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この人生は誰のもの?

 クララはリアナを見送った後、力がぬけたように地面にしゃがみ込み放心していた。その様子を見たカルロスは心配し明るく声をかけた「レオン、最初は驚いたが最後は美しかったぞ、そう落ち込むな」クララは暖かい言葉をかけてくれるカルロスを見た。カルロスは落ち込む私を見て励まそうとしてくれている。嬉しいけど隠し事はもうしたくない。クララは瞳を閉じ俯きながら言った。「カルロスありがとう、でも、最小の魔法を使ったのに森は焼けてしまった、、。実は、最後の魔法、私自身知らない魔法なんだよ、、、」クララは言葉に詰まりながら言った。「は?最小の魔法があれ?!それに知らない魔法って、使ったことないって意味?」カルロスが聞いた。「うん、使ったことがないならまだいいよ、そんな魔法がある事も使えることも知らなかった、、」

 クララはカルロス達にも邪心を抱いているのではないかと疑われても仕方がないと諦めに近い境地に至った。なぜならそれぞれの公爵家に与えられるのは炎、風、水、地の四つの魔法のみでそれ以外が使えるなどあり得ないからだ。それに魔力もそれぞれの公爵家は均衡するはずだがクララだけ魔力が異様に高い。王家と公爵家は建国以来ずっと今日まで全て決められた通りに動いている。しかしクララ一人だけその決まりから外れているからだ。カルロスは黙ってしまった。グロリアもダフネもレオンの能力に対し漠然とした恐ろしさを感じその場から動けなかった。


「レオン、後で話がある、例の場所に来なさい、今日はこれで解散、これから朝食も夕食も食事は各部屋に用意する。昼食はその都度案内をする。食後は好きに過ごしなさい」セリオは沈黙を破るようにそう言って城に戻る道を歩き出した。四人もセリオについて歩き出した。

 

 帰り道は皆黙ってしまい重い空気が流れている。これではだめだわ、、クララはみんなに謝った。「みんな、、ごめん、素晴らしい魔法を見せてくれて気分がよかったのに、最後にあんな失態をして、、本当にごめんなさい」クララは頭を下げて謝った。それを見てグロリアがクララの頭をバシッと叩いて言った。「なんかレオンって目が離せないっていうか、、」カルロスもクララの頭をバシッと叩き「そうそう、心配になるっていうか」ダフネも同じようにクララの頭をバシッと叩き「放って置けないよね!」そう言ってみんなでクララをなぐさめてくれた。「みんな、、ありがとう、本当ごめんね」クララは頭をさすりながらもう一度みんなに謝り、少しだけ心が軽くなった。

 三人は優しく微笑みカルロスはクララと肩を組み歩き出した。クララはカルロスの行動に戸惑った。男の子と肩を組むなどどうしよう!!クララは戸惑いながらカルロスを見るとカルロスはにっこり笑って「男同士友情育もうぜ!」と言って口笛を吹き出した。カルロスは男の子と思って接してくれてるから私も同じように男の子として接しよう。クララはカルロスの優しさに感謝しながらカルロスと肩を組んで城に戻った。セリオはその様子をみて四人が仲良く助け合っていることに満足そうな表情を浮かべ城に戻って行った。


 城に着く頃には少し陽が傾いていた。魔法を使うと時間の感覚がなくなるが、結構長い時間あの草原にいたのだと思うと、どっと疲れが出た。長い1日、、だがクララはこれから図書室に行かねばならない。気が重い、、本当は逃げたい。でも逃げられない。皆と別れクララは図書室に向かおうと覚悟を決めた。


  エントランス付近でカルメラがクララを待っていてくれた。クララはカルメラに「このまま図書室に向かいます」と伝えると「お連れいたします」と言ってクララを図書室に案内してくれた。長い廊下を歩いているとなんとなく一人じゃなくてよかったと思いカルメラにお礼を言った。「ついて来てくれてありがとう。一人だとちょっと怖いかも、、」そう言うと「このお城はお化けは出ませんよ!」と言って笑った。あ、カルメラが初めて笑ってくれた、、、なんだか嬉しい。クララはカルメラに「お化けがいなくてよかった!」と言って笑いかけた。なんだか少し仲良くなれたような気がして嬉しかった。


 図書室の前でカルメラと別れ「待っていなくて良いですから先に戻ってください」と言い中に入った。


 図書室は少し薄暗くなっていたが部屋にランプが灯されており天井にはファンが回り独特の有機的な空間がランプの光でさらに暖かみを増して感じた。クララは後ろ手を組みゆっくり歩きながら本棚の本を眺めていた。帝国の歴史書や、魔法に関する書物、精霊に関する書物、さまざまな本が沢山並べられている。その中で薔薇に関する本も沢山あった。「薔薇の契約、、、」クララは呟いた。そういえば、あの時リアナ様が真紅の薔薇に触れた瞬間花の色が真白に変わり消えた。あれはなんだったんだろう。その前に、意図せず強烈な炎の魔法を使ってしまった。ますます反逆者だと思われてしまう。セリオ様は最小の魔法か?と不信感と驚きの表情を隠さず尋ねてきた。思い出すだけで身震いがする。リアナ様は私のあの魔法をご覧になってどう思われたのだろう?助けてくださったけれど疑われても仕方がない。

 私は父親であるウーゴに逆らえず王家と他の公爵家の皆を騙してここまで来てしまった。本当の自分はこの世にもういない人になってしまい私が私として生きられなくなった。


「、、私の人生は誰のもの?」クララは呟いた。「あなたの人生はあなたのもの」突然声が聞こえた。誰?!クララは辺りを見回した。「お化け?はいないはず、、、どなたかいらっしゃいますか?」クララは恐る恐る声をかけると二メートルほどの高さのある脚立の上にリアナ皇女が腰掛けて足を組み本を読みながらクララを見ていた。「ハッ、リアナ様!大変失礼いたしました。お寛ぎの所に申し訳ありません!」クララは慌てて部屋を出ようとした。「レオン、待ちなさい」リアナはクララを引き止めた。クララは脚立の方を見上げ、次の言葉を待った。

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