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薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第三章

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皇帝エリアスとの再会

クララは公爵家の紋章が入った馬車で城の正門を通過し、庭園の向こうに見える神殿を見た。


 「いつか必ず神殿を壊す」


 クララは心の中で改めて誓った。


 城のエントランスに着きクララは二年ぶりにナバス城に降り立った。

 皆とともに過ごした楽しい思い出と、息ができなくなるほど切ないエリアスとの思い出がクララを襲う。走馬灯のようにあの日々がクララの頭の中で駆け巡り、立っていられないほどの溢れる感情がクララの体から力を奪う。このまま崩れ泣き叫びたい!


 だがクララは唇を噛み押し寄せる感情を堪えた。

 今私はタピア公爵となった。私だけの感情をここで表すわけにはいかない。

 泣く時は一人になった時だけ。


 クララは両手を握りしめ城に足を踏み入れた。だがその瞬間、首を絞められ息が出来なくなるような圧迫感を感じた。

一体何が起きたの?クララは首に手を当て周りを見る。何か変わった様子はない。だがクララは気がついた。クララがここに足を踏み入れることを神が拒否しているのだ。

 

神は私がここに足を踏み入れることを嫌がっている。その理由はわからない。けれど一つだけわかること、それは私が神にとって脅威になると言う事実。


 クララは希望の灯火が見えた気がした。エリアス様を救える。この世界を変えられる!


 自分を信じるのよ。クララ。


 クララは深呼吸し、義会場に向かった

 


 議会場は百人以上入れる大きなホールだ。クララは気持ちを整え中に入った。


 既に多くの貴族達が自分の席に腰掛けており会場に入ってきたクララを見て雑談を止めた。


 クララはそんなことを気にする素振りを見せず使用人の案内してもらい自分の席に腰掛けた。


 中央は皇帝の席、そこから長方形にテーブルと椅子が設置してありクララは皇帝の右側の一番前の席だ。

 向かいはカルロス、その隣はダフネ、クララの左側はグロリアだった。


 クララは久しぶりに会った三人に微笑んだ。その微笑みは周りを明るく照らすような微笑みだ。隣に座っているグロリアは思わずクララの手を握り言った。

 「クララ!すごく変わった気がする。髪の毛のせい?綺麗な長い髪だったのに切っちゃったの?!驚いたけど相変わらず可愛くて、、なんというか安心したわ!!大好きよ」

 そう言いながらクララに抱きつくグロリアをクララも抱きしめた。

 「グロリアも本当に恐ろしいほど美しくなって、恋人何人いるの?!私もその中にまぜてし欲しいくらいだわ!」二人は顔を見合わせて笑った。


 「みなさん静粛に、、」


 その声と同時にエリアスが会場に入ってきた。

 エリアスは圧倒的なオーラを放ち会場の雰囲気は一気に変わる。まるで神聖な神殿の中にいるようだ。

 全員頭を下げてエリアスを迎えた。


 クララは高鳴る心臓と押しつぶされそうな心を整えるため瞳を閉じた。

 もう一度平常心、と心で呟き目的の為今の感情を捨てて綻ぶ薔薇で居ようと覚悟を決めた。


「タピア公爵、久しぶりだな」

 エリアスがクララに声をかけた。


 その声は変わっていない。クララの名前を呼ぶエリアスの声に決めた覚悟が崩れそうになる。

 けれど、クララは耐えた。

 

 ゆっくりと顔を上げエリアスを見て微笑み言った。


 「長い間こちらに伺うことが出来ず申し訳ございませんでした。燃える薔薇、クララ・タピアはエリアス皇帝にお会いできたこと心より嬉しく思っております。この真紅の色に誓い忠誠を捧げます。」


 そう言ってもう一度頭を下げた。クララは両手を握りしめ目の奥で溢れ出しそうになる感情を堪えた。


 「タピア公爵、噂通り綻ぶ薔薇、私も再会できて嬉しく思う。忠誠をありがとう」


 エリアスはクララを見つめ言った。クララは顔を上げ胸に手を当てエリアスに微笑んだ。


 久しぶりに見るエリアスはさらに輝きが増している。長くなった髪が顔にかかった時少し俯いたその表情が薔薇の庭園で愛していると言ってくれたエリアスを思い出させた。


 クララは想像以上に苦しくなり逃げ出したくなった。こんな思いをしてまで生きたくなかった。どうしてあのまま私を死なせてくれなかったの?!目の前にいるエリアスに向かって叫びたくなる。


 クララは膝の上に重ねた左手を右の指で強くつねり平常心を保っている。


 私はまだエリアス様を愛している。


 二年ぶりに再会したエリアスを見て思い知らされ両手が震えた。今すぐにここから出てゆきたい。

 ここにいたら思い出に潰されそう!!

 

 クララはエリアスから視線を外し、ドアの方を見た。気分が悪くなったと言ってここから出てゆきたい。だがドアの前で待機しているセルゲイを見てクララは心がスッと冷えてゆくのを感じた。


 あの男がエリアス様を裏切りミスティルテインをダーインスレイフにすり替え私をこの状況に追い詰めた。


 セルゲイ!私はあなたを許さない。クララは沸々をわき起こる怒りの感情に身をまかせこのままセルゲイを殺してしまいたい。そんな思いを必死に堪えセルゲイを見ていた。セルゲイはクララの視線に気がつくことはなくエリアスをずっと見つめている。クララは初めて気がついた。セルゲイがエリアスを見つめるその視線は熱がある。セルゲイはエリアス様を好きなのだと気がついた。


「……で,タピア公爵としてはどうお考えでしょうか?」

 突然ケイシー・ノリエガ伯爵がクララに言った。


 あ、話し聞いてなかった、、。エリアスとの再会、憎きセルゲイの視線に気を取られていた。


 クララはバツの悪そうな顔をしてケイシー伯爵を見て言った。

 「ケイシー侯爵様、ごめんなさい、、、、話、、聞いておりませんでした」

 クララは微笑みを浮かべ素直に謝った。しかしケイシー伯爵は怒りで体を震わせクララに言った。


 「タピア公爵様、貴方は私を馬鹿にしているのですか?!このような扱いは断じて許容できません!!」


 その言葉を聞きクララは即座に謝った。

 「大変申し訳ございません。私が未熟なばかりにケイシー様を怒らせてしまい、、どのようにお詫びをすれば良いでしょうか?」

 クララはケイシーに言った。

 「未熟とお認めになるのですね、では私の領地民を返して下さい」

 ケイシーは怒りに震えながら言った。


 あ、その話だったのね。クララはケイシーが言いたいことを理解し静かに言った。

 「ケイシー侯爵様、帝国法第四条のハの二,領地民の移動についてをおっしゃっているのですね?確かあの法律に照らし合わせると治める首領の意思を尊重するっと書いてあります」

 ケイシーはそんな法律は知らないが頷いた。


 「ただ帝国法の本478ページの下から三段目に、、だが、領地民の意思を尊重する義務が首領にあるとハッキリ記載されており、解釈としては領地民の自由と解釈されることが多いようです。」


 その言葉を聞き、チャールズ・モンロイ侯爵は小娘が適当なことをと、帝国法の分厚い本を取り出し言われたページを見て顔色を変えた。クララの言う通りだった。

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