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輪廻転生

私の名前は柳ヶ瀬 栞。今日、25歳の誕生日を迎えた、一人暮らしの成人済女性である。私を祝ってくれる人が少ししかおらず、おめでとうメッセージを待っていたら、いつの間にか夜を迎えた。別に友達が少ないわけではない。それなりに交友関係がある人はいたが、誰も私の誕生日を覚えていない。そりゃそうさ。人の誕生日を覚えるなんて、よっぽどな人じゃないと覚えないようとしないよね。

母からは

「誕生日おめでとう。なんか欲しいものあったら、仕送りで送るよ」

とメッセージが来ていた。

私はこのメッセージを見るなり、急いで文字を打った。


「彼氏」と。


私は人生このかた彼氏がいない。

母からは

「oh...」

とだけ返ってきた。

告られたことがないわけではない。決して私が全くモテないと言うわけではない。私が好きになる人はことごとく彼女がいるし、私に告白してくる人は私のタイプではないしで、彼氏がいないまま学生生活を送った。別に学生生活が楽しくなかったかと言われるとそんなこともない。私は小、中、高と女子野球に青春を注いでいたからだ。でもやっぱり彼氏がいる学校生活も送ってみたかったなと思う時があるのは事実である。

私は母に

「猫」

と送ってみた。私は無類の猫好きである。しかし経済的に余裕がないので、猫を愛でることができない。

母は私のメッセージを受け

「彼氏がいない寂しさを猫で埋めようとする、悲しきアラサー」

と返してきた。腹が立ったが、疲れていたのかイラつく気力がなかった。今日はやけ酒でもすっか。酒に強くない私は、アルコール度数3%の酒缶を一本飲み干し、気持ちよく酔って眠った。


朝起きると頭がすごく痛かった。あんな酒缶でも二日酔いする私が、すこし惨めに思えた。仕事に休みの連絡を入れて、少し気分転換に散歩した。もちろん頭痛薬を飲んで。私は知らない道を探索するのが好きでたまに散歩する。知らない道に遭遇できれば、私の勝ちだ。


いつもの散歩ルートを少し歩くと、知らない道ができていた。こんな道あったっけと思いながら進むと、信号のない交差点に出た。私は横断歩道を渡ろうと、視線をまっすぐ向けると、横断歩道に小さな動物の影がある。目を凝らしてよくみてみると、それは野生の黒い子猫であるとわかった。しかもトラックが来ている。ボヤッ運転席が見える。運転手はスマホを見ていて、猫に気づく気配がこれっぽっちもない。このままじゃ、私の目の前でこの子が轢かれる。猫好きとしてそれは避けたい。ならば!私の命を犠牲に、この子を救わなければ...!私は野球部の経験を活かし、子猫をサードがボテボテのゴロを捌くように、右手で掴んで、そのまま安全なところへ優しくトスした。私は案の定、ながらスマホトラックに轢かれた。私は痛みもなくそのまま死んだ。猫を守れたのなら本望だ。これで良い。


-・-・-・-・-


気がつくと私は知らない場所にいた。なんか無駄に金ピカというか、無駄に神々しいというか。

「気が付いたか、栞殿」

優しく包み込むような声が聞こえた。その正体は大きな大仏みたいな人だった。

「あなたは...」

「私は仏。閻魔様に代理を頼まれて、ここにおります」

閻魔様も忙しいんだな。

「大変ですね。私は今後どうなるんですか?地獄とか天国とかそう言うやつですか?」

すると仏はニヤリとして私に言った。

「栞殿は輪廻転生をご存知?」

「り、輪廻転生?あの、生まれ変わるやつですか?」

「そう、本当はもっと複雑ですが、大枠はそんな感じです。栞殿は良い行いを、前世でたくさんしてらっしゃいました。そういった人には、輪廻転生をしていただくというシステムになっています」

「なるほど。それってどうやって決まるんですか?例えば、人間なのか犬なのかとか、日本に生まれるのか、アメリカで生まれるのかとか、そもそも地球に生まれるのかとか」

「安心してください。栞殿は必ず人間として生まれます。後は全てルーレットです」

ルーレット?

「ルーレットってまさか、某スポーツの祭典みたいなやつですか?」

「そんな野暮ったいことしませんよ。ダーツでルーレットするんです」

某テレビ番組みたいなやつか、と私は納得した。


ルーレットダーツができるのは一回だけ。異世界、天国、現世、?、の4つのどれかに当たると、その世界に行くことが決まる。?についてはよくわからない。


神様からダーツを渡された。そして地面には養生テープでばみりがしてあった。

「なんかこれ緊張するな」

神様に見守られながら天界でダーツをしている。

不思議な気分だ。


私が投げるモーションに入ると、神様がルーレットを回してくれる。これもまたなんというかシュールだ。私は野球部の頃、サイドスローで二番手ピッチャーだったこともあり、ダーツの投げ方も自然とサイドスローになる。私が放ったダーツは綺麗に、ど真ん中めがけて飛んで行った。

「あの...。栞殿。ど真ん中だと、どこの世界に飛ばせば良いか困るから、コントロールがいいのはわかるんだけど、少しずらしてくれませんか?」

「す、すいません」

実際のところ、私のコントロールはとても悪い。1回三四球で交代という伝説と残したくらいだ。こんな完璧に真ん中に行くなんて思ってもなかった。

結局私はもう一回投げて、?の部分に刺さった。

「おぉ、?ですか。どんなところに飛ぶかは、私が勝手に選びます。?に行くにあたって何か希望とかはありますか?」

「ちょっと待ってください!?ってなんですか?」

「?は私の独断で勝手に行き先を決めるやつです。完全ランダムです」

「私の希望は?」

「通る時もあれば、通らない時もある」

輪廻転生をするというのに、私の希望が通る確率が5割って...。そんなん、私の希望通らなかったら、せっかくの転生がゴミ同然となってしまう。

「なんか希望ないんですか?ないなら勝手に私が選びますけど」

それは嫌だ。少しでも私の希望を聞いてもらわないと困る。私は必死にどんな場所に行きたいか考えたが、それよりも先に口が動いた。

「モテたい」

「もて、たい?モテたいのですか?」

「私は恋がしたい」

「そんなまっすぐな目で見られても...」

私は恋をしたい一心で神様に懇願した。

「わ、わかりました。栞殿がそこまで言うのなら叶えてあげましょう。では手続きは以上になります。いろんな方面でモテる方ができるでしょう」

いろんな方面?人間にモテる意外な方面?私はよくわからなかった。

「それでは、どうぞ、いってらっしゃい」

私は異世界に飛んで行った。ほんとにこれでよかったのだろうか?

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