くせぇ手品だぜ」


 剣天聖はハリーユから少し距離を取ると、火球を斬り刻む。二十数個に分かれた火球は、勢いを失い地面へ落ちるとともに大きく爆発する。


 耳を劈く轟音が洞窟内に響き渡る。煙が双方の姿を隠す。だがそれは関係ない。オーバーロード級開拓者、そして五英衆ともなると、視界がなくとも音と気配だけで十分。

 

 未だ晴れることのない煙の中、剣天聖は目の前を薙ぎ払う。


「おっと危ない」


 剣天聖の刀の勢いを腕の肉で受け止めるハリーユ。


「じゃあ、これはどうかな」

「あん?」


 彼はそう零すと、まるで霧が風で流されるかのようにふわりと姿を消した。剣天聖は辺りに視線を動かし、五感でハリーユの気配を探る。


「――ッ!? そこか!」


 姿を消したハリーユによる背後からの手刀と、剣天聖の愛刀『聖天』が火花を散らしてぶつかり合う。お互いが一歩も譲らない力のぶつかり合い。


 互角のままでは埒が明かないと悟った剣天聖は、筋力のリミッターを十パーセントほど外す。二メートルを超える剣天聖の身体が少し膨張する。


「これは……想定外」


 剣天聖は勢いそのままにハリーユの右半身を切断する。しかし、そこまでのダメージを与えてもハリーユはすぐに再生する。


 ここまで来ると剣天聖は思考する。奴の核は一体どこにあるのか、と。先程身体を斬り刻んだ時も、今さっき右半身を切断した時も、それらしきものは確認出来なかった。


「核がないタイプか?」とも考えるが、ハリーユの脳や心臓は既に斬っている。だが目の前のモンスターは再生を続けるのだ。違和感。剣天聖の脳内にそんな三文字が浮かぶ。


「まあ、俺は斬ることしか能がねえ。分かるまで斬り続けるだけよ!」


 独りごちる剣天聖は刀を一度鞘にしまう。先程から苦しみ続けている弟子たちの様子を見るに、この戦いにあまり長くは掛けられない。

 

 なら、と剣天聖は深く呼吸をする。目を瞑り、全身の力を抜き、心身を落ち着かせる。


 そんな様子の彼を見て、ハリーユは何か来ると軽く防御態勢に入る。


「『常來天撃流』……奥義――」


 剣天聖はそう呟くと、瞬時に全身の筋力のリミッターを解除する。一回りも二回りも巨大化する剣天聖の身体。


 刹那、剣天聖の姿がハリーユの視界から消える。「何かまずい」と直感したハリーユは防御態勢よりも、先と同じように身体を霧に変化させることを選ぶ。


 だが遅かった。


「――天聖!!」


 ハリーユはそこで息絶えた。



――



 夕暮れ時。赤や青、黄色や白といった様々な花が咲く野原の小さな丘の上。一本の巨大な木が佇むそんな丘には、二人の幼い男女がいた。


 白髪の女の子は木にもたれ掛かり小さく歌っている。同じく白髪の男の子は、彼女の歌を聴き、木の根を枕代わりに寝そべる。


 ゆったりとした時間がその場を流れる。


「あら? どうしたの■■■■」


 少女が尋ねる。


「いや、なんてことないさ。ただ、君の歌を聴いているこの時間が、とても幸せに思えて嬉しいだけ」

「ふふ。■■■■ったら、私の歌がそんなに好きなの?」


 男の子は起き上がると、少女の顔を見て満面の笑みを浮かべ答える。


「ああ。大好きさ」



――


 

「――いやー今のは本当に死ぬかと思ったよ」


 剣天聖の渾身の一撃である奥義『天聖』。何十、何百、何千倍にも強化された筋力から放たれる天から振るわれる一撃は、その衝撃波だけで対象を消し炭にする威力を持つ。


 斬っても核が現れないのなら、その存在ごと斬ればいい。


 そんな一撃を受けて尚、ハリーユは生きており、現在身体を再生させている。


「君は僕の核がどこにあるのか不思議なんだろ? 特別に答えてあげるよ」


 剣天聖とハリーユは向かい合う。


「僕は核がない訳じゃない。動かしているんだ。君の斬撃を避けるよう、君が気が付かないよう、上手い具合に核を動かして躱しているのさ」


 ただ、とハリーユは言葉を続ける。


「先の一撃は僕の全てを消し炭にせんとするものだった。だったら体内で核を動かしても意味がない。避けようがない。だったらと、僕は核を身体の外に出したのさ。核があれば、身体がいくら消し炭になろうが、それを中心に再生出来るからね」


 完全に身体を再生しきったハリーユは剣天聖に言う。


「それで、さっきのが君の本気かな? だったら君は僕には勝てない」

「分からねえだろ……」

「そう。でも早くしないとお仲間が死んじゃうよ?」


 ハリーユ、剣天聖ともに構える。


「もっと本気で来ようよ、人間」

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