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死して尚最強  作者: 0レンジペン
第二章 開拓者編
19/26

初陣

「というわけで……我らが地域保安隊に久しぶりの依頼が来たぞ!」


 僕が『地域保安隊』に所属してから二日。思いの外早くケンさんからの招集がありバイトもないため駆け付ける。現在は事務所の二階の会議部屋でケンさん、ラミハ、そして僕の『地域保安隊』メンバー三人で話し合いの最中。ちなみにラミハは今日は大学が休みらしい。


「依頼の内容は事務所の近所に現れたブロンズ級の門の対処だ」

「ブロンズ級の門ですか」

「ああ、メンバーが三人しかいない我が事務所にはうってつけだな。ランクも私がシルバーでラミハはブロンズ。難易度的にも……っとそう言えばレンくんのランクを聞いていなかったな」


 ケンさんに言われ「たしかに」と思う。事務所に入った時にでも言っておけばよかった。


「僕はシルバーですから、ケンさんと同じですね」

「おおそうか。シルバー級が二人となると今回の依頼はなんとかなるだろう」


 ケンさんが喜ぶ。


「あーしはブロンズだし、能力も戦闘向きじゃないから、レンレンキャリーよろ」


 机に突っ伏しながら気怠げにピースをするラミハ。そう言えばランクだけでなく能力のことも聞いておこうか。いざモンスターと戦闘となるとお互い何が出来るのかを理解しておいた方が連携も取れる。


「今さらですが、ケンさんとラミハの能力って……」

「ああそうかそうか、私の能力は自分や他の人の身体能力をちょっと強化できるというもので――」

「――あーしは回復。怪我とか疲れとか病気とこを少し癒せるよん」


 二人の能力について訊き、教えてもらったことへの感謝として礼を返す。そして僕も自分の能力を説明。沢山の物体を操れると二人に話す。もう一つの方も説明したいが、自分自身でよく分かっていないものを他の人に説明するというのは困惑を招くだけかもしれない。いや、だとしても……。


「あの――」

「さあ、お互いについて色々分かったことだろうし、本題に入るとしようか」


 僕の声はケンさんによって掻き消される。まあ現在僕が使うのは『無限・物体操作』の方だけだし、まだ確定していない情報を嬉々として伝えようとするなと、どっかの上司も言っていた。『無限・分裂付与』について理解を深めてから改めて話すとするか。一旦思考に区切りをつけてケンさんの話に耳を傾ける。


「さっそく現場に……といきたいところだが、まずは各々の役割を決めようと思う。レンくんは前衛、そして私が後援。間にラミハという形を考えているんだが、どうかね?」


 ケンさんが僕たちに尋ねる。ラミハは静かにサムズアップ。とくに反対するところもないし僕も賛成の意を示す。


「よし。それじゃあ新地域保安隊、出動じゃ!」



――



 事務所を出て住宅街を四分程歩いた所にそれはあった。青白く光を発する三メートルちょっとのサイズをした門は道の真ん中で佇んでいる。周囲には協会から派遣された人が三人おり交通整備を行っている。

 

「もしかして地域保安隊の方々ですか?」


 交通整備を行なっていた人が僕達の方へ近付いてくる。ケンさんが諸々の対応をしてカラーコーンで囲われた門の前へと案内された。


「協会からの連絡の通りランクはブロンズ。とは言え十分に気を付けて下さい。門周辺のモンスターの討伐が終わり次第これを」


 そうしてケンさんが手渡されたのは手の平サイズの薄い円盤。この円盤は『門を塞ぐ壁(シールド・シャッター)』といい、門周辺のモンスターを討伐し周囲の安全を確保し次第、門のこっちの世界側とあっちの世界側、つまり僕達からすれば入り口側と出口側の前に置く物だ。門の前に置き軽く触ると、円盤が半透明な壁を形成しモンスターが出てくることを防ぐ。勿論、こっちから入ることも出来ない。そうして『門を塞ぐ壁』が万が一のゲートブレイクを門が消滅するまで防ぐという訳だ。


 ちなみに開拓者が到着するまでは簡易型の『門を塞ぐ壁』が門の入り口側を封じている。


「それじゃあこちらの書類にサインを」


 ケンさんは『門を塞ぐ壁』を受け取り、何枚かの書類にサインをしてから、僕達の方へ目線を動かす。ケンさんが装備しているチェストプレートが太陽の光を反射し少しだけ目に光が刺さる。


「新地域保安隊初の異世界。気を引き締めて行くぞ」

「はい」

「もち」

「それではお気を付けて」


 僕はゆっくりと初めての異世界へ足を踏み入れた。



――



 初めての異世界の感想は「あんまり変わらないな」だった。門の先が森で目新しいものがないからだろうか。ただ空は驚く程に淀んでいた。


「作戦の通り、レンくんは前衛をよろしく頼む」

「分かりました」


 言われた通りに僕が前へ出る。初の異世界。緊張はあまりないが、ブロンズとは言え相手はモンスター。僕は死なないがそれでも油断せずにいこうか。


「レンレン装備ないんだね」


 そう指摘するラミハは胸、肩、肘、膝と要所要所を銀の装備品で覆っている。ケンさんはチェストプレートと膝周り。そして腰に携えるのは西洋風の相手を叩き切るタイプの剣。対して僕は黒のスラックスパンツに何時ぞやのパーカー、それと回収出来た素材をしまうための肩掛けのバッグと完璧なまでの丸腰状態。


「金がないのと、ゴテゴテしたやつは動き辛いからな」


 僕が返すとラミハは「なるほど」と納得した様子。


「……来た」


 門に入ってすぐ、前方十メートル程先に現れたのは棍棒を片手に持った五匹のゴブリン。ブロンズ級の門だと言っていたがゴブリンの群れとなるとシルバー級はあるのでは? 大丈夫なのかよ協会のランク測定。


「ひっ……モンスター」


 ラミハが小さく悲鳴を溢す。


「後ろに下がって」

「大丈夫かいレンくん」

「ええ。なんとか」


 ゴブリンたちはこちらを警戒しているのか、はたまた後ろの門を避けているのか、とにかく低く唸るだけで動こうとはしない。なら先手必勝。辺りの小石や木々を操り宙に浮かす。


「ウガがぁぁあ!!」


 ゴブリンたちがこちらに飛び掛かってくる。僕は浮かした小石や木々をゴブリンたちに飛ばす。風を切り、猛スピードで突っ込むそれらがゴブリンたちの顔や胴体を跳ねる。息が絶え、肉片となったゴブリンたちが地面へ転がる。


「残りのモンスターもちゃっちゃっと狩りましょう」


 背後の二人にそう伝え、僕たちは異世界を歩き出した。



――



「取り敢えず、周辺にいた奴らはこれくらいか」

「えっ……ええ」

「レンレンすっご」


 頬に付着したモンスターの血を拭い辺りを見渡す。地面に転がるモンスターの死骸たち。数分間動き待って、門周辺にいたモンスターをあらかた討伐できた。あとは何かの素材になりそうな物の回収と、異世界の地理を把握し簡単な地図にするだけ。開拓者としての初陣と考えたらまずまずだろう。


「レンくん……本当にシルバー級なのかい?」

「あーしも思った。レンレン強過ぎ」


 素材回収の際、二人にそう尋ねられる。


「相手はブロンズ級ですし、少しですが鍛えてますから」

「はー、そういうものなのかね」


 モンスターの死骸を漁り皮など素材として活かせそうな物を探す。ただ殆どがゴブリンだし、モンスターの生態調査の面でもゴブリンは既に調べ尽くされている。死骸だけじゃ収穫は少ないだろう。魔石とかあればいいんだが……。ちなみに魔石は魔力と名付けられた不思議なエネルギーを宿す鉱石のこと。現在はこの魔石の宿す魔力を火力、風力、水力、原子力、太陽光に次いだ新たなエネルギーとして利用する為の研究が盛んに行われている。だから魔石はかなりいい値段で協会に買取って貰えるそう。


「僕ちょっとあっち行ってきます」

「あんまり遠くに行くじゃないぞ」

「分かってます」


 そんな訳で二人から離れた森の奥へと移動する。貴重な収入源である魔石探しも行いつつ、一番の目的を遂行する。スキルである『浮遊』を使い、木から少し顔を出す程度に浮かび上がる。一番の目的、それは青黒い角のモンスターを探すこと。


「魔王城らしきものは……ないな」


 辺りを見渡しながら、いつ目覚めたのか知らないスキル『拡大』を使う。遠くまでくっきりと見ることが出来るこのスキルで、青黒い角のモンスター、またはヴァラタスやあの神父姿のモンスターを探す。モンスターは遠くにチラホラ見えるがそれらしき姿は見当たらない。


「いないか……」


 ちなみに魔石も探していたが見つからなかった。


「戻ろう」


 取り敢えずスキル『拡大』で分かった周辺地理を記録して『浮遊』を解除する。


「簡単にはいかないか」


 このまま異世界に留まり探し回るものありだがその為には用意が足らない。水とか食料とか……そう言えば首を切ったり、心臓を貫かれたり、身体が爆発したりと色々な死に方をしたが餓死は一度もないな。仮に餓死で死んだ場合は生き返った際に空腹状態はリセットされるのだろうか。気になる……が試すの今度にしよう。


「戻りました……ってケンさん、ラミハは?」


 ケンさんの所へ戻るとラミハの姿がない。何処へ行ったのだろうか。


「ラミハならちょっと森を探検すると、危ないと言ったんだが……」


 ケンさんは心配そうに言う。たしかにヒーラー一人で歩き回るのは危険だが、周辺のモンスターは狩り尽くした訳だし、近くを探検するぐらいなら安全と言えば安全。それでもやはり……。 


「少し見てきます。ケンさんは素材の回収が済んだら僕たちに構わず先に門の外へ出てください」

「分かった。それじゃあこれをレンくんに」


 そうして受け取ったのは『門を塞ぐ壁』。それをポケットにしまい、ケンさんに一言返してから僕はラミハを探し始めた。



――



「ありゃ迷った……まよ……った?」


 静けさで包まれた森の中。蕪城ラミハは一人身体を震わした。蕪城ラミハにとって二回目の異世界。モンスターへの恐怖が拭えていない且つ本来ヒーラーである筈の彼女が何故一人で森を彷徨っているのか。理由は秦谷レンという青年の存在だ。弱くとも恐ろしい大量のモンスターを彼はいとも簡単に退治してみせた。そんな彼への褒美、いや感謝の気持ちとして、金がないという彼の為に何か金になりそうな物を探していたのだ。


 結果迷った彼女は記憶を辿りながら森を引き返す。こんな行動が取れるのも秦谷レンが周辺のモンスターを狩り尽くしたおかげである。だとしても危険には変わりないのだが……。

 

 草木を掻き分け、地面に残った自分の足跡を辿る。そして彼女が行き着いた先は見知らぬ泉だった。


「何処ここ……ってうん?」


 蕪城ラミハは木の陰から身体を出して泉を見つめる。彼女の視線の先。丁度泉の中心に白い肌をさらけ出した女性が水浴びをしていた。人がいることに驚愕しラミハは身体を硬直させる。いや違った。女性の美しさに見惚れて、蕪城ラミハは身体を硬直させていた。否、不思議と身動きをとることが出来なかった。


 白い肌、艶のある黒い長髪。そして彼女の美しい所作の一つ一つ。一挙手一投足全てが蕪城ラミハを惹きつけて離さなかった。額に白い角が生えていることになんか気付かない程に。


「綺麗……」


 蕪城ラミハが自然とそう溢すと、それに反応してなのか女性の視線が蕪城ラミハへ向けられる。


「……!?」


 蕪城ラミハの全身が危険信号を発したと同時に泉の女性は姿を消した。ただ一言、蕪城ラミハに囁いて。


「あんた、秦谷レンって知ってる?」

補足

 『門を塞ぐ壁』は特殊な素材でできており、時間が経てば自然と分解され土と混ざるという性質があります。その為異世界側に設置された物も門が消滅したら残り続けるのではなく自然となくなります。環境に配慮した造りになっています。

 ちなみに発明者は『サカキ』さんです。


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