18 新たな道を探して
エレオノーラは自室で机に向かっていた。
新聞社に断られ続けた挿絵の束を前に、鉛筆を弄びながらつぶやく。
「……印刷物じゃなくて、絵そのものを売ることはできないかしら。
でも、どうやって……?」
これまでのエレオノーラの絵はたまたま新聞記者に認めてもらえ、そのままなんとなく載り続けていたに過ぎない。彼女は自ら絵を売り込むことをしたことがなかった。
どうしたらいいのか、すぐに答えは出なかった。
◇◇◇
翌日、学園の休憩時間。
エミリアに思い切って相談してみる。
「イラストを、印刷物ではなく絵画として売れないかと思ったの。でも……どうすればいいかわからなくて」
エミリアは首を傾げ、少し考え込んだ。
「残念だけど、私も所詮は深窓の令嬢。市場のことなんて全然わからないわ。
でもね、こういう時こそ――おばさまを頼ったら?」
その言葉に、エレオノーラは胸の奥が少し軽くなった。
◇◇◇
その日の夕刻。
邸に帰ってきた母オクタヴィアを、玄関で待ち伏せする。
「……お母様、相談があるの」
エレオノーラが真剣な目で切り出すと、オクタヴィアは一瞬驚き、それからふっと笑った。
「やっと、わたくしのところに来たのね」
目元がわずかに潤み、声は柔らかに震えていた。
「あなたが自分で考えて、自分で道を探そうとするのを、ずっと待っていたのよ」
抱きしめられたエレオノーラの胸も熱くなる。
◇◇◇
その夜、父アウレリウスが帰宅すると、オクタヴィアは娘の話を伝えた。
黙って頷いたアウレリウスが提案してきたのは――景綱の養父、クレメンス・フォルステン伯爵を頼るということだった。
「王国はまだ難しいかもしれない。だが、隣の侯国は事情が違う。女性差別はここより緩やかで、新しいものを歓迎する気風がある。
試しに侯国で売り出してみてはどうだろう」
思いもよらぬ提案に、エレオノーラの瞳は輝いた。