3 エレオノーラフリークの双子と嫌がらせ
部屋いっぱいに新聞を広げ、ソファに寝転んであれこれ読み比べる双子。
「見る目のない新聞も多いのねぇ。女性画家を否定する記事ばかり」セレナがおっとり嘆息する。
「お姉様の絵を載せていた新聞は、もちろんベタ褒めですわ! 当然ですけれど!」カミラは元気よく胸を張る。
「そう考えると、お姉様担当のヨハン記者は素晴らしいですわねぇ」
「あの方は本当に素晴らしいのよ!」
だが次の瞬間、カミラは別の新聞を掴むと――ビリビリビリッ!
「腹立ちますわねぇ!」
「腹立つわね!」
二人は仲良く叫んだ。
この惨状を目にしたメイドが卒倒するのは、もう少し後のことである。
◇◇◇
学園の渡り廊下。アルベルトとエミリアが並んで歩き、エレオノーラは少し遅れてついていく。
彼女は、父に同行してあちこち取材に出かけ、新聞に載る挿絵を描くこともある。
昨日スケッチした群衆の光景をぼんやり思い返していた、そのとき――何かに足を引っかけられた。
「わっ」
「おっと!」
とっさにアルベルトが支え、転倒は免れる。振り返ると、下品にゲラゲラ笑いながら令息たちが走り去っていくところだった。
エミリアがため息をつく。
「少し前なら、不敬罪で訴えることもできましたのに」
「時代の転換期だからな。俺たちがそれをやっては、父上たちが築いている“開かれた社会”を壊すことになる」アルベルトは真顔で言うと、心配そうに声をかけた。
「エレナ、大丈夫か? 足をかけられたんだな」
「……多分。ありがとう」
三人は何事もなかったかのように再び談笑を続ける。
◇◇◇
一方その頃、渡り廊下の先。さっきの令息たちは突然足を止め、肩をびくりと跳ね上げた。
仁王立ちするのは、般若のごとき顔をしたカミラ。
「今、お前たちはお姉様のおみ足に、そのきったねぇ足をかけましたの? 正気かしら」
後ろでにこにこと笑うセレナが、のほほんと口を添える。
「まぁカミラったら、『きったねぇ』なんて言葉、どこで覚えましたの? こういう時は『ぶっ殺しますわよ』でいいのよ」
「そっちの方が問題よ」
「そうかしら? わかりやすいわ」
令息たちは青ざめて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
二人はそろってふうっと息をついた。
「軟弱者め」カミラが鼻を鳴らす。
「軟弱だわぁ」セレナがおっとりと頷いた。




