ミラネス王家の後継者
ミラネス王家は謎に包まれている。
王家の跡取りは四大公爵家の跡取りが城に集まった時に初めてお目にかかることができる。それまでいつ生まれたのか、皇子なのか皇女なのか誰も知る人は居ない。
だからこの十四歳の招集は国内外からの注目を浴びるのだ。
クララは公爵家の馬車に乗りナバス城に向かった。タピア公爵家の紋章は炎に薔薇の紋章で燃える薔薇と呼ばれることもある。クララは女の子だとわからないようなるべく大人しくしていようと決めた。
ナバス城は別名白の奇跡と呼ばれる城で、城の土台は水晶で出来ており太陽が昇り光が城に当たると水晶が反射し城が輝く。その美しさは奇跡の様だと言われる。
大きな門から城に入ると広い馬車道が城のエントランスまで真直ぐに続き、左右には広い庭園がありとても見事な景観になっている。
タピア家の馬車が城のエントランスに到着し、クララは初めてナバス城に入った。
案内され謁見の間に到着すると既に他の公爵家の後継者達が立っていた。クララは何も言わず会釈だけし、少し離れた場所で三人の後継者を見つめていた。
謁見の間は人数によって大きさが変わる。今日はそれぞれの公爵家跡取りの四人しかいない。それに合わせ謁見の間は二十人ほどしか入れないこの城の中でも一番小さな謁見の間が用意されていた。
入り口を背にして前方には皇帝と皇后が座る椅子が壇上に置いてあり、そこから下に降りる階段が中央に5段ほどある。
階段を降りると真ん中に通路があり出入り口へ続いている。
その中央の通路を挟んでクララから見て奥側に三人の次期公爵達は立っていた。女の子が二人、男の子が一人。全員がそれぞれを観察している様な妙な雰囲気だったが、急に周りが慌ただしくなり近衛兵が王家専用の出入り口から部屋に入ってきた。
「整列しなさい」何処から現れたのか、初老の男性が壇上の下で厳しくも張りのある声でクララ達に指示を出した。慌てて四人は通路を挟んで左右二人にわかれ整列し頭を下げた。
「面を上げなさい」
クララはその声を聞いて顔を上げると目の前にこの世の人では無いと思うほど美しい人がこちらを見つめていた。
ミラネス王家の後継者は皇女だった。
その皇女の容姿は、背中まである金色の長い髪に深い紺色に近い青い瞳、長いまつ毛にスッと通った上品な鼻、形の良い唇、肌の色は白く透明感があり、同じ人間に見えないとても美しい皇女様だ。質の良さそうな光沢のないシルクのドレスの上に同じ白のローブを羽織っている。存在自体が輝いて見える。
皇女は壇上に上がりこちらを見ている。四人の公爵家跡取りは皇女を見上げ全員がその美しさの見惚れてしまった。初老の男性が咳払いをし、四人は慌ててもう一度頭を下げた。
クララは初めて会う皇女様をジロジロと見て失礼な事をしてしまったと思い恥ずかしくなりつつも、その美しさに胸が高鳴った。こんなに美しい皇女様にお仕え出来る事が嬉しい、、。だが、すぐに我に返った。私は今からこの方に、、嘘偽りを言わなければならないんだ、、、。皇女様を,ここにいる全員を騙さなければならないんだ。そう考えた瞬間心臓が縮み上がったように痛んだ。怖い、どうしよう、、。とても怖い、、。クララは頭を下げながら不安な気持ちで一杯になった。