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薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第三章

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裏切り

翌朝クララ達は制服を着て神殿の前でエリアスを待った。皆緊張しているのか口数が少ない。そんな四人をセリオは優しい眼差しで見ていた。程なくし、エリアスが現れた。四人は整列しエリアスの頭を下げる。エリアスは以前クララが夜の神殿であった時の様に髪は濡れており真っ白なロングコートを羽織り、その後ろにはセルゲイが聖剣を携え現れた。


 セリオはエリアスに頭を下げ緊張で表情がこわばっている四人に言った。「エリアス様は身を清めここにきた。皆も神聖な気持ちで居なさい」その言葉を聞きクララはあの日ここで出会ったエリアスの事を思い出した。


エリアス様はあの後神殿の地下に行ったのね。


クララはあの日を思い出しエリアスがどんな気持ちであの時クララと話したのかと考えると胸が苦しくなった。瞳が涙で滲む。こんな時に泣くだなんて!クララは涙を隠すよう俯いた。


俯くクララを見てエリアスはそっと近づきその耳元で話しかけた。「クララ今日は一緒だから」クララはその優しいエリアスの言葉に胸が締め付けられた。このまま泣き崩れそう。だけど今日は一緒に行けるのだから。クララは顔を上げ精一杯の笑顔をエリアスに向けた。


「セリオ、あとは頼む」エリアスはセリオから四つの公爵家の魔法石がついたネックレスを受け取った。それは先日それぞれが地下の戦いで持ち帰ったものだった。エリアスはそれを首にかけセリオに言った。「あとは戻ってからだ」そして全員は神殿に入り祭壇裏まで移動した。クララもエリアスのすぐ後ろを歩きカルロス達もその後をついていった。


その時、クララの首のリボンが解け床に落ちた。慌ててしゃがみ込み拾っていたら皆に追い越された。急いでリボンを拾い先頭にいるエリアスを見るとセルゲイが聖剣を携え扉の前に移動したエリアスに渡していた。


急がなきゃ!クララは皆がいる祭壇の裏に急いで向かった。セルゲイはエリアスに聖剣を渡そのまま祭壇裏から神殿の出入り口に歩き出した。その途中クララとすれ違った。


「身の程知らずを思い知る時が来た」


セルゲイはすれ違いざまに呟いた。


「え?」


クララは振り返りセルゲイを見た瞬間「クララ!早く!」カルロスに呼ばれ慌てて走り去ったがセルゲイの言葉が頭にこだました。セルゲイは明らかにクララに敵意を向けてきた。以前から気にはなっていたが、今の言葉を聞き確信をした。


嫌な予感がする。


セリオが「健闘をお祈りしております」とエリアスに声をかけた。エリアスも「あとは頼む」と言いセリオの肩に手を置いた。二人の信頼関係が垣間見られる。皆もセリオに頭を下げエリアスの後を追った。


クララもセリオに頭を下げた時、セリオがクララに声をかけた。「クララ、何か心配事があるのか?」先程セルゲイが言った言葉が頭をよぎる。だが今はそんな事を言っている時間はない。「セリオ様、なんでもありません。いってまいります」クララは口角を上げセリオ頭を下げた。セリオは何か言いたげだったクララの後ろ姿を見送った。



あれは空耳じゃない,私に向けて言った言葉だ。

初めて会った時から好かれていないと思ったが、こんな時にあんな言葉を言うとは。クララの気持ちはズシンと重くなった。


 クララはため息を吐き気分を変えようと壁に書かれたさまざまな言葉を見ながら階段を一歩ずつ降りていった。途中ルカスが書いたフランシスカという文字を見た。力強いその文字には確かな愛を感じられた。クララはその文字をなぞるように触った。深く愛されていた。


そして、その文字を愛おしそうに触っているクララをエリアスは見つめていた。


 最後の階段を降りる手前でエリアスは止まった。皆何事かと思い同じように足を止めるとエリアスはクララを呼んだ。

「クララ、こちらに」

 狭い階段ですれ違うのも困難な中カルロス達はクララがエリアスのそばに行けるように階段の隅に移動し、クララを通した。「ごめんね」と言いながら狭い階段を降りエリアスの元に行った。先ほどのフランシスカという文字が頭に浮かぶ。エリアス様はずっと私を愛してくれている。だからこそ不安になる。


 エリアスは不安に揺れるクララに瞳を見つめ「ここにクララと書いていいか?」と聞いた。クララはその言葉を聞き、一瞬心が凍りつくような痛みを感じだ。なぜなら書いてしまうと忘れられる様な気がしたからだ。嬉しいけれど、怖い。また忘れられてしまうかもしれない。


 でも、皆で名前を書き合えば悲しくないかもしれない。怖くないかもしれない。「エリアス様、ここにみんなの名前を書くのはいかがでしょうか?もうエリアス様は一人じゃないから記念にみんなで名前を書くのはダメでしょうか?私だけだと忘れられてしまいそうで怖いから、、」そう言ってクララは瞳を潤ませエリアスを見た。「クララそれは良いな、そうしよう」エリアスは目を細めクララに言った。

 それから皆それぞれに名前を書いた。


 エリアスはクララと書き、クララはエリアスと書いた。


 ……「じゃあ準備はできた。皆行こう」エリアス達は階段を降り、光の中に入っていった。



 神殿を出たセルゲイは笑いが止まらなかった。聖剣ミスティルテインをダーインスレイフと入れ替えたのだ。ミスティルテインの鞘にダーインスレイフを入れてそれをエリアスに渡した。ダーインスレイフを使えばクララを忘れこのすり替えも気にしないはず。

 

「あははは!エリアス様は神に近い方!クララなど忘れて方が良いのだ!」

 

 セルゲイはミスティルテインを片手に持ち、地下へと続く道を守るセリオを背後から襲った。



 

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