自己紹介
「右側の後継者から順に皇女様に自己紹介をしなさい」先程の初老の男性が四人に言った。クララは左端にいたので自己紹介は最後だ。今はひたすら何事もなく挨拶が終われるように心の中で祈るしか無い。クララは両手を握りしめた。
「私はモリアーナ公爵家のカルロスでございます。年齢は十四歳、この度風の精霊シルフィードの祝福を受け覚醒いたしました。ナバス帝国の為懸命にお仕えしたいと思います。よろしくお願い申し上げます」
カルロスは薄いグリーンのローブを纏い、グリーンの髪にグリーンの瞳をした涼やかな顔の美少年で、しっかりと皇女を見つめ挨拶をした。その瞳には信念を感じさせる力があった。
皇女は眉一つ動かさずカルロスを見つめ挨拶が終わると頷いた。
「次!」初老の男性がキビキビとした声で言った。
「私はアドモ公爵家のグロリアと申します。年齢は十四歳、水の精霊ウエディーネの祝福を受け各席いたしました。帝国、およびミラレス王家に忠誠を誓いお支えするため努力いたします。どうぞ宜しくお願い申し上げます、」
グロリアは薄い水色のローブを羽織り、銀色の髪に一重の薄いブルーの瞳がクールな印象を与える大人っぽい美人な娘で、穏やかではあるが、言葉に力強さと賢さを感じさせ、微笑みながら皇女に挨拶をした。皇女はカルロスの時と同じように頷きグロリアを見つめた。
「次!」
「アンベル公爵家、ダフネと申します。大地の精霊ノームの祝福を受け、この度後継者として覚醒いたしました。みなさんと同じく十四歳、帝国のため、王家の為に尽くしたいと思っております。どうぞ宜しくお願い申し上げます」
ダフネは柔らかいベージュ色のローブを羽織り、ベージュの巻き髪にベージュの瞳をしたどこか色気のあるぷっくりとした唇が可愛らしい娘で、明るく通る声がおおらかさと優しさを感じさせる。皇女は頷きダフネを見つめた。
クララはダフネの自己紹介を聞きながら足が震えてきた。
ああ、どうしよう、次は私、、皇女様に嘘を言わなければならない。この同じ仲間になる公爵家の後継者達にも嘘をつき続けなければならない。それに、、あの初老の男性、あの人を騙す事ができるの?、、クララは一気に不安の波に煽られ平常心を失いかけている。
レオンになりきる為に金色の髪は赤茶に染められ、長い髪は短く切られ、唯一一緒なのはこの青い瞳だけ。バレたらどうしよう、怖い、、どうしてこんな事になってしまったんだろう、、逃げ出したい、、でもそんな事をしたらタピア公爵家は終わってしまう。ウーゴに殺される、、
そして、、もう一つ、、イフリートの名を呼ばなければならないなんて、、制御できなかったら、、
クララは不安と緊張のあまり頭の中が真白になった。