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薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第三章

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そしてまた運命は繰り返された

暗闇の中真白なコートを纏うエリアスは長い髪を風に靡かせ空を見つめていた。その姿は暗闇に降臨した神に見えた。この異空間にいてもエリアスは特別だと改めてわかる。クララはエリアスが遠くに感じた。


 空気が澱み始め黒龍の放つ圧倒的な圧がクララ達を押しつぶす。その圧に贖うように四人は手を繋ぎたえた。エリアスは黒龍の圧をそのオーラで押し返す。

 

 クララ達は固唾を呑みエリアスを見つめた。

 戦いが始まる。空気が張り詰めた瞬間、空が眩しく光った。クララはあまりの眩しさに周りが見えなくなったが、目を抑え光を追い出すように何度も瞬きをし、すぐにエリアスの姿を探した。

ドカーン!

 大きな爆発音が聞こえクララの体は硬直する。


 エリアス様!!!


 クララは隣にいたダフネの手を離しエリアスの元に行こうと前進し始めた。しかしダフネは慌ててクララの服を掴む。

「クララ!エリアス様は大丈夫よ!」

グロリアが叫び、クララはその声を聞き冷静になり立ち止まった。

 

 エリアスは真っ白な龍を召喚しておりその龍が黒龍に攻撃をしている。黒龍はエリアスの力に圧倒されている。初めて見るエリアスの戦いに四人は桁違いの能力と魔力に声が出なかった。

 

 エリアスはさらに雷を司る精霊、エレメントを呼び出し巨大な稲妻が黒龍を貫いた。見たことのない精霊を次々呼び出すエリアスは動かず攻撃を繰り広げ圧倒的な強さがあった。


 エリアス様は生き神様なの?


 そんな疑問が湧き上がるほど圧倒的だった。その様子を見つめクララは聖剣を使わなくてもエリアスの勝利を確信した。


「よかった……」

 クララがふぅっと息を吐いた瞬間エリアスの攻撃にやられ横たわっていた黒龍が顔を上げクララを見た。黒龍と目が合う。その目に攻撃のに意思を感じクララは息を呑んだ。思いもよらない黒龍の視線にクララの体は金縛りにあったように動かなくなる。

 

怖い!


 クララは動かない体をどうにか動かそうとするが、足が硬直し自分の意思で動かせない。嫌な予感が頭を過ぎる。黒龍は私を狙っている!どうしよう!!!エリアス様の足を引っ張ってしまうかも知れない!


 クララは助けを求めようと近くにいるダフネを見た。だがだダフネも同じような状況になっている。このままじゃまずい!クララは指一本でも動かそうともがくが思うように動かない。焦れば焦るほど視野が狭くなり、黒龍から視線を逸らした。その瞬間黒龍はクララに勝てると確信したように立ち上がった。張り詰めた均衡が崩れる、その様子を見たエリアスは顔色を変えクララの元に駆け寄ろうとした。

 

しかし黒龍は瞬間移動しクララの目の前に現れた。

「クララ!!」

 エリアスが叫ぶと同時に黒龍の鋭い爪はクララの体を掴む。

 「うっ」黒龍の爪がクララの体にくいこみクララは吐血した。その様子を近くで見たダフネとグロリアは我にかえり黒龍に魔法を使おうとする。しかし黒龍に魔法が効かない。カルロスは魔法が効かないとわかると剣を取り出し黒龍に向かっていくが黒龍はカルロスの攻撃を弾き返す。


 エリアスは黒龍に捕まったクララを見て息が止まった。

 

関係ない人を襲うはずのない黒龍が何故?!

 

「クララ!今すぐに助ける!」

 

 エリアスは召喚魔法を使おうとした。しかしエリアスは気がついた。魔法を使えばクララが巻き添えになる。


 剣で戦うしかない!

 

黒龍は剣を取り出そうとするエリアスを見てクララを見た。


 黒龍自身もなぜクララを襲ったのかわからない顔をしている。黒龍の性質、召喚魔法を使える皇族を襲う。まさか皇族以外に召喚魔法を使える人間がいるなど思ってもいない現実に戸惑っているようにも見える。


 しかし、黒龍はクララを離さず二人を攻撃の対象とし、クララを手にしたままエアリスに襲い掛かろうとした。


 エリアスはクララを助けるため手に持っていた聖剣ミスティルテインを鞘から取り出し取り出し息を飲んだ。

 

「なぜ!!ここにダーインスレイフが!!」

 

 ミスティルテインを持ってきたはずが、愛する者を忘れる剣ダーインスレイフにすり替えられていたのだ!


 なぜダーインスレイフがここにあるのだ?!!


エリアスの頭の中は真っ白になる。 しかし迷う時間はない。クララは口から血を流し上手く息が出来ていない。このままだと死んでしまう。エリアスは唇を噛んだ。


 どうしたらいいんだ?!


 カルロス達はクララを助けようと黒龍に攻撃を仕掛ける。しかしその全てが無効化している。

 

時間がない!

クララが死んでしまう!


「クララ!!」


 エリアスは叫んだ。クララは意識朦朧とする中でエリアスがダーインスレイフを手にこちらを見ていることに気がついた。

 ああ、セルゲイが言ったことはこのことだった。やっぱり運命は変えられない。エリアス様は私を忘れてしまう。

 

 黒龍の爪が食い込む痛さよりも、

 息ができない苦しさよりも、

 愛する人に忘れられる辛さには敵わない。


 このまま死んでしまえばエアリス様は私を忘れ幸せになれるかも知れない。


 それに私もエリアス様に忘れられるよりも死ぬことを選びたい。

 

 クララは首を横に振り自分の意思を伝えた。


 『それを使うならこのまま死なせて下さい』


「クララ!!ダメだ!!」


 エリアスは覚悟を決めダーインスレイフを握りしめ首を振るクララに向かって叫んだ。


 クララは最後の力を振り絞るようエリアスを見つめ声なく言った。


「幸せでした」

 

 その言葉を聞きエリアスは剣を握り手がブルブルと震えた。この剣を使うなら死を選ぶクララにエリアスは縋り付きたくなった。


 またあの時のように愛する人を失ってしまう。この五百年ずっとずっと待っていたたった一人の人。

 また巡り会え、同じように愛しようやく愛を返してくれるところまで来た。それなのになぜ運命は毎回私を絶望の闇に引き摺り込むのだ?なぜ……


 自分ではどうしようもない運命。

 エリアスは瞼を閉じた。


 これを使ったら私はクララ忘れてしまう。

 クララを忘れてしまうとこの呪われた王家の呪いも公爵家との歪な関係も私は忘れてしまう。


 だが、今この目の前でクララが殺されるのを私は耐えられない!!

 

 なぜセルゲイは、なぜ私を裏切ったのだ?!


どうしてこんなことになってしまったんだ!

 

 黒龍は混乱するエリアスの様子を見てクララを握る手をさらに強めた。

 

「ウ……ン、グッ」

 

 クララが小さく唸り大量に吐血した。


 迷う時間は無い。私はクララを死なせたくない。この選択はクララが望んでいないとわかっている。

 だけど私は!


 ぐったりするクララを見た瞬間エリアスは剣を構え黒龍に向かって行った。

 


 こんな自分勝手な私をゆるしてくれ!!

 

「クララ!!許してくれ!!」

 

 エリアスはクララをみつめ涙を流しながら黒龍の首をダーインスレイフ切り落とした。


 その瞬間世界は光に包まれた。

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