表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死して尚最強  作者: 0レンジペン
第二章 開拓者編
25/26

天を撃つ剣豪と復讐の孤独火 その三

「まったく……俺は機械なんて分からねえってあんだけ言ったのによぉ。変な物持たせやがって」


 そう吐き捨てる剣天聖の右手には、振動し、甲高い音を発する端末が握られている。鋭い眼光で見据えるのは青白く光る巨大な門。


「まあ、弟子たちが助け求めてんだ」


 剣天聖は手に持つ端末を握り潰して無理矢理音を止める。そして腰に携えている刀に軽く手を掛けて、目の前の門へ足を動かす。


「大将として、久しぶりに暴れてやろうじゃねえか」



――



 目の前の白髪の男、いやモンスターを見据えつつ僕は考える。モンスターも生物。脳や心臓が無くなれば死に至る。だが先程、奴の口より上を消し飛ばした筈なのに、何事もなかったかのように再生しピンピンしている。


 一体何故か。僕同様一度死んでからの復活って感じじゃない。となると脳が無くなることは奴の死に直結しないのか。はたまた別の理由か。


 そう言えば、ついさっき殺した全身包帯まみれのモンスター。あれの顔面を消し飛ばした時と、目の前のモンスターとでは手応えが違った。


 包帯の方は肉の中に硝子の様な異物が混じった感じだった。

 

 それが関係しているのか否か。まあ簡単に死なないのは有り難い。色々と訊き出す過程で勝手に死なれたら困るかならな。

 

「――ふんっ」


 白髪のモンスターの眼前へ移動し、死なない程度に力を込めて右のストレートを放ちモンスターの顎を貫く。


 次いで重心は左足まま、反時計回りに身体を捻り、右脚を高く上げモンスターの蟀谷に蹴りを入れる。


「いきなり来るね」


 だが、それは防がれる。モンスターはまるで時が遡るかのように再生する顎を右手で抑え、左手で僕の蹴りを受け止めていた。


 しかし、そんな事は僕からすればどうでもいい。死なない程度に、と加減をしていたが、何も五体満足じゃなくてよい。


 半殺し、いや九割殺しぐらいが目標だ。よって、こうも容易く受け止められるのなら、蹴りの力を上げるだけ。


 下半身全体に力を入れ、僕の蹴りを防いでいる腕をへし折り、そのまま腕越しに蟀谷を蹴り飛ばす。


「――グッ!?」


 ボールに弾かれたボーリングのピンのように地面を跳ねながら真横へ飛んだ白髪のモンスターは、途中で体勢を整えて起き上がると、先程までの余裕そうな表情とは打って変わって、鋭い眼光で僕を見据える。


「いたたた……」


 皮一枚だけ繋がっている左手を右へ左へと振りながら呟くモンスター。


「強いなあ〜。今の僕じゃ勝てないや」


 なんて零すモンスターへ一歩、また一歩と歩みを進める。途中で強く踏み込み僕は駆け出す。再度右の拳を握り込み構える。そんな時にモンスターは三度呟いた。


「まあ、()()()ならね」


 突如、頭のてっぺんが重くなる。まるで透明且つ巨大な掌に上から押し潰されているみたいだ。


 てっぺんの毛先から、その重みは徐々に下へと移動していく。すぐさま身を後ろに引くと、けたたましい音ともに先程まで僕が立っていた地面にクレーターのような凹みが生まれる。


 顔を上げて視線をモンスターへと向けると、奴は懐から黒く小さな塊が入った小瓶を取り出してそれを噛み砕いた。

 

「ウググググ……ウガァァアアアアア!!」


 咆哮とともに何処からか現れた黒い稲妻が奴を包む。体格が一回りも二回りも大きくなり、咆哮と黒い稲妻が辺りの空気を震わす。


 突如として奴が変化した原因はあの小瓶の中身だろうか。なんて考えている合間にもモンスターの咆哮は止まらない。


 一応の為、寝かせている彼女たちを囲うように、周囲の石などを操り簡単なシェルターを作る。


「どうだ秦谷レン!」


 シェルターの完成とモンスターの咆哮が止まるのは同時だった。


「これがあの御方の血液から生成された強化剤の力! 今の僕は、かの五英衆に匹敵、いやそれを上回るほどの――」

「御託はいい。さっさと終わらせるぞ」

「ハハハ。今のうち言っておきなよ、人間」


 乾いた笑い声を響かせると奴は姿を現した。否、姿を現したと錯覚してしまうほどのスピードで動いた。あの巨体で。

 

「どうだいこのスピード! 君に追えるかな?」


 天井や壁、地面など次々に移動しながら僕の周りを駆け回るモンスター。僕はそんな奴の動きを、ある程度目で追いつつ佇む。


「これでもまだ、調子のいいことが言えるか――な!」


 刹那、奴は天から飛び掛かり、その巨大な右手を力強く振るい、僕を襲った。



――



 同時刻、場所は都内から約四百キロ離れたO府へと移り変わる。


「せやかておっきな門やな」

「ランクはプラチナやったっけ?」

「ああ。張り切っていこうやないか」


 そう言葉を交わす三人は、後ろに三十人を引き連れて、目の前の巨大な門の中へと足を動かす。


 それから僅か数分の出来事であった。中に入った内、二十六名のプラチナ、ゴールド級の開拓者たちが、七名の遺体を残して行方不明になったのは。


 また同時刻のF県。ここでもプラチナ級の門が発生し、対処に向かった三十七名の内十二名が死亡。二十四名が行方不明。そして奇跡的に逃げ延びた者が一名。


 唯一の生存者である彼は後日語った。


「あれは、怪物……いや………悪魔だ……。悪魔が………仲間を殺して……連れ去って……悪魔が……悪魔がぁぁぁああああ!!」



――



「……っておいおい。こりゃ一体」

「剣天聖……さん」


 突如として現れた剣天聖に驚き、呼び捨てになりかけたところをなんとか回避する。流石に相手はオーバーロード級。形だけでも敬意を忘れたらいけない。


「その悪趣味な肉塊は?」

「これですか? これは……」


 剣天聖に指摘され、僕は右手で持っているものに目線を落とす。両手と下半身をねじ切り、再生出来ないように切り口に石を詰められ、達磨のようになったあの白髪のモンスター。


 僕はそいつの髪の毛を掴み、地面を引き摺り回していた。


 一体どう説明するべきか。なんて頭を悩ませていると、僕より先に口を開いた人物がいた。


「先生……」

「アカリ!」


 剣天聖の視線が僕から端で寝かせていた赤髪の彼女へと移る。どうやら彼女の名前はアカリと言うらしい。


 剣天聖はアカリの下へ駆け寄ると、ふらつきながらも立ち上がろうとする彼女の肩を支えてしゃがみ込む。


「大丈夫かアカリ。それに他の奴らは……」


 剣天聖はアカリに問う。だが彼女は答えない。今にも泣き出しそうな顔をして、剣天聖から目線を逸らす。ただ、その表情から剣天聖は何かを受け取ったのだろう。


 ふらつく彼女を再び寝かせると剣天聖は立ち上がる。その形相はまるで鬼を思わせるほどに怒りに満ちていた。


「……秦谷レン。頼まれてくれるか」

「ん?」


 剣天聖は静かに続ける。怒りを無理矢理抑え込むように。


「アカリと、そこの彼女たちを外へ避難させてくれ」


 剣天聖の頼みに、僕は少し答えを考え、右手で持っているものに目線を落とす。


 こいつからはまだ、青黒い角のモンスターについて訊きたいことが山ほどある。本来の僕の目的はこれ。人助けではない。でも――


「――分かりました」


 僕はそう答える。オーバーロード級に借りを作っておけば、後々何かに使えるだろう。それに右手のこいつは……まあ外で尋問でもしよう。


「かたじけねぇ」


 剣天聖はそれだけ言い残すと、洞窟の奥へと姿を現した。


「それじゃあ続きを……っといきたいところだが、逃げるぞ」


 という訳で、僕は彼女たちと右手の達磨とともに外へと出たのだった。



――



「三人ですか……まあまあですね」

 

 ゴルドドゥービィは地面に倒れる娑伽羅ウイたちを見据えそう零す。娑伽羅ウイ、ハヤテ、ユウキの三人は辛うじて息はあるものの全員が重傷。今息絶えたとしてもなんなら可怪しくはない。


 ゴルドドゥービィはそんな彼らの胴に触手を巻き付けて運ぼうとする。


「さて、帰るとしましょうか。残りの人たちはバルバラムやニターヤがなんとか――」

「――待てよ」


 踵を返そうとするゴルドドゥービィを呼び止めたのは、他でもない、剣天聖だった。


 彼は半透明の壁の前で佇み、鋭い眼光でゴルドドゥービィを捉えている。


「おや? わざわざ私の目の前――」


 刹那、何かを言い掛けたゴルドドゥービィの身体は、ざっと三千七百個に斬られた。


 一瞬の内に半透明の壁を破壊し、目にも止まらぬ速さで刀を振るった剣天聖によって。


「協会が言っていたが、お前らのようなモンスターは核を破壊されたら死ぬのだろ?」


 細切れにされたことにより、ゴルドドゥービィの身体から紫色をしたビー玉のようなものが露出する。


 核。大体のモンスターは人間や犬、猫、牛などといった生物と同じで、脳や心臓が活動を停止、または血液や、人間たちで言うところの酸素に当たる魔力を失うと死に至る。


 だが上澄みのモンスター。それこそマスター級やオーバーロード級といったモンスターたちは、それでは死なない。


 じゃあどうしたら死ぬのか。それが核の破壊である。


 核とは命であり力の源。それを破壊されるとマスター級、オーバーロード級といったモンスターは死に至る。


 剣天聖はゴルドドゥービィの身体から露出した核を握り締める。再生途中のゴルドドゥービィは悲痛な表情を浮かべるが、剣天聖はそれを一瞥すると核を握り締め破壊した。


 萎れ、再生しかかった身体が崩れ落ちるゴルドドゥービィ。剣天聖はそれを端へ蹴り飛ばすと、触手から解放された弟子たちの下へ向かった。


「大丈夫かお前たち。今助けてやる」


 気を失っている三人を一カ所に集め、和服の懐から回復薬を取り出すとしゃがみ込み、それを三人にかける。回復薬が彼らの身体に染み込み、少しづつではあるが意識が復活する。


「しっ……し…しょ……う」


 一番先に声を上げたのは娑伽羅ウイだった。


「喋るなウリ坊。回復薬を使ってはいるが、傷はまだ癒えちゃいねえ」


 再度懐から回復薬を取り出しては、娑伽羅ウイの両手足にかける。足の出血が止まり、娑伽羅ウイの身体から痛みが引いていく。


 次いでハヤテとユウキにもかける。彼らの体内を駆け巡るゴルドドゥービィの触手の毒が、回復薬により少しだけではあるが中和される。


「し……しょう……すん……ません……でし……た」

「謝るなウリ坊。お前は悪くねぇ。それに謝るのは、すぐに駆け付けられなかった俺の方だ」


 剣天聖は三人を抱えると立ち上がる。


「とにかく、さっさと外へ出るぞ。藪木の姉ちゃんに頼めばお前らの傷ぐらい――」

「――君、相当強ね」


 その声に剣天聖は反応し振り向く。視線の先ではつい先程斬り刻んだ筈のゴルドドゥービィが佇んでいた。


 剣天聖は顔を顰める。何故核を破壊した筈のゴルドドゥービィの身体が再生しているのか。そんな疑問が剣天聖の中に浮く。


 それだけではない。何処か様子が可怪しい。


 目の視点が定まっておらず、ぐるぐると明後日の方向を向き続け、身体中を痙攣させている。


「チッ……こいつらを早く治してやりてえのによ……」


 剣天聖が呟いた次の瞬間、ゴルドドゥービィは震える両手で自身の身体を縦に裂いた。


 ぶちぶちと筋肉の繊維が千切れる音を奏でながら、彼の身体が真っ二つに開かれる。


 すると、どうだろうか。


「やあ。初めまして」


 開かれたゴルドドゥービィの身体の中から現れたのは、肩まで伸びた白い髪に神父のような格好、そして額に生えている青い角が特徴的な人型のモンスターだった。

補足

 最後の方に剣天聖が言っていた藪木の姉ちゃんとは、剣天聖と同じくオーバーロード級の藪木メメさんのことです。

 能力など詳しい設定は追々紹介します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ