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死して尚最強  作者: 0レンジペン
第一章 開拓者試験編
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開拓者検定試験 その五

 白銀カミラは地面に横になりながら、今までの人生を思い起こしていた。両親がモンスターに殺されてから能力に目覚め、以来臥雲ガロウの下でひたすらに戦闘訓練を重ねる日々。


 振り返ってみると、誰かに女性として扱われたことがなかったのだ。


 彼女の脳内に、ふと先程の出来事が過ぎる。自分の全力を出したのにも関わらす、モンスターにはそれが通じなかった。さらに両腕を折られ、白銀カミラは死を覚悟した。


 なのに彼、秦谷レンは――


「チッ……柄じゃねえっての」


 吐き捨てる白銀カミラ。


 突然、彼女は何かが近付いてくる気配を感じた。まさか本当に彼が……という期待が生まれ、未だ痛みが残る両腕を使い身体を起こす。


 次の瞬間、影から姿を現したのは、全身を血で染めたあの軍服姿のモンスターだった。


「クソッ」


 何処から、彼女の中に怒りが湧き上がる。白銀カミラは思った。この感情は両親を亡くした時に感じたものに近いと。


「いやー危なかった。まさかわたくしと、あそこまで対等に戦える人間が存在したとは。いやはやいやは、実験するなら彼が望ましいですが、まあ後の祭りでしょう」


 モンスターは白銀カミラに向かって足を動かす。白銀カミラは起き上がり、再度雷を纏うが、疲労からか上手く能力を制御出来ていない。


 また足元もおぼつかず、今この瞬間に倒れ込もうがなんら不思議ではないといった様子。


「もう無理でしょう。諦めましょう」

「……嫌な……こった」


 白銀カミラは弱々しく構える。その様子を見たモンスターは手を前に翳し、手の先に炎を生成して攻撃体勢に入る。


「そうですか。では――」

「諦めるのはお前の方だろ」


 背後から聞こえる声に、肩を跳ねさせながら反応するモンスター。


 振り返るとそこには、先程身体が爆ぜ、確実に死んだ筈の秦谷レンが全裸で佇んでいた。


「キャッ! あんた服!」


 そう声を上げる白銀カミラは、すぐさま顔を明後日の方向に反らした。


「なっ……一体何故……」

「流石に服までは再生されないか……」

「貴様一体何故生きているんだ――」


 声を荒げるモンスター。


 突如、彼の視界が変化する。暗い、彼の視界はひたすらに暗かった。目の前には全裸の秦谷レンが居たはずなのに、今の彼の視界は黒一色。


 何故? モンスターは考えた。そして数秒思考した後に気が付いた。


 落ちていると。自分が気付かない内に、地中を猛スピードで落下していると彼は気が付いたのだ。


 何故そんな状況になっているのか。モンスターは再度考えた。今度は数秒なんて経たずに気が付いた。


 あの黒髪の男、秦谷レンの仕業だと。


「グハッ」


 落ち続けた彼の身体は、地下深くにある洞窟に出ることで勢いを止めた。


 地面に叩き付けられ起き上がる。上を見上げると、自身が落ちてできた外へと続く穴を秦谷レンが落下してくるのが見えた。


 すぐさま後方へ飛び、秦谷レンから距離を取る。


「へえ、あの試験会場の下にこんな洞窟が」

「貴様! 何故生きている! 何故死なん! 一体なんなのだ貴様は!」


 声を荒げるモンスターに秦谷レンは答えた。


「……秦谷レン。ただの人間だよ」

「クソ! いいだろうクソカギ! 五英衆が一人、このヴァラタスが全力で貴様を殺してやる!」



――



 やっと名前を名乗ったモンスターことヴァラタスの視界から再び秦谷レンの姿が消える。


 秦谷レンのスピードはヴァラタスにも追えないほどに速かった。


 気付いた時にはヴァラタスは秦谷レンに喉を潰され、彼の拳が顎に入っていた。ゆっくりと、ただゆっくりと、ヴァラタスは自身の脳が揺れていることを感じながら、その身体を右へ飛ばした。


「ガハッ」


 洞窟の壁にヴァラタスの身体が打ち付けられる。


 ヴァラタスは直感した。あの男、秦谷レンは最初対峙した時よりも、一回殺した時よりも強くなっていると。スピードにパワー、奴の全てが殺す度に成長していると。


 あの男は死して尚強くなっている。


 ヴァラタスの脳が危険信号を発する。まずい、あの男はまずいと。先程全力でと豪語したヴァラタスだったが、全力を出すには如何せん()()が悪過ぎる。また秦谷レンを爆ぜさせたあの術は『■■■■■■』と唱えなければ使えない。


 しかしそれを警戒してだろう。秦谷レンは真っ先にヴァラタスの喉を潰したのだ。


 逃走という選択肢がヴァラタスの脳裏を過ぎる。しかし彼自身のプライドと秦谷レンがそれを許さない。


 瞬時にヴァラタスの目の前に現れる秦谷レン。彼はヴァラタスの髪を掴むと一発、また一発と合計で二十発ほど、拳をヴァラタスの顔にめり込ませる。


 衝撃で洞窟の壁が崩れ落ちる。


 降ってくる岩石に秦谷レンが一瞬気を取られる。隙の生まれた秦谷レンに飛び掛かるヴァラタスだが、突如四方から岩石に襲われる。秦谷レンが操る岩石がヴァラタスを殴打する。


 勿論ヴァラタスもやられてばかりではない。襲い掛かる岩石を殴り、またはこちらも岩石を操り破壊する。


 だが、そんなことでは秦谷レンの猛攻は止まらない。砕け散った無数の岩石を操りヴァラタスに飛ばす。


 数秒が経過し、岩石の嵐が止む。露わになったヴァラタスの体には細かい穴がいくつも空いていた。


 膝をつき、その場に倒れるヴァラタス。


「おい、ヴァラタス……だっけか? お前、葛城ハクアに城を荒らされたと言っていたな」


 秦谷レンはヴァラタスに近付き問う。


「青黒い角のモンスター、もしくは電気を扱う女の子を知っているか? 喉を治してやるから答えろ」


 秦谷レンはヴァラタスの喉に触れ、先程白銀カミラの腕を治した時のようにスキル『再生』を使用する。


 秦谷レンの体力を消費し、触れた対象の傷を癒やすスキルだ。このスキルはヴァラタスに殺された際、使えるようになったものだ。

 

 秦谷レンは最低限喋れる程度にヴァラタスの喉を治す。


 ヴァラタスは答える。


「知って……い……たら……なん……で……すか?」

「青黒い角のモンスターの所へ案内しろ。僕がそいつを殺してやる」

「フッ……じゃ……あ……答え……られ……ま……せ……んね」

「そうか。じゃあ、無理矢理にでも答えさせ――」

「君、かなり強いね」


 突如、秦谷レンの目の前に青い角の生えた人型のモンスターが現れた。神父のような格好をし、肩まで伸びた白い髪が少し靡く。


 そんなモンスターの奥では黒い門が佇んでいた。


 またか、と秦谷レンは思った。


「誰だお前」

「僕? 僕はここに転がっているヴァラタス君と同じだよ。こことは別の世界に住んでいる、君たちでいうところのモンスター。まあ、僕たちの世界では魔人って呼ばれているんだけどね」

「お前は青黒い角のモンスターを知っているか?」


 秦谷レンの問いに、神父姿のモンスターは微笑みながら答えた。


「うん。知ってるよ」


 刹那、空を斬る音が洞窟内に響く。秦谷レンの音速を超える拳が神父姿のモンスターの胴を貫く。


「残念、これは偽物なんだ。本物は別のところだよ」


 ふわりと姿を消す神父姿のモンスターとヴァラタス。


「この世界は僕たちが戦うには合わな過ぎる。君の言う青黒い角のモンスターと戦いたいなら、僕たちの世界へ来るといい。いつでも君を歓迎するよ」


 何処からそんな声が響く。


「チッ……逃がすかよ」


 秦谷レンはモンスターが出てきたであろう、黒い門を辺りの岩石や地面を操り封じる。


「残念、それも偽物。じゃあね、また何処かで」


 そうして秦谷レンは洞窟で一人となった。


 全体的に見れば一件落着ではあるが、彼からすれば妹の仇の情報を掴んだ相手を逃がしたことになる。


 後味は悪いだろう。


 ただ彼の中ではより一層、開拓者になるという目標が、この復讐を遂げるにおいてかなり重要な意味を持つこととなった。


 開拓者となり異世界へ行く。


「戻るか」


 秦谷レンは地上へと繋がる穴の下まで移動する。


「あっ……服どうしよう」


 波乱万丈な開拓者検定試験は、そうして幕を閉じた。

補足

 アマイの使う『■■■■■■』はあっちの世界の言語で、人語に訳すと『絶対的爆発』です。

 視界に入れたものを『■■■■■■』と唱えることで爆発、爆散させることが出来ます。何でもいけます。相手がなんか凄いバリアとかしててもいけます。デメリットは連発出来ないことです。

 対策方法はアマイの視界に入らないか、『■■■■■■』と唱えさせないことです。

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