表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/14

デストロイ・ザ・ハウス

「明日には取り壊すから!抵抗したらわかってるわよね!ぎゃぉぉぉん!」


またきたよこいつ。

こいつは捨て台詞を吐いた次の日から、毎日取り壊すまでのカウントダウンを、しに来るようになった。


暇かよ。


結局、カウントダウンして、一通り文句を言ったら帰る。私はこれが続く毎日に、ノイローゼ気味になっていた。

急にきては罵詈雑言を浴びせて、勝手に満足して帰っていく姿に、ちゃんと殺すことまで考えた。

しかし、私はここぞと言う日まで復讐を我慢した。


* * * * *


今日が解体日。結局、誰も止めることができず、自分の店が解体される様子を、指を咥えて待つことしかできなかった。


「はっはっは!今日でこのお店はおしまいよ!解体業者!やっておしまい!」


とても機嫌の良い王妃の姿に、とても腹が立った。

解体業者達は爆弾の起爆装置を持っていた。


「ほら。こんなに国民も集まってるわ!まさに烏合の衆ね。あなたのお店が壊れていく姿を見たくて集まってきたのね!いい気味だわ!ほらカウントダウンするわよ!」


5・4


周りの民も王妃に合わせて、カウントダウンをしていた。王様も、サーシャも、ニコライさんも。

みんな寝返ってしまった。


3・2


みんな笑顔だ。

私はその場で崩れ落ちそうになった。


1


ドカーーン!!!


爆発音と共に私の建物は崩れ落ちた。


と思ったのが、私のお店は無傷であった。


「なんで音がしたのに崩れてないのよ!!」


王妃は私の店が壊れないことに、怒り心頭に発した。

爆発したのはまた別の場所であった。


「どこで爆発したのよ!」


王妃はぷんぷんしながら、爆発音のした方へと向かう。

その王妃の後ろを、国民達は笑いを堪えながらついていった。


かなり歩いただろう。

爆発音がしたのはエイヨーグの隣町、チュドラであることがわかった。

さらに先へ進んでいくと、王妃は何かを見つけた。


「な、なんなのよこれ...」


爆発音がした場所にたどり着いた。

王妃が見つけたのは、粉々になった民家だった。

絶望している王妃に向かって、解体業者は言った。


「あなたの実家、破壊させていただきました」


そう、爆発したのはチャドラにある、王妃の実家だった。私、いや私だけではない。この場にいる民衆すべてがこうなることを知っていた。


ではなぜ、王妃の実家が爆発したのか。

時を遡ってみよう。


* * * * *


この計画はたくさんのラッキーでできた計画であった。

私が図書館に行った日。

あの後、猫になって王宮に侵入し、王妃が実家に帰る日を確認。実家に帰るのはまさかの翌日であった。

これがまず一つ目のラッキーである。


次の日。

店から猫になって、王妃の後ろを尾行。しかし、尾行がバレて一度だけ蹴り飛ばされた。私は野良猫を蹴飛ばす王妃のエピソードを忘れていた。

結局、私は実家の位置を特定することに成功。


私は急いで店に戻って、ベラが来るのを待った。

ベラが来ると、私はすぐにとっ捕まえて、裏の部屋に連れていった。


「私、王妃の実家の位置を突き止めたんだけど、その時に思い切り蹴られたんだよね」

「えぇ...。蹴飛ばすとかありえる?」


王妃の行動にドン引きするベラ。ドン引きするのも無理はないと思う。


「なんか、いい復讐方法ないかなぁ」


ベラは少し上を向いて考えた後、名案が思い浮かんだかのように、表情を変えた。


「実家爆発するのはどう?どうせこの店を破壊する方法は爆発でしょ?」

「いや、実家爆発って色々許可取らないとダメでしょ」

「サーシャとか、王妃の両親とか、王様とかに聞けばいいんじゃね?」

「そんな簡単に言ってもねぇ」


口だけではなんとでも言える。爆発だってあまり現実的ではない。

私が頭を悩ませていると、サーシャがやってきた。


「どうも。ここで作戦会議が行われると聞いてきたんだけど」

「いいところに来たね。あなたの力を借りたいのよ」


ベラはウッキウキでサーシャをとっ捕まえて、今思いついた作戦を説明した。

二つ目のラッキーはこの話サーシャがきたことだ。


「そうだなぁ。僕のお父さん(王様)とか、王妃の両親とかに聞かないといけないからな」


ベラとおんなじことを言っている。

やっぱり許可がないとダメみたいだ。


「俺今日聞いてくる」

「まじ!?ありがとう」


こうして復讐の計画は、サーシャが参加したことによって、本格的になってきた。


次の日。

王様、王妃の両親、その他諸々、色んな人に王妃の悪事と今回の復讐計画を話し合ってきたサーシャが、私の店に無事、帰還したのであった。


「どうだった?」

「僕のお父さん(王様)は即オッケーだったんだけど両親の方が...」


サーシャからダメそうな感じが溢れ出している。流石に実家を爆破させて欲しいってのは無理か。


「りょ、両親の方が?」

「聞いて驚くなよ?両親が今の家が古くなって使い勝手が悪くなったから、新しい物件を探している途中だったんだって。それでその物件のお金を全額負担してくれるんだったら、爆破させてもいいって」

「えぇっ!」


奇跡三つ目、王様、王妃の両親、その他諸々、色んな人たちが、実家爆破に乗り気であったこと。


「ほ、本当にいいの?」

「うん本当にいいって。だから昨日一緒に物件探してた」

「し、仕事が早い...」


でもどうやって爆破させたらいいんだろう?


ちょうど、サーシャがやってきて数分経ったタイミングで、客足が遠のいた。


「この感じ、僕の母(王妃)が来る!」

「裏行って!!」


サーシャが裏に行った途端、すごい勢いで扉が開いた。


「今日はあなたにお店の潰し方を教えてやるわ!」


上機嫌でやってきたのは、案の定王妃であった。


「お店の潰し方?」

「そうよ。昨日考えてたのよ。そしたらとんでもない名案が浮かんだの」

「名案?」

「そう。その名案ってのが、店大爆破よ」

「みせだいばくは?」

「そう。このお店をダイナマイトでドカーンよ」


奇跡四つ目。王妃の実家の破壊の仕方と同じ。

これで私の計画は一気にいい方向へ向かった。


「じゃあ。せいぜい、店が爆破するのを指を咥えて待ってなさい。ぎゃははは」


上機嫌なまま王妃は去っていった。

裏から出てきたサーシャは、悲しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」

「僕の母って普段あんな感じなんや。最悪や」

「あぁ。なるほどね...」


私は思わず苦笑いをした。


この日、計画をベラ、サーシャは、ジョビ軍を最近退役したニコライさんに共有。ベラ、ニコライさんには民衆に広めてもらった。

しかし民衆に広めたらバレてしまうのではないか、と思ったそこの君。家が爆破するのは世界一の嫌われ者。みんな、この計画を秘密にしてくれるのだ。


計画は今日やった通り、私のお店が爆破すると思ったら、自分の実家が爆破するドッキリである。


そして今日、爆破日を迎えたわけだ。


「なんで私の実家なのよ!!お父さんお母さんは?」

「許可取ってます」

「サーシャちゃんと私の夫は?」

「許可取ってます」

「周りの人は?」

「許可取ってます」


爆発係が許可取ってますbotになってしまった。


「あんたムカつくわね!サーシャと王様を出しなさい!」


王妃の怒りは冷めるどころか、火に油が注がれたかのように燃え上がった。


「目の前にいるじゃないですか?」

「はぁ?いないわよ!」

「はぁ。悲しいなぁ。この僕が実の息子だと言うのに」


バンダナで隠れた顔があらわになった。

私はこれも知っていた。解体業者を装ったサーシャであることを。


「顔が隠れたぐらいで、息子がわからなくなるなんて。失望したよ」

「失望したのはこっちよ。なんで実の息子に実家を破壊されなきゃいけないのよ!」

「だって母がやってきたことをギュッとまとめたらこうなるよ?」

「はぁ?」

「自覚がないみたいだね。さらに絶望したわ。」

「こんなのおかしいわよ!ぎゃぉぉん!」

「はいはい静かに。あんた、王妃になった途端に威張りすぎなんだよ。田舎町に生まれたことがコンプレックスなのかは知らんけど、そう言うのマジで見てらんない。恥ずかしいとか余裕で超えてるレベルだから」

「あんた、なんでそんなこと知ってんのよ。私の出身地なんかあなたに一度も行ったことないはずよ」

「僕の素晴らしい協力者に教えていただきました。ちなみに言っとくけど、王妃の実家爆発ドッキリすること、ここにいる人みんな知ってたよ。ウキウキしてたのあんただけだよ。はずかちぃでちゅねぇ」

「ぎゃぉぉん!そんなのおかしいわ!ぎゃぉぉん!」


結局、民衆は解散しても、王妃はずぅっとその場にとどまって発狂したままであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ