表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/127

時間潰し

 

 城内に戻ったクララはため息を吐いた。

「ああ、またもやこのパターン、パーティ始まっちゃってる」

 クララはなるべく目立たぬよう静かに会場に入った。会場内は多くの貴族が集まっており、ダンスが始まっている。

 (きっとエリアス様はお相手の方と踊っているわ)

 そう考えるだけで悲しみが押し寄せここから逃げ出したくなる。けれど来たばかりで今、帰るわけにはいかない。ダンスが見えないように背を向け会場の隅に設置してあるソファーに腰掛けた。

 (ここなら誰も気に留めないわ。それにエリアス様も見えない)

 フー、と息を吐き安心したクララだったが、すぐにその周りに人が押し寄せて来た。

 (何事?!)

 クララは驚き周りを取り囲む人々を見た。皆男性だ。

「私、アフム・フェーメスと申します」

「私はベンノ・マルティノンと申します」

「ブルクハルト・ハッセンと申します」

 突然自己紹介が始まった。十五人ほどの男性がそれぞれ自己紹介をし、目を輝かせクララを見つめている。クララは唖然としたが、公爵家の当主らしく戸惑いながらも笑顔を浮かべ自己紹介をした。

「今晩は。クララ・タピアです。……ところで皆さん何か御用でしょうか?」

 クララは出来るだけ目立ちたくないとここに来たはずだが、なぜか取り囲まれている。男たちは笑顔を浮かべクララに言った。

「クララ様、私とダンスを」

「クララ様、私とお話を」

「クララ様私と月夜を見ませんか?」

 皆それぞれにクララを誘うのだ。

 (なるほど、そういうことね。困ったわ)

 クララは目立たぬようひっそりと過ごそうと決めていただけに男性達の誘いを疎ましく思った。しかし、逆にこれだけ囲まれていればクララの姿は見えない。それにエリアス達を見ないで済みそうだと気がついた。

「お誘いありがとうございます。けれど私は一人しかおりません、ですからみなさん一緒にこちらでお話をしませんか?」

 その言葉に男性達は驚いたが、平等にチャンスが与えられたと考え、皆クララを取り囲みクララとの交流を始めた。

 人が盾になってエリアスが見えない。ホッとひと息をつきたい気持ちになったが、今は会話に集中しないと流石に十五人はきつい。クララは先ほどの魔法石をギュッと握り、会話に集中した。

(セリオ様がいてくれるような安心感がある)

クララは気持ちを整え楽しく会話できるよう努めた。しかし、可愛らしいクララの姿を見た他の男性達も自分も!と、集まってきてしまった。多くの男性達に囲まれたクララは内心慌てた。目立たぬようにと決めていたクララは今とても目立っている。

 (このままじゃまずいわ。それに他の令嬢の視線も痛い)


 ーその頃カルロスは、『天使のような令嬢がいる』と噂を聞き見に行った。そこにはソファに腰掛け、バラの花が綻ぶように微笑んでいるクララがいた。短い金色の髪は柔らかいウェーブを描き、首を傾げるたびにフワフワと揺れるその様はチャーミングで細い首がどこか守ってあげたくなる。要するにクララの可愛らしさは男心を刺激している。

 オーガンジーのドレスがさらにクララを柔らかくどこか儚げに見せ、男達が殺到する理由がわかる気がした。

 (しかし、以前もクララの周りに男が押し寄せていたのか?)

 カルロスは疑問が湧いた。クララは誰が見ても可愛らしい容姿、少し寂しそうな大きな瞳を見ると守ってあげたくなる。けれど、誰かが男達を牽制し、寄せ付けないようにしていた。でもそれが誰なのか、頭の中にモヤがかかっているようではっきりとしない。

 カルロスは首を小さく降り、クララの方に歩いて行った。

「ちょっと失礼」

 カルロスは男達を押し退けクララの所に行った。誰もカルロスに文句は言えない。公爵家、魔法が使えるカルロスに意見を言う男は誰一人いない。クララはカルロスを見てホッとしたように小声で言った。

「カルロス、来てくれたの?ありがとう」

「ああ、クララそろそろ限界だろ?行こうか?」

 カルロスはクララをエスコートしその場から連れ出した。


 (やっぱり仲間はいいわ。困っているとわかってくれたカルロス、本当に頼りになる!)

 クララはカルロスと共に場所を移動した。幸いなことにエリアスの姿は見えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ