表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武技繚乱  作者: 弐號
7/9

第七話

「よお、編入試験組。悪いが青バッチ貰っていくぜ」

 バッチを預かって数分。

 初めて対等な立場で赤バッチ持ちと遭遇した。

 が、ファーストコンタクトは、相手からの右ストレート。

 出会いがしらの攻撃を完全には躱せず、左顔面に拳を受けてからの開戦だった。

「ったく、赤バッチはどいつもこいつも出会うまでの気配が分かりにくいな……」

 悪態をつきながらも、顔と体を咄嗟に捻り、ダメージは多少軽減している。

 追撃に備え、間合いをとる。

「あらら、今のでとったと思ったんだがな」

 結果を憂う相手は、その恰好、先ほどの早い右ストレート、そして構え。以上の事から、相手の流派は。

「ボクサーか」

「正解」

 軽やかなフットワークでぐんぐん距離を詰めてくる。さらに。

「しっしっしっしっしっ!」

 いわゆる武道。ではあまり見られない。速度重視の数で削る突き。

 左ジャブ。

 単純な拳速で言えばこれ以上速い攻撃は存在しないだろう。

 そんなものをマシンガンのごとく連打してくる。

「くっそ!」

 初めこそ叩き落としていたものの、次第に手が追い付かなくなり、最終的にはガードに追い込まれる。

「しっっ!!」

 更にはジャブでガードを操られ、晒されるのはがら空きの腹部。

 隼人がその事実に気が付いたのは、ボディーブローで打ち抜かれた後だった。

「ごふっ……ふぅ……」

 人間を効率よく倒すにはどうすべきか。

 その英知こそ、武術である。

 けれども、いわゆる格闘技へと昇華した武は、その一部を削り取る。もしくは殺傷の少ない、新たな技を生み出す結果となっているものも多い。

 ボディーブローもそのうちの一つ。

 相手を一撃で屠る。ではなく、足を止める。ダメージを残す。倒す技ではなく、削り取る技。

 だからこそ、隼人はまだ立てていた。

「さぁ。まだまだいくよー」

 ボクサーに手ごたえはあった。

 確実にボディーブローは刺さっている。

 ボディーブローは足を奪う。

 もう逃げられない。

「ちぃ!」

 ジャブで距離を測り、ガードの隙間を穿つ右フック。

 からの左アッパー。

 どれもこれも、辛うじて直撃はしていない。

「このままじゃジリ貧だな……」

 いつか、一つでも直撃したら終わり。

 ボクサーのパンチにはそれだけの威力がある。

「大丈夫! もう終わるさ」

 白い歯をキラリと輝かせ、ボクサーが決めに来た。

 パンチに威力を持たせるため、強く左足が踏み込まれたところに。

「しっ!」

 一閃。狙い澄ました右のローキック。

 ボクサーの弱点は足。

 実際のところ、それが本当かどうかは置いておいて。そんな話は武に携わっていれば多少なり耳に入る。

 結果として、目の前のボクサーはうめき声をあげ、そのまま固まった。

 その隙を見逃すわけもなく。

 一気に距離を潰し。

 全力の連撃を打ち込む。

 一撃一撃がボクサーほどの威力ではなくとも、急所を抉る攻撃は十分に相手の体力を奪い取る。

 ボクサーが完全に沈黙するまで、7発だった。

「……はぁはぁはぁ、やっと一つか……あと2つ!」

 バッチを奪い。

 すぐに次の相手を探しに一歩踏み出す。

 休憩などしている時間は無いのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ