エリアスの戦い
エリアスはため息を吐いた。折角クララが何かを伝えてくれようとしたのに、なぜセルゲイはドアをノックせずあんな話をしたのか。エリアスはセルゲイを警戒した。彼は幼い頃からずっと仕えてくれている男だが、神の僕と言われる家門の出、クララと一緒にいる時は必ず邪魔をする。「エリアス様」何かを考え込んでいるエリアスにセリオが声をかけた。エリアスは長い髪を片方だけ耳にかけながら「失礼」と言い、これからの事を話し始めようと皆の顔を見た。クララはまだ長いまつ毛が涙で濡れ伏せ目がちに机の上に生けてある花瓶に入った薔薇を見つめている。その姿は穏やかで少し悲しそうに見えエリアスは先ほどクララが言いかけた言葉を聞けなかった事をまた悔やんだ。「エリアス様」もう一度セリオがエリアスに声をかけた。エリアスはセリオを見て頷き話し始めた。「この宿命を壊す為に一つ一つ絡まった糸を解き、この宿命を与えた神に挑む。そして本来私たちは精霊と共に生き、分け隔てなく誰でも魔法が使える世の中に戻さなければならないのだ。私たちだけが特別ではない世界を取り戻そう」エリアスは一人一人の顔を見て言った。
「共に戦います!」カルロスが言い、グロリア、ダフネ、クララも力強く頷いた。
エリアスはセリオを見た「エリアス様地獄の果てまでお付き合い致します」セリオも頭を下げた。「皆、、ありがとう」エリアスは立ち上がり胸に手を当てお礼を言った。
「私はこれから黒龍との戦いがある。それは避けることができない。なぜなら私の魔力をもっと強くすることができる唯一の方法だからだ。それに、今この儀式を避けると神の意志に背く事になりこちらの準備が整わないうちに皆殺される可能性が高い。だから私はあの神殿の地下に行く。一週間後だ」
クララはエリアスの顔を見つめた。ああ今の私、きっと悲しい顔をしているのかもしれない。こんな顔見せたくない。クララは下を向いた。「この戦いが終われば私たちは神に挑む。それまでまっていて欲しい」エリアスは言った。「エリアス様、俺たち待っています。どうかご無事のお帰りおまちしています」カルロスが力強い、覚悟を決めた声で言った。グロリアも同じく言った「エリアス様のご武運をお祈り申し上げます!」ダフネも言った「エリアス様と共に戦う為私ももっと強くなります!おかえりお待ちしています!」
クララは想いが溢れてしまい声が出ない。今何か言ったら泣き崩れてしまいそう。無事を祈っています、お帰りをお待ちしています、でも忘れられたら?そんな事を考えてしまう。辛い、エリアス様に言葉を、何か、「わわ、私も行きたいです」クララは思わず言ってしまった。「あ、すみません、行けるわけ無いですよね、心配で、あ,違うあの、何と言えば良いのか、、」突拍子のないクララの言葉にカルロス達は大笑いを始めた。「あははは!!クララ、お前どうしてそうなる?」カルロスはクララの頭をバシバシ叩いている。グロリアもダフネも笑いを堪えている。クララはエリアスを見た。エリアスは目を細めクララを見つめ言った。「私もクララと行きたい。そんな方法考えても見なかった。もしかして、そこにヒントがあるのかも知れない、、、セリオ,皆で行けるか?」エリアスはセリオに聞いた。「確かに、あの空間に神に近づくヒントがあるかも知れません、、皆で行くのは不可能ではないかも知れません」




