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死して尚最強  作者: 0レンジペン
第一章 開拓者試験編
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開拓者検定試験 その四

 秦谷レンと白銀カミラは一斉に軍服のモンスターへと飛び掛かった。秦谷レンは右から、白銀カミラが左からそれぞれ蹴りを入れる。


 しかし、モンスターは余裕綽々と受け止めた。更に二人の足首を掴み、身体を地面へ叩き付ける。


「アガッ――」


 二人は同時に呻き声を漏らす。


 そしてモンスターは地面に叩き付けた二人を持ち上げ、森林エリア方面へと投げた。


 勢いよく飛ぶ秦谷レンと白銀カミラ。


 モンスターは思い切り踏み込み、未だ飛び続ける二人を先回りし佇む。不意に彼が人差し指を下から上へとに動かした。すると辺りの地面が隆起し、大きな波に変化する。


 その波は秦谷レンと白銀カミラを飲み込むように前進する。が、気が付いた白銀カミラは空中で体勢を変え、稲妻のように変化させた身体で波を飛び越える。


 一方秦谷レンもスキルである『浮遊』を使用し、上へと飛び上がることでそれを回避した。


「ほう……人間だからと侮っていましたが、これは中々」

 

 顎に指を当て関心しているモンスター相手に、間髪入れず白銀カミラが動く。


「出力四十パーセント」


 バチッというとともに姿を消した白銀カミラの正面からの右ストレートを、モンスターは身体を仰け反らせることで躱す。


 しかし今度は真上からの秦谷レンの攻撃。彼は辺り一帯にある木を宙に浮かばせ、モンスター目掛けて雨のように降らせた。


 だがモンスターは白銀カミラから距離を取り、丸太の雨をまるで優雅に踊るようなステップで避ける。


「雑魚でも粘られるとストレスですね」

「こっちのセリフだクソ野郎」


 白銀カミラがそう吐き捨てた。同時に秦谷レンが空から降りてくる。秦谷レンと白銀カミラは横並びになり、目の前の軍服姿のモンスターを見据える。


「失礼なおサルさんですね」


 にこりと笑うモンスターに、白銀カミラの怒りは頂点に達した。


「その面ぶっ潰してやんよ……」


 バチバチと白銀カミラを中心として辺りに稲妻が走る。彼女の金髪が逆立ち、身体が少し浮く。


 白銀カミラは着ていたスカジャンを脱ぎ捨てると――


「出力八十パーセント」


 そう呟いて再度姿を消した。


 刹那、軍服姿のモンスターが後方へ吹っ飛ぶ。かと思えば、次は右に、更にその次は左へと飛ぶ。そして最後は前方、秦谷レンの方面へと吹っ飛んだ。秦谷レンはそれに合わせて左拳を握り締める。


「バン」


 モンスターの背中に電撃が当たったのと同時に、秦谷レンの渾身の拳がモンスターの顔面を殴りつけ、そのまま地面へ叩き付けた。



――


 

「協会にいる全ての開拓者に通達します。第一訓練場に門発生! 繰り返します第一訓練場に門発生! 在駐している方はすぐに向かって下さい!」


 そんなアナウンスが開拓者協会のビル内に響く。


「ヒデさんヒデさん! 寝ている場合じゃあないっすよ! アナウンス鳴ってる!」


 開拓者協会のビル内にある第三柔道場と書かれた一室。柔道着姿の若い男性が、床で大の字に横になってる男性の体を揺する。


「うん? 何地震?」


 未だ眠そうにしながら、男性がゆっくりと起き上がる。


「寝ぼけてる暇ないっすよヒデさん! 第一訓練場に門が出たってアナウンスが!」

「ほう、ならまだ夢か」

「だから夢じゃないっすよ!」


 再び眠りにつこうとする男性の頭を柔道着姿の若い男性は思い切り叩いた。



――



「たっく、痛いじゃないのタイヨウちゃん」

「悪いのはさっさと起きないヒデさんでしょ」


 未だ痛む頭を押さえる男性、もといヒデと、その隣を歩く男性、タイヨウは開拓者協会の第一訓練場を目指し歩みを進める。


 服装は先程の柔道着から、チェストプレートといった防具、謂わば戦闘用へと変化している。

 

「それにしても、協会の建物にも門って発生するんすね」

「そりゃあするでしょ。門っていうのは、何処からともなく何処にでも現れるものだからね。こっちの都合なんて考えてくれないよ」

「そういうもんなんすね」

「門だけにね」


 つまんないっすよ、と吐き捨てるタイヨウ。


 タイヨウ、ヒデともに二人は開拓者協会所属の開拓者だ。ランクはタイヨウがブロンズ、ヒデがゴールド。

 

「新規の門ってことは、ランクがまだ判明していなってことっすよね」

「まあね。もしかしたらランクが低いかもしれないしその逆かもしれない。いずれにせよ、急いで測定しないとだね」


 上へと向かうエレベーターに乗りながらそんな雑談を交わす二人。


「測定って僕達がするんでしたっけ?」

「いいや、協会の専門の人がやるよ」

「じゃあなんの為の招集ですか?」


 タイヨウのその問いに、ヒデはピクリと反応し「君はそんな事も知らないのかい?」と言いたげな顔をして説明を始めた。


「僕達は測定が完了するまでの繋ぎと警戒。万が一とはいえ、ゲートブレイクするかもしれないし」


 ヒデの発言にタイヨウは「なるほど」と手を叩く。ちょうど同じタイミングでエレベーターが止まり、二人は降りて歩みを進める。


「そういえば、ゲートブレイクと言えば最近大っきなのありましたよね」

「ああ、開拓者が四人亡くなったやつね」

「自分怖いっす。まだ死にたくないですもん」

「ないですもんってそれ――」

「ダジャレじゃないっすよ」


 終始和やかな雰囲気の中、目的地である第一訓練場の近くまでやって来てから、ヒデはタイヨウを安心させるように優しく微笑みながら言う。

 

「大丈夫だよタイヨウちゃん。ゲートブレイクなんて、そうそう起きないから」



――



 秦谷レンが軍服姿のモンスターを地面に殴り付けたことにより、土煙が舞う。


 白銀カミラはその土煙が晴れるのを待っていた。彼女には自分の攻撃があのモンスターに通じていた確信があった。もしかしたら……という期待が、泡のように彼女の中に浮き上がる。


 しかし所詮は泡。泡というのは弾けるからこその泡なのだ。

 

 土煙が晴れ、白銀カミラの視界に映ったのは、左腕が無くなった秦谷レンがモンスターに心臓を貫かれている場面だった。


 目の前に広がる死に驚き、身体を硬直させる白銀カミラ。


「いいパンチでしたが、残念でしたね」


 生々しい水を立てながら、モンスターの右腕が秦谷レンの身体から引き抜かれる。


 秦谷レンは血を吐きながらその場に倒れ込んだ。

 

「さて、次あなたでしたね」

「出力百パーセント――」


 白銀カミラの身体が発する雷が辺りの木々を破壊する。彼女が地面を抉り、モンスターに飛び掛かろうとした時だ。


「――おっと。あなたは速いですが、トップスピードになる前に捕まえれば、なんてことない」


 白銀カミラの首をモンスターの右手が締める。


「アガッ……」

「うーんビリビリとして少し痛いですね……それ」


 その言葉とともに白銀カミラの両腕が折られる。ボキっという鈍い音と、彼女の叫び声だけが辺りに響く。


「五月蝿いですね……あっそうでした。わたくし以前から、あなた方別の世界の人間が、わたくし達の世界の者と同じ力が使えることを不思議に思っていたのでした」


 叫び声を上げ続ける白銀カミラの頭を左手で掴み、モンスターは自分の顔へと近付けた。

 

「そうですね……丁度いい実験材料があるので調べてみましょうか。では、まずはあなたの脳から――」


 刹那、モンスターの視界から白銀カミラの姿が消える。


「あんた大丈夫か」

「だいじょ……ぶな……わけ……」

「だよな」


 モンスターは声のする方へ顔を動かした。するとそこには、先程殺した筈の秦谷レンに抱きかかえられる白銀カミラの姿があった。


「なっ……あなた何故生きているんですか」


 モンスターは驚愕する。秦谷レンが生きていることに。それに彼の無くなった筈の左腕が生えていることに。


 しかし秦谷レンはモンスターの問いを無視し、白銀カミラに何かをする。彼女の腕が一瞬光ったかと思うと、粉々に折られた筈の腕が瞬く間に元に戻っていった。


「すまないが、あんたを逃がしてやれる暇はない。だからここで休んでいてくれ」

  

 秦谷レンは白銀カミラにそう告げるとしゃがみ込み、彼女を地面の上へと寝かした。


「これ、あんたのスカジャンだろ。硬い地面じゃ休みづらいだろうし、枕代わりにするぞ」


 秦谷レンは彼女の頭を優しく上げると、折り畳まれたスカジャンに乗せる。


「あんた一体……」

「貴様! わたくしを無視するな!」

 

 白銀カミラとモンスターの声が被る。


 秦谷レンはゆっくりと立ち上がり白銀カミラに言った。


「あんたには指一本触れさせないから、そこでゆっくり休んでいてくれ。あとは僕があいつを片付ける」

「だから貴様――」

「五月蝿い、聞こえてるよ」


 秦谷レンは一歩、また一歩とモンスターに近付く。

 

「お前には訊きたいことがいくつかあるからな。答えてくれるまで逃がしはしない」

「ふん。人間風情が。何をしたか分かりませんが、もう一度殺してあげますよ!」


 その言葉に秦谷レンは小さく笑う。


「だったら、僕がお前に負けることはないな」

「人間が粋がるな!」


 突如、空気の流れが変わり、秦谷レンとモンスターの拳がぶつかり合う。


 一発、また一発とお互いの拳がぶつかり合い、衝撃波が辺りを駆け巡る。


 互角に見えるその一寸違わぬ攻防。だが、時間が経過するに連れ、秦谷レンがやや劣勢に追いやられる。


「どうした! 負けないだろう!」


 攻めるモンスター。秦谷レンは守りに徹し、地中に埋まっている木の根を操りモンスターの足に掛け後方に引く。


 モンスターの体勢が崩れたところを狙い、顎を狙い拳を放つ。

 

 強烈な一撃がモンスターの脳を揺らし、その身体を後方へと飛ばした。


 踏み込んだ秦谷レンはそれを追う為飛び上がる。


 住宅街エリア目掛け直進して飛ぶモンスターの上まで移動し、腹を殴り地面へ叩き付ける。


 けたたましい爆発音とともに、秦谷レンの動きが止まる。


「ウガッ」


 地面へめり込んでいるモンスターを秦谷レンは踏み付ける。


「どうした。もう一度僕を殺すんだろ?」


 足に力を込め、モンスターを踏み潰す勢いの秦谷レン。


 しかし、モンスターは最初こそ苦しそうな反応を見せていたが、次第に笑みを浮かべ大きく笑い出した。


 「気が狂ったのか?」なんて思う秦谷レン。


 そんな彼にモンスターは言う。


「ククッ……アハハ! ここまでやれる人間がいたとは……ああ、世界はなんと面白い」

「……? 何言ってんだおま――」

「■■■■■■■■」


 刹那、全く異なった言語を発するモンスター。そして内側から粉々に爆ぜる秦谷レンの身体。


 臓物を撒き散らし、肉塊となった秦谷レンの血の雨を浴びて、モンスターは一人、声高らかに笑った。

補足

 秦谷レンが白銀カミラを助けた理由として、大半を占めているのは妹であるユエと白銀カミラを重ねている点です。

 彼にとって、女の子・年下(ぽい見た目)・雷系統の能力持ちの三拍子が揃った彼女はかなりのトラウマなのです。

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