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城に行け




「お父様、何か御用でしょうか?」


 クララはドレスを持ち上げ父であるウーゴに挨拶をした。ウーゴは窓辺に立ち挨拶をするクララを険しい表情で見ている。今日は何を言われるのだろう、、そう思った時ウーゴは言った。

 

「クララ、お前は今日死んだことにする。」


 ウーゴは手に持っていた葉巻を口に咥えクララを見ている。その鋭い眼差しの中に娘に対する愛情は一片のかけらも見当たらない。

 

「え?おっしゃる意味が分かりません」


 クララは冷たく自分を見つめる父親に対し勇気を出し聞き返したが、その視線に耐えられなくなり俯いた。

 クララにはウーゴの言った言葉の意味が全く分からない。この父は何を考えているのだろう、、嫌な予感が現実になりつつある。クララは勇気を出して再び顔を上げウーゴを見た。ウーゴは見下しているかのような視線をクララに向け言った。

 

「レオンの代わりに城に行け。レオンの魔法が安定するまでお前はレオンとして生きるのだ」


 ウーゴは信じられない事を平然と言った。弟の、男のフリをして城に?!クララは驚き言った。


「レオンは男です。まさか、、王家を騙すのですか?、、」


 クララは考えてもいなかったウーゴの言葉に恐怖を感じた。ミラネス王家や、他の公爵家後継者を欺く?レオンをタピア公爵家次期当主だと発表し、レオンが城に行く事も決まっているのに?!

自分が身代わりとなって城に行く想像した瞬間に体が硬直し震えてきた。こんな事が露見したらタピア公爵家は終わる。ウーゴは震えるクララを見て言った。


 「大丈夫だ、最終的にレオンと代わればいい。おそらく交代までそんな時間はかからないしどうせわからんだろう。お前が上手くやりさえすればな」


 ウーゴはニヤリと笑ってクララを見た。その顔はクララにとって恐怖でしかなかった。幼い頃からこの顔をした後に反抗をすると躾と言いながら鞭で打たれた。こわい、、逆らえない、、。でも、あのレオンがすぐに私と交代できるのだろうか?、、出来たとしても私はその先どうなるの?、、クララは恐怖と涙を堪え聞いた。


「私は、、この先私はどうなるのですか?レオンの魔法が安定し入れ替わったら、、死んだことになっている私は、、」


 クララはそんな要求はやはり拒否したいと思い言った。


「レオンと入れ替わった後は適当な身分を作って生きれば良い。それよりもレオンになり切る為その長い髪は切り、ドレスは全て燃やせ。わかったらすぐにやるんだ。いまからこのタピアにはクララは存在しない」


 ウーゴはそう言って鞭を取り出し震えるクララに見せた。これは脅迫だ。クララはその鞭を見た時恐怖で息が吸えなくなりしゃがみ込んだ。苦しくて涙が溢れてきた。ウーゴは自分の思い通りにクララが動かなかった時、鞭を取り出しそれでクララを打った。怖い、、クララはゆっくり息を吐き、吸い、震えながら恐怖に耐えていた。そんなクララの様子に満足したウーゴは低い声で「言われた通りやれ」そう言って部屋を出て行った。


 クララには拒否権すら無かった。言われるがまま従う他に生きる道は残されていない。

こうしてタピア公爵家の長女クララは急病で死に、クララはレオンとして生きる事を強要された。


 一方本物のレオンは義母のマカレナが甘やかしたおかげで自分一人では動けないほど巨漢でだらしのない青年になった。父のウーゴはそんなだらしのない息子を可愛がりクララに愛情を与えることは無かった。なぜ母親が違うだけで同じ姉弟でもこんな扱いを受けるのか。理不尽な要求を平然言う父親にクララは逆らえない。常に恫喝され強要され育ったからだ。

 


 クララは悔しいと思いながらもタピア公爵家のためだと決意し、美しい金色の長い髪をバッサリと切り、レオンの髪色である赤茶に染め、大好きなレースのリボンと大きなバラがついたピンクの帽子、色とりどりのドレスを燃やし、レオン・タピアとしてナバス城に向かった。

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