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死して尚最強  作者: 0レンジペン
第一章 開拓者試験編
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開拓者検定試験 その三

 試験開始から一時間十五分。現在の僕のポイントは丁度三百ポイント。なんやかんやあったが、残り一時間四十五分で七百ポイントか……取り敢えず千ポイントは無理そうだ。


「さて、僕も他の受験者を狩るとするか……いや、ギリギリまではモンスターを……」


 先程の一件により、他の受験者を戦闘不能にさせることでポイントを獲れることが確定した。


 一ポイントや二、三ポイントをちまちま稼ぐより、一気に何十ポイントも稼いだ方が効率がいいのは明白。


 残りの時間は出来るだけ千ポイントに近付けるよう、他の受験者を狩りたいところだが、それが審査にどう影響するのか。


「悩ましいが、とにかく行動あるのみか――」

「――誰が誰を狩るって?」


 突如聞こえてきた声に合わせ顔を動かす。


 木々の影から姿を現したのは、派手なスカジャンの下に、漫画でしか見たことがないようなピッチピチのライダースーツを着た金髪の女性だった。


「次から次へと……」

「質問に答えろよ。んで誰が誰を――狩るんだ!」


 バチッと、まるでドアノブに触れた際に静電気が起きたかのような小さな音とともに、彼女は一瞬で僕の懐へと肉薄してきた。

 

 速いなんてものじゃない。だが、対処出来ない訳ではない。


 彼女は懐に入るのと同時に、僕の顔目掛けて右のストレートを放った。咄嗟に顔を左に動かすことで、僕はそれを避ける。


 避けるのと同時に後ろへ飛び彼女と距離を取る。


「へえ〜今の見えたんだ。あんた中々やるね。デカい爆発音を辿ってみた甲斐があった」

「どうもって素直に喜べそうにはないな」

「あんたも気付いてるんでしょ? どう?  アタシと一戦やらない?」


 目の前で佇む彼女を見据えつつ、端末を一瞥する。画面に映っているオレンジ色の点をタップすると、『カミラ 七百ニポイント』と表示された。


 まさかの所持ポイント七百超えに、僕は自分の目を疑った。だが、先の一瞬でそれが限りなく嘘ではない事は証明されている。


 あのスピードがあれば、モンスターも受験者もあっという間に狩り尽くせるだろう。


「あんたレンっていうんだ。あっ、しかも丁度三百ポイント持ってんじゃん。一層あんたとやりたくなってきた」


 逃がしてくれと頼み、逃がしてくれる相手ではないだろう。なんせ僕を戦闘不能すれば、彼女の所持ポイントは千を超える。


 だが、また逆も然り。ユエの復讐を遂げる為にも、ここはまだまだ通過点。止まってなんかいられない。


「女性とやり合うのは初めてなんでな、お手柔らかに頼むよ」


 

――



 バチッという音ともに再び彼女は姿を消した。この感じ、彼女の能力はユエと同じ雷系だろうか。


「出力、八パーセント」

 

 背後から小さな雷鳴のような音が聞こえる。

 

 振り返る暇などなく、僕の身体に電気が走った。


「バン」

「ウグッ」


 小さく漏らした呻き声と硬直した筋肉。動きが遅れた隙を突かれ、彼女の蹴りが背中に入った。


 身体が前方へ吹っ飛ぶ。木にぶつかるも勢いは止まらず、一本、また一本と木を破壊しながら、僕の身体は飛んでいった。


 住宅街エリアまで戻り、戸建てにぶっかることで彼女の蹴りの勢いは止まった。


 かなり飛ばされたものだ。流石は七百ポイント保持者。舐めてかかったつもりはないが、手も足も出させてくれないとは。前に戦ったハイオーク四体よりも彼女の方が強いだろうという確信がある。


「あれ? 結構力入れて蹴ったんだけどな、あんた頑丈だね」


 気付いたら目の前にいる金髪の彼女、もといカミラ。


「褒め言葉と受け取っておくよ」

「まだやるか?」

「そうだな……」


 瓦礫の山の中から立ち上がり、砂埃を払う。


 今ので大体彼女の強さは分かった。ここからは、僕もそれ相応の力で彼女と向かい合おう。


「へぇ〜やる気」


 互いに目の前の相手を見据えながら構える。


 ジリジリと肌を蝕む緊張が辺りを漂う。


 一時間にも思えてしまうほどに長い数秒が経過し、僕とカミラは同時に動き出した。


「――ッ!?」


 が、僕と彼女は互いの拳が顔面に当たるギリギリで同時に動きを止めた。


「最悪、まじかよ」

「同感だ」

 

 まるで元からそこにあったかのように、それは側で佇んでいる。

 

 威圧的なオーラを放つ巨大な門を僕たち二人はただ見つめていた。



――



「うん? あれ? 変だな」


 そう零すのは協会職員の男性。


 白銀カミラと秦谷レンの戦闘から、場面は白雪レイへと移る。


「プロジェクターの映りが悪いですね」


 審査員として能力試験を眺めていた白雪レイ。試験をライブで映し出していたプロジェクターに突如雑音とともに砂嵐が映る。


 映像が途切れ途切れになり、数秒もすれば画面の全てが砂嵐で覆われた。


「機械の故障でしょうか?」


 スーツ姿の女性が言う。


「かもしれませんね。すぐに新しいのを持ってきます」


 男性職員は踵を返し、会議室のドアノブに手を掛けた。その時だった。


「機械よりも、助けを呼んだ方がいいかもしれせん」


 白雪レイは椅子から立ち上がるとそう言った。男性職員も女性職員も白雪レイの発言に対し、頭上にハテナマークを浮かべている。


「なぜですか?」


 女性が白雪レイに尋ねる。


 白雪レイは顎に手をやり、少し思考を巡らせてから答えた。


「先程、砂嵐が映る前、一瞬ではありましたが門が見えました」

「!?」


 門は古今東西、何処からともなくいきなり現れる。まるで元からそこに存在していたかのように。


 開拓者協会の訓練場に現れようが、なんら不思議なことではない。


「まだランクの測定がされていない新規の門。ゲートブレイクする可能性も考慮し、人員を派遣した方がよいかと」

「わっ……分かりました!」


 白雪レイの話を聞き、男性職員は勢いよく会議室を後にした。


 次いで白雪レイも会議室を出ようと足を動かす。


「白雪さん?」

「私も試験会場へ向かいます。あなたは試験中の受験者全員に連絡をお願いします」

「了解しました!」

「はあ、今日は戦うつもりはなかったのに……」


 白雪レイはそう零した。



――



「取り敢えず、協会の応援が来るまで待つか」

「そうだな」


 カミラの発言に僕は同意する。


 まさか試験会場に門が現れるとは。まあ、あり得ないことではないのだが。


 カミラとの戦闘中、突如側に現れた門の前で僕たちは佇んでいる。


 ランクも分からない門に突っ込むほど、僕たち二人は馬鹿ではない。協会がこの事態を把握しているかは分からないが、今は待つことが最善だろう。


 ゲートブレイクの可能性もなくはないが、したらしたで対処はその時考えよう。


「協会への連絡手段ってあったか?」


 僕はカミラに尋ねる。


「さあ。アタシは知らないね」


 カミラの返答に僕は頭を悩ます。携帯は開検が始まる前に取られたきり。試験会場の何処かに非常用の電話などがあるかもしれないが、如何せん会場が広過ぎる。


 ただ審査のためにこちらを見ているだろうし、門に気付けば協会側も動いてくれるだろう。

 

「やっぱり待つしかないか」

「たっく、これからだって時によ」

 

 やれやれというジャスチャーをとりながらカミラが零す。


「流石に休戦だな」


 門が現れたとなると、流石に試験も中止だろう。この場合、能力試験は後日に回されるのだろうか。


 これじゃあ折角の三百ポイントが無駄だな。

 

「あ〜あ、アタシの七百ポイント――」

「あのすみません。ここは開拓者協会であっていますか?」

「――ッ!?」

 

 僕とカミラは目の前の光景に同時に目を見開いた。談笑していて見逃したとかそういう訳ではない。本当に一瞬だった。


 門同様、元からそこに存在していたのかのように、門の前に黒い角の生えた人型のモンスターが立っていた。

 

 黒い軍服のような格好をしたそいつは、青い髪をかきあげて、掛けている眼鏡の位置を整える。奴の黄色い瞳は僕達二人を見据えている。


 まさかゲートブレイク? だとしてもこれは例外中の例外だろう。いやそれよりも……。


「あいつ相当強いぞ……」


 カミラが小声で僕に言う。


 それもそうだ。モンスターというのは知能があまり発達しておらず、その大体が本能のままに破壊と虐殺を行う。こういったモンスターは行動がワンパターンの為、相手しやすく倒しやすい。簡単に言えば弱いのだ。もっとも単純にパワーが強いとか、スピードがあるとかは例外だ。


 そして反対、知能の高いモンスターはどうだろうか。相手の攻撃を読み、自分の置かれている状況を把握し、どうすれば相手が嫌がるか、どうすれば殺せるのかを思考し行動に移す。


 そういったモンスターは強いのだ。現にオーバーロード級とされているモンスターたちがそれに該当する。


 話を戻そう。では目の前モンスターはどうだろうか。


 人語を理解し、会話出来る。それだけ奴の知能の高さが窺える。


「あれ? 変ですね。言語はあっている筈なのですが……もしもーし、ここは開拓者協会であってますかー」


 モンスターは再度尋ねた。


 奴に対して気になる事は二つ。人語が話せる点、そして開拓者協会を知っている点だ。しかも奴の発言はまるで意図してここに現れたかのようだ。


 あいつは何かおかしい。


「ここが開拓者協会だったらなんだよ!」


 カミラがモンスターに問う。


「おっ、やはり言語は合っていましたか。うっうん」


 モンスターは咳払いして答えた。


「わたくしの目的は、開拓者協会会長であらせられる山田厳龍殿と先日わたくし達の城を荒した葛城ハクア氏の身柄です」


 ひどく丁寧に頭を下げながら、奴はにこりと笑みを浮かべた。


 独特かつ異様な奴のオーラが辺り一帯に漂う。


「あんた一人でか?」

「あんたとは失礼ですね。わたくしにはちゃんとした名前が……って雑魚に言っても仕方ないですか。それにあなた如き、わたくし一人で十分でしょう」


 癇に触る発言だが、奴にはそんな発言をし、余裕綽々な態度を取れる程の実力がある。奴のオーラがそれを証拠付けている。


 この場合どうするべきか。協会の応援を待っている間に奴に殺されそうだが、僕にとってそれは大した問題ではない。


 逃げる選択肢もあるがそれはなしだ。それに僕はあのモンスターに()()()()訊きたいことが出来た。


 一番の問題はカミラ。僕は彼女の本気を知らないが、多分あのモンスターには勝てない。


 だが彼女は先のモンスターの発言で爆発寸前。今にも飛び掛かりそうだ。


 彼女を逃がしてやりたいが……それは無理だろうな。


「二体一ならどうかな」


 そうして僕は一歩踏み出す。他人と一緒に戦った経験なんて勿論ない。だがぶっつけ本番。やるしかない。


「うーん、余裕ですね」


 その答えが合図となり、波乱万丈な能力試験は最終ラウンドを迎えた。

補足

 白銀カミラの能力は『雷変化』です。自身の身体に雷を纏わせ、または雷に変化させ素早く動けたり、指先から雷を放つことが出来ます。

 雷の出力を自分で調整し、百パーセントで使うとめちゃ強いですが、その分デメリットもあります。

 ちなみにピチピチスーツは電気伝導率が高く、能力と相性がよい特注スーツでスカジャンは彼女なりのオシャレです。

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