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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ホネのオウジサマ

このお話を開いて頂いてありがとうございます。カクヨムに投稿させて頂いた一話と二話(「頭蓋骨」と「下顎骨」)の詰め合わせです。もしかしたら所々カクヨムのルビ記号が残ったままになってるかもしれませんが、気にせず読んでください。

 ―――今でもたまに夢に見る。忘れそうで忘れられない、幼少の記憶。私の実家は関東圏の中でも東京に近い、割と都会目な地域の住宅街にあった。お父さんと、お母さんと、私と、犬のコロと。物心のついた時から私が11歳になるまで、私とコロはいつも一緒だった。コロは短毛で、コロっとした体格がとても愛らしい犬だった。だからこそ、彼女が死んで一番心に傷を負ったのは当然私だった。そんな私を見てきっととても可哀そうに思ったのだろう。両親は、駅の近くにも関わらず、一軒だけ妙にボロッちい【遺骨アクセサリー】屋に私と、コロの遺骨を持って訪れた。お店の外観は印象が強く、夢で見ずともある程度覚えている。看板には剝がれかけたペンキで、辛うじて『思い出を残しませんか』等の文言が読めた。しかし、ここから記憶がとんでいて、起きたあと、内観だけがどうやっても思い出せない。お店の人も、どんな人だったか思い出せない。そして、覚えているのは、≪≪その後幼少の私がどうしてもその店に行きたがらなかった≫≫という感覚だけ。

 

 いっそのこと、全部存在しませんでした!テレビかなんかで見たお話の一部です!って振り切れたらいいんだけどなあ。私の出勤用に使っている鞄に巻かれている。この‛‛お守り’’がそれを完璧に肯定させてくれない。それなりの規模の企業のOLとなって、一人暮らしをするようになった私は、お盆の今日、久々に実家を訪ねていた。そのついでに、ずっと忘れていたあの記憶を検証してやろう、なんて思いを持ちながら。この前まで起きてはすぐに忘れていたあの夢を、近頃はお昼でもたまに思い出すようになっていた。起きてすぐ忘れる程度なら、別にそんな重要でもないんじゃん?、とは少し思った。だけど私は結局、こうして記憶を頼りに地元の駅近くのアスファルトを安いハイヒールで踏みしめていた。まあ、別に?ちらっと確認するだけで?あったらあったで、詳しいことはこのまま家についてから親に聞いてみるし?なかったならなかったで、


 「あった…。」


 その店は、記憶通りの場所に、記憶よりもさらに古びた状態でたたずんでいた。ガラス張りの扉から見える店内は非常に薄暗い。さすがに閉店してるか...、とも思ったが、その入り口には【OPEN】の字が。例の幼少の頃の入りたくない感覚はどこへやら。私は一つ固唾を飲んだのち、吸い寄せられるようにその扉を開けていた。

 店の中はがらんとしていてお客さんはおらず、昼下がりだというのに仄暗く、さらに薄暗い奥のカウンターにも人影は見えなかった。もしかして、偶然【OPEN】のままだっただけで、やっぱり閉じてるのかも?でも冷房はついてるみたいだし…。不思議に思いつつも、しかし、再びこの店内に足を踏み入れたことで、記憶は少しずつ戻ってきていた。店内の右側の壁に飾られている象牙、中にいくつかのほこりをかぶったアクセサリーと、『サンプル』と手書きの黄みがかった古い紙が入っている小さなショーケース。その中にあった『タイプ2』と自分の持っているお守りをじっと見比べていたもんだから、カウンターのさらに奥から出てきた人影にすぐに気づくことができなかった。

 「ったく、なんだよアイツ...、って、あん?あ、いらっしゃいま…せ…?」

「!? え?あ!ど、どうも!」

 出てきたのはきれいな金髪でザ・モデル体型なお姉さんだった。美しくもあるが、やはりどこかアンダーグラウンドな雰囲気をまとっており、なのでどちらかというと、「妖艶」な感じだ。私もかなりびっくりしてしまったが、相手としても私の存在は予想だにしていなかったようで、

「お客さんですよね?あー、ちょっと待っててください。」

そう言うと、またカウンターの奥に小走りで去っていった。

「おーい、ジジイ、お客さんだぞー」

そんな声が聞こえたかと思うと、しばらくして今度は若い男性が後頭部を搔きながらうつむいたまま、

「はーい。」

と言って出てきた。

 目が合った。

 途端、全てを思い出した。あの頃の私が抱えていた、もう二度とここに入りたくないと思っていた理由を。

 当時から何一つ変わっていなかった。塩顔系なイケメンも、へらへらした微笑を常にたたえているのも、耳元に何本か付けられた白いピアスや、その他、身体中ジャラジャラ付けられた同じく白いアクセサリー類も。すごく優しい口調で話してくれて、一緒に育ってきた愛犬の死を悲しむ私を慰めてくれた。この人に会うと、なぜかすごく気恥ずかしくて、それで私はここに来るのを拒んでいたんだ。早い話がきっと、初恋というやつだったのだろう。

 アカン、心拍が激しくなっている。顔もきっとどんどん紅潮している。思い出せた衝撃と、思い出した内容のくだらなさっていうか、恥ずかしさのせいだ。

 目が合った状態で膠着してしまい、そのまま沈黙が1,2秒続いただろうか、先に声を出したのは彼の方だった。

「あー!ユウカちゃん?久しぶりー!wおっきくなったね!」

覚えられてる!?

「あ、あ、ど、どうも、お久しぶりです…。」

「よく来たねー!何しに来たの?」

「あ、ちょっと懐かしくなって、その、ふらっと立ち寄っただけで…。」

「そっかあ。」

アワワ、やべえ、言葉が出てこねえ!また気まずさと沈黙が狭い店内に充満する。

もっとも、そんな空気を感じているのは私だけで、目の前の満面に喜色を浮かべている彼は、そんなもの気にならないタイプなのかもしれないが。

「あ...、そ、その…。」

「あっはは、やっぱり綺麗な子になったね~w。僕の想像通りだ!」

「あ、ありがとうございます…?」

「あの‛‛お守り’’は?」

「あぁ、えっと、これですか?」

鞄に付いたコロのアクセサリーを見せる。ってかやべえ、なんで話してるだけでこんな緊張するんだ!?心音が相手に聞こえてないか心配なくらいだ。静まれ!鼓動!

「あー、ちょっとずつ効果薄れてきてるかもねー。」

「へ?」

「ここに来たのもやっぱそういうこと?」

「えっと、どういうことですか…?」

「だって普通なら思い出せないもんねw。そうだよねw。」

「え、ああ…?」

なんでそのことを知ってるんだ?昔からそうだけど、やっぱり、つかみどころがないっていうか、明らかに変な人だ。一人でケラケラ笑っている。

「なんか身体に変なことあった?」

「? ああ、えっと、おかげさまで健康です…?あ、あの、お変わりないようで…。」

ハズイ、名前が思い出せん。とっさに手を彼の方に向けて言った。てか、そういわれればそうだ(いや自分で言ったんだけど)、この人はあの頃から何一つ変わっていない様に見える。カウンターの奥の暗がりに居るから細かいシワとかが見えてないだけかもしれないけど。

「え?あ、あぁ、僕は変わってないけど…w。あれ、ご両親とかからなんも聞いてないの?w」

「え?」

「え?w」


「「………」」 


「ホントに?」

「えっと…?」

ドキドキが違う理由で加速した。どうやら彼と私との間は今すれ違いコントみたいになってるらしい。

「ホントに偶然ここに来ただけ?ご両親となんか話したりしなかった?」

「はい…。」

「あー…、そっかそっか…。」

「あ、えっとなんか話してから来た方が良かったですか…?」

「いや、まあ、何て言うか…」

「ちょ、ちょっと帰って聞いてみます!失礼しました!」

彼の視線を一身に受けたまま、背を向け、出入り口へ進んだ。気まずすぎる。と、とにかく一旦早く帰りたい。とにかく一旦頭を冷やしたい…。てか、両親ってなんだ?このすれ違いコントのきっかけはお父さんお母さんが握ってるっていうのか?話が全く見えてこないぞ?

「ちょっと待って!」

 その声が聞こえたころには、私の体は店外にあった。

 

 ―――次の瞬間、何かが私の前方から一直線に飛んできた。

「ひっ!?」

 一瞬でも顔を上げるのが遅かったら直撃していただろう。だが、辛うじて避けることができた。ドシュっ!と何かが地面に当たる音が聞こえた。と、同時に気づいたのは、見える景色が灰色の霧でもかかったかのように薄暗くなっていることだ。もうそんな時間なの?と思った途端、また二つ三つ、何かが飛んできた。


「ひえっ!?」


 とっさに顔を手で覆い、屈んだが、今度はその何かが激突する音は私より少し前方から聞こえた。

「…っ?」

 目を開け、顔を上げると、目の前に誰かが立ち塞がっていた。

「危なかったねー!だいじょぶ?」

振り返った顔はつい先ほどまで私の背後数mのところにいたはずの彼だった。

「やっぱりユウカちゃん元々‛‛係数’’高かったし、‛‛お守り’’の効果も薄れてたもんね!ちょっと待っててね!w」

 彼の耳から数本、ピアスが溶けるような挙動をとり小刀のような形を形成し、彼の左手に吸い込まれていった。 右手にはすでに同じような小刀が握られていた。

「すぐ終わるからね!」

 彼が前に向き直ると同時に、また凄まじい音が響き、思わずまた顔を覆った。

 …音が止んだ。しばらくして顔を上げると、彼と目が合った。

「ごめんね、怖かったね!ちょっと中入ってて?w」

「は、はい…!」

私は必死の力を振り絞って店内へ駆け込んだ。怖えぇ!なんすかアレ!?

「あ、扉ちゃんと閉めてね!」

「え?あ、あなたは?」

「ありがと!w、僕は大丈夫だから!w」

「は、はい!」

焦ってガラス張りの扉をありたっけの力で閉めた。…って、ホントに閉めちゃったよ!『大丈夫』って本当かよ!?ぐちゃぐちゃな思考で脳がいっぱいの私には扉越しに外の様子を見守ることしかできなかった―――。



 ―――このお店は過度に細くも太くもないまあまあな大きさの道路の脇にひっそりと建っている。余り普段から人気のある道路とは言い難いが、それでも駅に行くのに利用する人もある程度いる。しかし、今その道路には無数の穴ぼこが開いていて、明らかに近寄り難い雰囲気が漂っている。

 また何かが上空から飛んできた。それは見るからに先ほどまでのものより大きく、遺骨アクセサリー屋の彼めがけて一直線に急降下してきた。彼はそれを軽く躱したが、目線はジッとその何かを捉えていた。降ってきたそれは地面に激突し、周囲に轟音と黒い羽毛をばらまいた。

「やあ!すごいね、こんな力使える子は最近じゃ、なかなか居ないよ!メゾン姉さんのとこの子かな?」

飛び散った砂煙と黒い羽毛の中から人の形をしたものが出てきた。どうやら、体格のいいスキンヘッドの男性の様に見える。

「ほう、なるほど…。もう何百年と戦地に赴いていない老兵と聞いたが基礎の体裁きだけは染みついているようだな…。」

出てきたスキンヘッドは妙に上品な低音でこたえた。

「それじゃあ質問の答えになってないよw」

それは私も思った。

「しかも、人を老人呼ばわりだなんて、ひどいなぁ。もしかしたら自分が捨て駒なのも気づいてない?w」


「…なるほど。分かった。安心しろ、お前はなるべく無残な殺し方をしてやる。」


いや、なんでそこで相手をイラつかせる様なこと言うんだよ!?今、スキンヘッドの意識は完全に遺骨アクセサリー屋に向いている様だが、もしもその意識が不意に自分に向いたら、と思う心臓がつぶれそうなくらい怖い。

 「えー?それは嫌だなぁ~w」

遺骨アクセサリー屋の両手に握られていた小刀がまたするりと溶け、合わさり、1m程の一本の剣に集約した。それを見てスキンヘッドが

「ほう?お前も妙な術を使うもんだな…。」

と言ったかと思うと、周囲に散らばっていた黒い羽毛が集まりだし、やがてそれも剣の形に固まった。ふと、私が一番最初の攻撃を避けた位置を見ると、その近くにはひどくひしゃげたカラスの死体と穴ぼこがあった。

刀を手に取った両者の内、先に動き出したのはスキンヘッドの方だった。恐るべき速さで遺骨アクセサリー屋との間合いを詰めた。余りの速さに、私の脳裏を一瞬、絶望がよぎった。が、その刃は片手で剣を構えた遺骨アクセサリー屋の前でピタリと止まった。たった一秒ほどの膠着があった後に、遺骨アクセサリー屋はスキンヘッドの刀を軽く流すと、間髪入れずに二太刀をスキンヘッドに浴びせてしまった。相変わらず、その顔はへらへらしたままだった。

「くっ…!」

とっさによろめきつつもスキンヘッドが距離を取ると同時に、再び空から二つの何か…、恐らくカラスなのだろう、がそれぞれ別の方向から遺骨アクセサリー屋に襲い掛かった。

「ふっ、少しはやるようだが、所詮はしがない老兵。遠近両方の攻撃方法を持つ私のコンボ技にいつまで耐えられるかな?貴様を倒し、か弱い女一人連れ去るだけのミッションで、私はメゾン家上位カースト昇格が約束されるのだ!」

傷口を抑えながら一瞬の内に二つもフラグを建てた。口元には強がって笑みを浮かべているようだが、その笑みは彼の相手ほど余裕そうには見えなかった。

「なーんだ。やっぱりメゾン家か!最初からそう言えばいいのに!w」

気づけばカラスは瞬きする間に空中で解体されていた。よく見ると遺骨アクセサリー屋の彼の身に付けていたアクセサリーはさらに減っていた。そして握られている武器も、先ほどの剣とは程遠い、無骨な両手斧へと早変わりしている。見るからに重そうなそれを円を描くようにぶんぶん振り回す彼の姿に最早スキンヘッドの開いた口は塞がらなかった。

「な、なんだその武器は…?」

「んー?まあ、強いて言うならこれがホントの‛‛骨刀品’’ってやつかな!w」

へらへら笑いながら言い終えた直後、彼が動いた…。のだと思う。というのも、動き出しすら見えず、気づけば元の位置に彼は居ない。スキンヘッドの首が飛んでいる。その背後にいつの間にか大斧を振り切ったフォームの彼の姿があったからだ。

「グロっ…!」

思わず声に出ていた。しかし、心は絶望から解き放たれた安心感で、人生で一番軽やかだった。しばらくスキンヘッドの死体からは鮮血があふれ出ていたが、なんとやがてその体は融ける様に崩れ、地面に染み込まれていった。その周囲に散らばったカラスの死体も、同じ様な末路を辿っているのが見えた。

「ったく、拾う骨ぐらい残してくれたっていいのにー。」

勝者はどこまでも暢気なもんだった。私なんて見ていただけで全身から滝のような汗をかいてるってのに…。



 

 ―――「いやー、お見苦しいところを見せちゃって申し訳ない!」

店内のカウンター奥の扉の中にある、居住スペース?の様なところに私は通されていた。畳が敷かれたどこか古めかしい感じの室内には、私と、遺骨アクセサリー屋の彼と、入店したとき一番最初に顔を合わせてたグラマラスお姉さんが居た。私と彼は小さなちゃぶ台を前に顔を突き合わせているが、お姉さんはどうやらお茶など用意してくださっているようだ。

「んーと。どっから説明始めよっか。まあ、自己紹介が一番わかりやすいかな。僕は本名フルネームで『ルイ・ヴァーシスト・ブラム=ド・グランゾール・コッソー』」

「えぇっと…?コッソーさん?」

「あっはは、まあ日本語発音じゃ難しいところもあるからね。ルイで良いよ。」

「は、はい。」

 ルイさんが名前を言い終わるのを見計らったのか単なる偶然か、お姉さんが人数分カップをお盆に乗せてやってきた。

「ウチにある一番いいお茶なんだけど…。お口に合えばいいわ。」

 ちゃぶ台に、三つの湯気がのぼるティーカップと、一枚のお茶菓子が綺麗に並べられた大きめのお皿が中心に置かれた。自分の前に置かれたカップからふんわりといい香りがして、少し緊張がほぐれた。

「こんなものしか出せないけど、せめて遠慮せず召し上がってください。」

「えー、おいしそー!なにこれ、ウチにこんなんあったの!?」

ルイさんが嬉々とした表情でお茶菓子に手を伸ばす。それをニコッとした優しい表情はそのまま、お姉さんがノールックで弾いた。

「イタっ…。」

ルイさんはしばらくの間、弾かれた手とお姉さんを交互に見比べていたが、やがて何事もなかったかの様に、目線を私に戻し、話しだした。危ねえ危ねえ。あとちょっとで吹き出すところだった。

「どこまで話したっけ?ああ、自己紹介だ。んでこっちの女が、」

ルイさんがお姉さんを指さしたところで、お姉さんが半ば強引にその話を引き継いだ。

「『田中 ヴァーシスト 杏奈』よ。アンナでいいわ。よろしくね。お嬢さんのお名前は?」

「あ、『赤荻 優花』です。よろしくお願いします。」

「ユウカちゃん。素敵なお名前」

「そうそう!でもね?違うんだよw。」

アンナさんの言葉を、今度はルイさんが遮った。よっぽどやり返したかったんだろう。

「えっと、違うっていうのは…?」

「うーんとね。別に全然、合ってるっちゃ合ってるんだよ?でも、厳密に言うと、優花ちゃんにも僕ら一族の名前がつくはずなんだよ。」

「はあ?」

「うん。わかんないね。順を追って説明するよ。まず、僕には5人…、僕を抜いて4人だね。兄弟がいるんだ。んで、その僕らの父さんが、化け物なわけ。」

「…はあ。」

開始5秒からわからん。

「僕ら兄弟5人は、さっき見せちゃったみたいにそれぞれいろんな能力をお父さんから受け継いでるの。一番上の『ミュラー兄さん』が鏡系?の能力。あんまよく見たことないから詳しいことはわかんないけど。んで、二番目が『メゾン姉さん』。なんか、死体を操るゾンビ系の能力を持ってる。三番目が『カルヴァー兄さん』。温度をどうこうする能力っぽいね。あと普通に躁鬱。でー、四番目が『アンク兄ちゃん』。今のところ僕と一番仲がいい、ってことになってる。空間系の能力を使うよ。そして最後がこの僕、『コッソー』。自分の支配下にある骨…、つっても、主《に遺骨だね。を、操れます!」

「なるほど…?」

わからん。んな一度に言われても覚えられん…。

「んで、そんな僕らの生まれがだいたい西暦1500年くらいでヨーロッパ!その時、父さんは貴族って身分で、その後継ぎとして生まれたのが僕らだ。まあ当然、5人も兄弟がいたら誰が継ぐのかって話になるんだけど。素の体質として僕らはとにかく、長生きで。後継ぎ争いが泥沼化しちゃって。そうこうしてる間にそれぞれの子孫がいっぱいできて。どんどん血は薄まってるけど、そん中には同じように能力に目覚める子はいっぱい居たんだよね。各兄弟ごとの家系によって目覚めた能力はだいたい似るんだけど、当然その能力に目覚めた子たちも後継ぎ争いに駆り出されるようになって、それが『メゾン家』、とか、『ミュラー家』って呼ばれるようになったってワケ!ちなみに、他の兄弟を全員殺す。あるいは、全員の同意を得る。これが父さんの爵位を継げるルール!よし、ある程度言い切った!わかんないところは質疑応答どうぞ!」

「えーっと、そもそもなんで皆さんその、お父様の爵位?を継ごうとしてるんですか?」

「いい質問だねー。プラス300コッソー家ポイントをあげよう。」

「あ、ありがとうございます?」

「うん。1億ポイントで牛丼大盛無料になるからね。みんなが…、って言っても僕とミュラー兄さんは継ぐ気ないらしいんだけど、父さんの爵位を継ぐと自動的に父さんの持ってるすべての財産だけでなく、能力も受け継げるらしいんだよね。だからみんな、そんなほぼ全知全能の能力を欲しがってるってワケ。噂じゃあ、つっても、父さん本人が言ってたから多分本当なんだろうけど、並行世界を行き来したり、創ったりもできるらしいよ!すごいね!確かにここは説明が抜けてたよ。ありがとう!」

「なるほど…?ん?でも、そんな人達があんな風に派手な後継ぎ争いをしてたらニュースとかで報道されちゃうんじゃないですか?ってか、みんなルイさんみたいな力を持ってるんなら、それだけで世界征服だって出来ちゃうんじゃ?」

「鋭いねーw。プラス500コッソー家ポイントだ。なんか、それは父さん曰く、貴族の我が家にとって『下賤』なことらしくて。勝手に総理大臣倒して『俺が総理大臣だー!』とか言うのもダメらしいね。あくまで高潔な自分たちが平民に直接手を下したりするのはタブーなんだと。それやったら父さんに秒で殺されるらしいし、そもそもお互いに監視しあってるしね。」

「へー。…てか、じゃあなんで私はその一族?にいながら今までなんも知らなかったんですか?」

「最近は自分の子供はそんな血みどろの後継ぎ争いに巻き込みたくない!って人や、そもそも一族の中でも末端すぎて親自身もなんも知らないってこともあるからー。」

「あー。…?てかじゃあなんで私さっき狙われてたんですか?あれ、あのスキンヘッドの人完全に私のことも狙ってませんでした?」

「…気づいちゃった?まあいいんだけど。んーとねー…。実はねー…。…最初ユウカちゃんが狙われたとき、僕、ぽろっと‟係数”って言葉を使っちゃったじゃない?それが…なんていうか…僕ら一族の遺伝子の濃さ?みたいなものを表してるんだけど…。」

そこまで言ってルイさんは言葉をつまらせた。

「いや、ここまで言っちゃったらもう言うしかないよね。はい。言います。ほんとたまーにあるんだけど…。ユウカちゃんの両親は…、偶然なんだけどね?二人とも僕らの一族の人でして。さらにその二人とも偶然‟係数”が高めな人で…。まあ、いろいろな要素が重なって、実はユウカちゃん自身のの‟係数”はかなぁり高い方なんだよね。それも、僕ら兄弟の直の子供くらいには。そういう‟係数”の高い子はまあ、兄さん姉さんにとっていろいろ使い道があるんだよねえ…。」

「えっと、つまり?」

「ユウカちゃんの小さい頃にご両親に頼まれて‟係数”を抑える‟お守り”を作ったりはしたんだけど…。まあ、早い話がユウカちゃん、命狙われてます。」

「えぇっ…!」

なんだかどういう反応をしていいか解らず、とりあえず喉からでる音をそのまま出してしまった。そんな私を見てそれまで静かに会話を見守ってくれていたアンナさんが口を開いた。

「ねえおじいさん、それ本当?私にはとてもユウカちゃんがそんなに‟係数”の高い子には見えないけど?」

「ん?ああ、まあそりゃあ薄れてるとはいえ、‟お守り”の効果はまだ働いてるからね。幸いなことに多分だけど今ユウカちゃんの‟係数”に気づいてるのは兄弟の中でも、目が良い僕とメゾン姉さんだけだと思うよ。」

なんだか、いきなり後継ぎ争いだとか、命を狙われてるとか、突拍子もない言葉を浴びせられ続けて私の頭は今にもショートしそうだった。死を身近に感じてしまった恐怖はとてもじゃないが簡単にこらえられるものじゃない。まだ行きたい場所だってたくさんあるし、食べたいもの、やりたい事もいくらだってある。今こそこそホントに全部存在しません!夢です!と誰かに言ってほしかった。同時に今までの疲れや、不安感があふれ出してきた。

「あ、あ、あの、その、私はっ、どうしたらっ、いいんですかっ?」

最早泣きだしかけていたのに声を出して初めて気づいた。

「ユウカちゃん…。」

アンナさんは本気で心配してくれているようだった。うつむいていたルイさんが顔を上げゆっくりと口を開いた。

「…一つだけ、方法がなくはないかもしれない。まあ、言っちゃうと、一時しのぎな策かもしれないけど。」

「…っ?」

「何?その方法って?」

答えられない私の代わりにアンナさんが聞いてくれた。優しい人だ。

「うん。ねえ、ユウカちゃん。僕の、」


 「僕のお嫁さんにならない?」―――

誤字脱字等、その他文法的なミスがあったら報告してくださると嬉しいです!おストーリーは矛盾が無いよう努めて参ります!この短編の反応が良さそうでしたら、続きもちょっとずつ投稿していく所存です。

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