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27 甘すぎる中庭
侯国に出した絵はすべて完売し、貴族夫人たちの間で「ぜひ追加を」と声が上がっていた。
流行に敏感な王国の夫人たちの間でも、わざわざ侯国から逆輸入して手に入れる者が出てきているらしい。
まだ“知る人ぞ知る”の域ではあるが、画家としてのE.A.Valeの名は確実に広がりつつあった。
学園でも、女生徒から挨拶を受けるようになってきた。
まだ軽い会釈程度ではあるが、かつての孤立を思えば、大きな変化だった。
◇◇◇
中庭。
エレオノーラはベンチに腰掛け、新聞を広げていた。
風刺画のネタを探すためだ。
その隣には、いつものように景綱がぴったりと寄り添っている。
彼はそっと彼女の手を取り、唇を触れさせた。
「こんな小さな手で、あのようなビリリとした作品が作れるなんて」
赤い瞳と見つめ合えば、彼は彼女の頬に手を添えて囁く。
「この果てしない空の色に、永遠に囚われてしまいたい」
エレオノーラは耳まで真っ赤になり、新聞をカサリと落とした。
◇◇◇
少し離れた場所から見ていたアルベルトが呻いた。
「甘すぎて……窒息死しそう」
隣のエミリアも苦笑する。
「多分、私たちがここにいること、忘れてるわね」
中庭はほんのりと甘酸っぱい空気で満ちていた。




