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「王妃ってどうなったの?」


今日も最強の常連さんであるサーシャとベラがやってきた。


「うちの元母か?あの人はまず裁判にかけて島流になった。さらに僕らとは絶縁。あの人は今遠くでなんかやってると思うよ。知らんけど」


今までの悪事を考えたら、もっと重くてもいいのにとも思ったが、人を殺すようなことはしてない。

いや、そんなこともない。思いっきし、ホームレス蹴飛ばしてた。

発言を撤回します。


「なんか、とりあえずひと段落って感じだね」

「いやまだ終わってないよ」


ベラは私に向かって不敵な笑みを浮かべる。


「終わってないってどう言うこと?」


サーベルちゃんを抱き抱えたサーシャが不審そうにいった。

するとベラは真顔になって答えた。


「ニコライさんがシオリ相手に不倫してるって言う、噂が流れてるらしいよ」


...。


『なんだってぇぇ!』


私とサーシャは驚きのあまり、一緒に声を上げた。


「ふ、不倫だって?私そんなことしてないよ」

「私もしてないってことを信じるんだけど、ニコライさんがいつも、ウキウキでシオリと話してるから、誤解が生まれたんだと思う。」


おいおい、勘弁してくれよ。

全く恋愛出来ねぇじゃねえか。

折角の能力が、恋愛で生きてねぇよ。


「ほんとにそう言うことしてないんだよな」


サーシャは不安そうに聞いてくる。


「本当にしてない!」

「そこまで言うなら信じるよ」


私の必死の弁明に、すんなりと信じてくれた。


* * * * *


サーシャとベラは店を出ていった。

その時に気がついた。いつも賑やかだった私の店が、今日は静かだ。

ニコライさんが私と不倫してる噂が影響しているのだろうか。

でもそれを考えるとすると、ニコライさんはこの国にとんでもない影響を与える人物でないと、そうはならないであろう。

ニコライさんって何してる人なんだろう。

私は今、それだけが気になってしょうがなかった。


「やぁ。シオリさん。今日もきたよ」


噂をすれば、ニコライさんがやってきた。


「あ、こんにちは。ニコライさん」


ちょうどいいタイミングだ。

私はニコライさんに職業を聞いてみた。


「そういえば、ニコライさんってなんの仕事してるんですか?」

「私の仕事かい?私の仕事はコメディアンさ」


こ、コメディアン!?


「えっ。芸人さんなんですか?」

「そうだよ。自分で言うのもなんだけど、結構有名な方だよ」

「じ、じゃあいつ私の店に来てるんですか?」

「すぐ近くに劇場があってね。休憩時間の時にここに来てるんだよ」

「へぇ。いろいろ知らなかったです」

「テレビとか持ってないのかい?」

「持ってないですね。いつもオーダーメイドの商品作ってるんで、見る時間ないんですよね。だから買っても無駄かなと思っちゃって」

「なるほどねぇ」


ニコライさんって芸人だったのか。しかも有名な方だって。


「影響力ありそ〜」

「ん?なんか言ったかい?」

「いえ。独り言です」


ニコライさん自身、私と浮気していると言う噂を知っているのだろうか?


「そういえばね。最近変な噂が広まってること知ってる?」

「噂?」


浮気のことを言ってるのかはわからないんだけど、一応変な噂は知っている。だけどしらばっくれることにした。もしかしたら違う噂かもしれない。


「そう。最近、私とシオリさんが不倫をしているって言う噂が流れてるんだ」


本人知ってたぁ〜!


「へ、へぇ。そうなんですね」

「ちなみに言っておくけど、私には奥さんがいるから、絶対にそんなことはしないんだけどね。なぜか君と不倫関係にあると言う、話が出ているんだよね」

「そ、そんな噂が」

「僕この話、今度のトーク番組で会おうかなと思ってて」

「えぇ!?私の話をですか?」

「そう、シオリさん、プチ有名人だし、有名なトーク番組だから、この話したら少しでも弁明できるんじゃないかなと思ってて」

「この街ってそんな噂広まるの早いんですか?」

「早いなんてもんじゃないよ。噂なんか一瞬で国中に知らされるさ。そもそも、ゴシップが好きな人の心理として、ストレス発散が目的な場合もある。この国の人は仕事で疲れてるから、ゴシップが大好きなんだ。有名人のゴシップなんかが出たら、自己肯定感のためだけにすぐに広めてしまうわけよ。その結果、この国のゴシップはすぐに広まってしまうのさ」

「なるほど」


私がかつて住んでいた日本でも、ゴシップが人気だった。みんな疲れてたんだろうな。


「あと私は芸人としてではなく、一般の家庭を持った人として、この噂を広めた犯人を特定したい」

「それは私も同感です」

「じゃあ、私はトーク番組でうまいこと話すよ」

「期待してます」


* * * * *


数日後。


「今日はトーク番組のオンエアなんだよね。カットされるかもしれないけど見て欲しいんだ」

「でも私テレビ持ってないですよ?」

「では私の家はどうだ、と思ったけどリスクあるよな」

「そうですねぇ」


2人は頭を抱えた。

まだ誤解も解けてないのに、2人で街を歩き、ニコライさんの家に入っていったら、週刊誌の人に撮られてしまうし、さらに誤解させてしまう。

もちろんこの世界にも、ゴシップ好きがたくさんいるので、週刊誌は当たり前のようにある。


「じゃあ漫画喫茶に1人で行くのはどうだろう。料金は私が担保する」

「私漫喫一度も行ったことなくて」


ていうか、この世界にも漫画喫茶って存在するんだ。


「大丈夫。隣の隣の隣だよ?すぐに到着するし、困ったら店員さんを頼ればいい」

「そんな近くにあったんだ。じゃあそうしてみます」

「私は家に帰って妻と見るよ」


そう言いながら、ニコライ式挨拶で帰っていった。


私は店を早く閉めて、漫画喫茶へ向かった。

ほんとにすぐそこにあった。なぜ今まで気づかなかったんだろう。


私は漫喫に入ってすぐにテレビをつけた。


するとちょうど、ニコライさんが出演した番組、ハレトークが始まった。

この番組は1時間の番組であり人気が高く、芸人さんの登竜門とも言われている。この番組で活躍できない人は、芸人ではないと言われているらしい。


番組が始まって30分が経過。トークの流れはゴシップの話になり、MCはニコライさんに話をふった。


「ニコットランドはどうですか?ゴシップでなんかありますか?」


ちなみにニコットランドは芸名である。


「そうですねぇ。最近ゴシップで悩みがありまして。私は猫を飼っているのですが、最近おしゃれなペットショップを見つけましてですね。よく行っていたのですが、ついこないだですね、私の耳に衝撃的な話が入ってきたんですよ。それがペットショップの店員さんと、私が不倫していると言う噂でした。私には妻がいるのに、ありえなくないですか?」

「で実際してるんですか?」

「してないわ!ほんとに困ってるんですよ。噂広めた人知ってるなら、私に連絡ください」

「ここで犯人探ししないでください」


終始周りは笑っていた。

私は笑えなかった。


私は漫画喫茶を出てお店に戻った。

するとお店の電話が鳴っていた。


「もしもし、こちらSummum店長のシオリです」

「今日のハレトークに出演していたニコットランドさんが話していた内容はあなたのことですよね」

「そ、それがどうしたんですか?」

「俺、その犯人知ってるんです」

「知ってるんですか?」

「そりゃ。この国はすぐ噂が広まる国ですよ。誰が広めたなんてこともすぐにわかりますよ」

「誰が広めたか教えてくれますか?」

「もちろん。広めた人は『天使の発見者』の異名を持つ、伝説のナンパ師アスターニーという男です」

「私なんかその人知ってるかも」

「あっ。ほんとですか。じゃあこれ以上詳細を語らなくても良いですかね」

「いや語ってください」

「わかりました。今その男はエイヨーグの東に住んでいます。彼はそこら辺を歩いているので、警察に相談すれば捕まえてくれるかもしれません。ただ門前払いの可能性もありますがね」

「ありがとうございます。参考にさせていただきます」

「お役に立てて何より。では私はこれで」

「名前を伺ってもよろしいですか?」

「私は名乗るほどのものではありませんので」

「そこをどうにか」

「ただのファンですよ」


彼はそう言い残して電話を切った。

普通にかっこいいと思った。

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