共に
「一緒に、、エリアス様と一緒に?!」
カルロスは驚いた。まさか本当に一緒にあの音のない地下に行って共に戦うことが出来るとは。一人で地下に行った時、みんなの能力があれば、共に戦えたらと思った、でも、、
カルロスは全員であの地下に行ったらどうなるのか不安もある。「これまで黒龍との戦いが終わるとあの地下への扉は二度と開かない。唯一開けることができるのは神に使える皇女のみ。今は皇女がいない。だから次の世代まであの扉は開かないのだ。そこに理由があるのかも知れない、クララに言われたおかげで大きなヒントを得たようだ」エリアスはクララを見つめ優しく微笑みながら言った。クララはエリアスの微笑みを見て突拍子のないことを言ってしまったが、皆でゆけばエリアスが黒龍との戦いで自分を忘れないかも知れないと思ってしまった。
私は自分のことばかり考えている。クララはエリアスから目を逸らし、自分の手元を見つめた。こんな自分勝手な気持ち、エリアス様には言えない。
エリアスは下を向くクララを見つめ思った。クララは私がクララを忘れたくないと知っていてくれる。そして、もし一緒に行けるなら何かが変わるかも知れない。クララと一緒なら何かを変えることが出来る。
エリアスはセリオに言った。「セリオ、セリオにはこの世界に残って欲しい。私が戻るまでこの世界の均衡が崩れないよう守って欲しい」その言葉を聞きセリオは笑いながら言った。「エリアス様、この老いぼれに酷な事を。でもまあ、エリアス様にこの命を捧げると誓った手前、引き受けましょう」セリオはそう言いながらも久しぶりの緊張感に気持ちが高揚し、ようやく死に場所が探せそうだと思った。
エリアスは緊張した面持ちで黙っている四人に聞いた。「怖くないか?」突然の質問にカルロス、グロリア、ダフネは答えにつまった。だが、クララは言った。「エリアス様、怖くないといえば嘘です。だけどこのまま生きる方がもっと怖いです。だから、怖くありません」クララはエリアスをしっかりと見つめ言った。エリアスはその言葉に感謝するようにゆっくりと頷いた。「俺も、、クララと同じです!怖くありません」「私もそうです」カルロスとグロリアが言った。「私はどちらも怖い、同じ怖いなら希望のある怖さが良いです!」ダフネが言った。
「カルロス、ダフネ、グロリア、クララ。一週間後あの世界にゆく。戻れるかわからない。だけどダフネが言った希望のある怖さを選びこの世界を解放しよう。私はその為の命をかける」
エリアスはそう言って立ち上がり部屋を出て行った。セリオもエリアスの後をついて部屋を出て行った。
その場に残った四人は話をした。「今日色々ありすぎて頭追いつかないなぁ」カルロスが言った。「みんなそうよね」グロリアも言った。ダフネは髪を触りながらクララに言った「クララ、五百年前の事覚えているの?」クララはため息を吐き言った。「少しだけ、でも本当につらくて思い出したくない」「そっか、でも一つだけ、ルカス皇帝と愛し合っていたの?」グロリアが聞いた。「黒龍の戦いで使う聖剣ダーインスレイフはその人の一番大切なものの記憶を奪うの。ルカス様はフランシスカを忘れてしまった。フランシスカが死ぬ直前にルカス様はフランシスカを思い出したの。だけどフランシスカはルカス皇帝に忘れられてしまった事があまりにも辛い記憶だったから。私は思い出したくない。ルカス様はフランシスカを忘れてしまった事を嘆き生まれ変わったら大切にしようと思い出す事を選んだ。でも私は」クララは黙ってしまった。ダフネがクララを抱きしめた。「言わなくていい」グロリアもクララを抱きしめ言った。「クララ、こんなこと聞いてごめんなさい」
「おい!今回エリアス様は大丈夫か?」カルロスは痛い事を聞いてきた。「エリアス様の大事なものって」三人はクララを見た。「違う、私の訳ないじゃない、エリアス様はフランシスカを見ているのよ、私じゃないから」
私がフランシスカじゃなければエリアス様は私なんて相手にしない。ああ、私の自信のなさや怖さはここにあるんだとわかった。エリアス様が忘れるのは誰なのか、フランシスカなのか、クララなのか、私が忘れられたくないと思うのは私の中のフランシスカなのか、それともクララなのか。




