表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/38

17 閉ざされた扉

 王都の街路を、エレオノーラは景綱と三人の護衛に守られながら歩いていた。

 胸に抱えたのは、描きためた挿絵の束。

 舞踏会の夜に胸に芽生えた熱を、ようやく行動に変える時が来たのだ。


◇◇◇


 最初に訪ねたのは、かつて彼女の絵を載せていた新聞社。

 応対に出たヨハンは、彼女の姿を見た瞬間、机を叩いて泣き出した。


「すまない、エレオノーラ嬢! いや、E.A.Vale!

 あれほど“性別など関係ない”と豪語したのに……結局、載せられなかった!

 私には、この芸術を守り抜く力がなかった!」


 両肩を震わせるヨハンに、エレオノーラは微笑んで答える。

「いいの。あなたが本当に絵を愛してくれているのは、わかってるから」


◇◇◇


 次に訪ねた新聞社では、扉の前で断られた。

「あぁ、あなたが話題のE.A.Vale? 戯言はよそで」

 門前払いの冷たさに、心がひやりと凍る。


 さらに別の社では、編集長が肩をすくめた。

「いい絵だと思うんだけどねぇ……難しいよね、世間は。うちも波風は立てたくない」


 やんわりとした断りに、エレオノーラは胸の奥がしぼんでいくのを感じた。


◇◇◇


 夕暮れの街路。

 落ち込んでうつむくエレオノーラの背に、そっと手が添えられた。


 驚いて顔を上げると、景綱の赤い瞳が優しく揺れていた。


「……大丈夫」

 彼の口から紡がれた王国語は、以前よりずっと滑らかだった。


「あなたの絵は、絶対に……認めてもらえる」


 夕陽の光を浴びながら、彼は静かに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ