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あーかい部! 15話 たんぽぽ

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「好き、嫌い、好き、嫌い……、




きはだは1人、たんぽぽを(むし)っていた。




「きはだ1人?」


「ちゃおっすあさぎちゃん。」


「それまだやってたんだ。」


「最後まで毟りきってみせるよ〜?」


「花占いなんて、たんぽぽ以外のでやればいいのに。」


「枚数わかってたら不正になっちゃうからねぇ。」


「……今何枚目?」


「知らぬ。」


「花占いなのに?」


「最後の1枚だけ分かれば占えるからねぇ。」


「そりゃまあ2択だからね。」


「好き、嫌い、好き、嫌い……、




会話も程々に切り上げ、きはだは黄色い花びらをまた毟り初め、あさぎはスマホを弄りだした。


少しして、部室のドアが開いた。




「やっほー、みんな元気?」


「……。」


「嫌い、す

「嫌いっ!?」


「おわっ……と、あさぎちゃん今どっちだったっけ!?」


「今きはだが持ってるのが『好き』の方。」


「ありがとうあさぎちゃん……助かったぁ。」


「あ、花占い?」


「みたいです。」


「もう少しで毟り終わるんだぁ〜。」


「たんぽぽで……!?」


「「たんぽぽで。」」


「よくたんぽぽでやろうなんて思ったわね……。」


「お刺身に付いてたから。」


「お刺身でフォーチュンクッキーみたいなことやる人初めて見たわよ。」


「初めてだからねぇ。」


「今何枚目なの?」


「知らぬっ!」


「えぇ……。」


「最後の1枚さえわかれば占えるからって数えてないんですよ。」


「え〜、もったいないわね。たんぽぽの花びら数える機会なんてそうないのに。」


「じゃあ2人とも数えて?」


「数え……え?」




きはだはティッシュに包まれた山盛りの花びらを机に出した。




「なんで持ってるのよ……!?」


「捨てたらゴミになっちゃうじゃん。」


「確かにそうだけど……。」


「さあさあ数えてくれたまえ。」


「えぇぇ……。」


「因みにたんぽぽの花びらの枚数はおおよそ100〜200超だそうです。頑張ってください白ちゃん先生……!」


「あ、ずるい!?」


「好き、嫌い、好き……、


「……。」


「はぁ。…………1枚、2枚……、




こうして、好き嫌いと数を数える声だけが部室の静寂を支配した。少し経って、




「すまない、遅くなった。」




ひいろ入室。




「遅かったねひいろ、補修?」


「説明会の資料作りを手伝っていた。」


「生徒会でもないのに、よくやるね……。」


「慕われるのも楽じゃないな。……なあ、そろそろ説明してもらってもいいか?」


「何を?」


「この状況。」


「えっと、きはだがもう少しでたんぽぽ占いが終わるとこまで来てて、白ちゃんはきはだが毟った花びらを数えてる。」


「白ちゃん見事に巻き込まれてるな。」


「そう思うなら手伝いなさいよ……。」


「え?嫌だが。」


「くうぅ……、」


「好き、嫌い……、




ひいろがあさぎの隣に座ると、2人はまた集計に戻った。




「いや〜懐かしいな、たんぽぽ。」


「何かいい思い出でもあるの?」


「いや、ないけどさ?綿毛を吹き飛ばして遊んだりしたなって。」


「ひいろもやるんだそういうの。」


「ちっちゃい頃は無心で遊んだものだ。少し大きくなると摘み取るのがかわいそうだと思うようになっちゃうんだよな……。」


「んで、また大きくなって自分がたんぽぽの生存戦略にまんまと嵌められていたと気付く……と。」


「その年までたんぽぽで遊ぶ人は珍しいんじゃないか?」


「え…………?」


「…………あさぎ?」


「…………よし、黙ろうか///」


「何でだ?」


「2人の邪魔しちゃ悪いからね……!///」


「え〜、もっとあさぎちゃんの羞恥エピソード聞かせてよぉ〜。」


「聞かせないっ!///」


「きはだ数え終わったのか?」


「『好き』だったぁ、えへへ♪」


「それは良かったな。ところで何を占ったんだ?」


「え?いやぁ、特に。」


「もったいな!?」


「きはだちゃん、幸せは自分で掴むのさ……!」


「じゃあ、あんなめんどくさい思いして占いなんてしなくても良かったんじゃないか。」


「そうだねぇ。」


「お、おう……。」


「……でも、最後の1枚が『好き』で、ちょっと幸せ……♪」


「……そっか。」




「終わったぁぁああ!!」




「お疲れ白ちゃん。」


「何枚でした……!?」


「ふふん、全部で192枚よ♪」


「おお〜。」


「……あれ?きはだが『好き』で終わったってことは、奇数じゃないの?」




「「「「・・・・・・。」」」」




数秒の沈黙の後、4人は無言で机に広げた花びらをティッシュで包み、




「……。」




ゴミ箱に大切にしまっておくことにした。






あーかい部!(4)




きはだ:投降


ひいろ:え?今何でも言うこと聞くって


白ちゃん:どんな耳してるのよ


あさぎ:たんぽぽ数えてただけで一本書けるの尊敬


きはだ:さては馬鹿にしてるな?

白ちゃん:結構大変だったのよ?




あさぎ:本当にたんぽぽ数えただけだった……


白ちゃん:結構大変だったのよ?


きはだ:めっちゃ推すじゃん


あさぎ:お刺身にたんぽぽ乗せた人もたんぽぽの陰で喜んでるよ


きはだ:そこはたんぽぽじゃなくて草ァ!


白ちゃん:『草葉』よ

白ちゃん:まだご存命でしょ


ひいろ:数えてきた

ひいろ:[画像を送信しました]


きはだ:っそだろ


あさぎ:みんなそういう目できはだを見てたよ


ひいろ:舐めるように?


きはだ:そんな、あさぎちゃん……


あさぎ:風評被害だ


白ちゃん:何枚だった?


ひいろ:124枚


きはだ:少な


ひいろ:小さかったからな


白ちゃん:楽したのね


ひいろ:選べるほどお刺身残ってなかったんだ……


白ちゃん:お刺身で安定供給するの流行ってるの?


ひいろ:それに、大きければ良いってものでもないだろう?


あさぎ:それはそう


白ちゃん:おい風評被害


ひいろ:そういえばたんぽぽって花びらに見えてるやつ一つ一つが花らしいな


白ちゃん:は?


きはだ:花びら5枚で1セット


あさぎ:きはだ知ってて数えたの……?


きはだ:『嫌い』で終わったらこっちに切り替える隙のない二段構えよ


ひいろ:奇数なら『好き』確定だもんな


白ちゃん:私の苦労は一体……


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