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炎の魔法


「用意できました!」カルロスが言った。セリオは頷きカルロスに始めるよう合図をした。カルロスはリアナに頭を下げ目の前に広がる草原を颯爽と歩き出した。五十メートルほど真っ直ぐに進んだ所で立ち止まり周りをぐるりと見回した。そして爽やかな笑顔を浮かべリアナとセリオに「今から始めます」と言い片手を上げた。


 カルロスが片手を上げると彼を中心に草原の草が右回りに揺れ始めた。竜巻の出来始めの様な螺旋状の風がだんだんと強くなり範囲を広げ直径十メートルほどになった。大きな竜巻となった風は全てのものを空高く巻き上げている。まるで地上にあるもの全てが吸い上げられているような圧倒的な光景だ。クララはその風の力を見て万が一巻き込まれたら、、と想像し少しだけ怖くなった。ダフネやグロリアは怖く無いの?クララが二人を見た瞬間カルロスが指を鳴らした。パッと風が止み上空から花吹雪が地上に吹き下ろして来た。空から舞い散る花びらはヒラヒラと緩やかな風に運ばれクララ達に降り注いでいる。先ほどまで怖さを感じていたクララもその美しさに感動した。舞い落ちる花びらにそっと手を伸ばし一枚掴んだ。手の中にある美しい花びらを見つめていると心穏やかな気持ちになった。カルロスはとても素敵な魔法を使うのね。風のように自由な性格のカルロスの繊細な一面を見たような気がした。カルロスはもう一度指を鳴らしそれらがパッと消え元の草原に戻った。


 リアナはカルロスの魔法をみて頷き、セリオはカルロスに言った。「扱いづらい風を見事に扱っていたことは素晴らしい。良い魔法だった」カルロスは二人に一礼をした。グロリアは「カルロスの花吹雪と私の龍を一緒に遊ばせたら楽しそう!よかったわ!」と言ってカルロスを誉めた。ダフネも「本当に素晴らしかったわ!」とカルロスを誉め、クララも「美しさに圧倒された!!」とカルロスに伝えるとカルロスは少し俯き指先で頬をかき照れながら「ありがとう」と言った。その様子を見たグロリアはカルロスに言った。「カルロスっていい加減な人だと思ったけど可愛いとこあるのね!」それを聞いたクララとダフネは達は大笑いし、ダフネがグロリアの言葉に不貞腐れているカルロスとその様子を見て笑っているグロリアに言った。「あなた達二人、意外にお似合いかも」クララも頷き言った。「本当お似合いかも」その言葉を聞いた二人は口を揃え「勘弁して!」と言ってお互いにそっぽを向いた。

 こうして二人の魔法が終わり少し休憩を挟みクララとダフネは準備を始めた。


 

「次は、、」セリオがダフネとクララをみた。「用意できました!」二人は口を揃え言った。

「あ、レディーファーストだからどうぞ」クララはダフネに言った。「ありがとうレオン」ダフネはそう言って歩き出し、草原の中を十メートルほど進んだ所で立ち止まった。そしてその場でしゃがみ込み大地に両手をついた。すると大地が割れそこから大きな水晶が現れた。その水晶はどんどん大きくなり山のように聳え立った。ダフネがその水晶の山にフッと息をかけるとそれが一瞬にして粉々になりキラキラと光りながら大地に降り注ぎそこから一本の木が生えてきた。その木は十メートルほどの高さになり枝先に実をつけ始めた。その実はさくらんぼ位の大きさで全て宝石だ。その宝石はどんどんと成長しりんご位の大きさになると大地に落ちはじめた。落ちた宝石が大地一面を覆い輝いている。その様子に見とれているとダフネが指を鳴らした。眩い宝石達が一気に、砂のように粉々になり輝きながら大地に溶けていった。


 リアナは頷いた。セリオは「これは個人的に欲しい魔法だ!ダフネ素晴らしいな」と言って笑いながら誉めている。グロリアもカルロスも「これは羨ましすぎる,いい魔法だよ」と言ってダフネを褒めた。クララも頷いている。こんな魔法があるとは、、クララはダフネのゴージャスな魔法に圧倒された。ダフネは「見慣れちゃってアレだけど、喜んでもらえて嬉しいわ!」と言って微笑んだ。


「では最後、レオン」セリオが言った。クララは一息吐き意を決したようにセリオに話しかけた。「セリオ様、実は最近魔法がコントロール出来なくて、、不安がありますので最小の炎だけを出す魔法でもよろしいでしょうか?」クララは不安げな眼差しでセリオを見つめている。セリオは判断を仰ぐ為リアナを見た。リアナはそれでも構わないと言うように頷いた。「レオン、それでもいいだろう。早速見せてくれ」セリオはそう言ってクララの肩をポンと叩いた。クララは少し皆から離れ前方を見た。目の前に広大な草原が広がっており、その向こう遠くに森が見える。ほんの少し火球を出す程度にしよう。クララは目を閉じて片手をあげ、人差し指を目の前に掲げて「フェルド」と唱えた。


 その瞬間大きな炎が現れ目の前の草原が巨大な炎に包まれた。ごうごうと火柱をあげながら真直に森の方に進み始めた。カルロス,グロリア、ダフネはクララが放った強烈な魔法に固唾を飲んだ。リアナとセリオは冷静にその様子を見ている。

 高温の炎は見えるもの全てを灰に変えながら森に向かっていった。クララは自分が放った最小限の魔法が凄じいエネルギーを放ち自分の意志とは無関係に全てを燃やし尽くそうとしている様子を放心状態で見た。その間に森が勢いよく燃え始め辺りの温度は急上昇しセリオはすぐに魔法防御をはりクララに声をかけた。「レオン!魔法を解除しなさい」クララはその声を聞き我にかえり魔法を解除する為指を鳴らした。その瞬間炎は消えたが、燃えていた場所全てに薔薇が生え、草原一面が薔薇だらけになった。一面の薔薇はどれも真紅の薔薇で見えるもの全てが赤く染まった。「なにこれ?!」クララは炎を消す為に指を鳴らしたのだが思いもよらない事態に頭の中が真っ白になった。慌ててもう一度指を鳴らすと次の瞬間全ての薔薇が花びらに変わり、草原に真っ赤な絨毯が敷かれたようになった。そしてうっとりするような濃厚な薔薇の香りが漂い草原が異空間となった。「、、なに、、これ?こんな魔法、、知らない、、」クララはもう一度指を鳴らしたが薔薇の花びらは消えなかった。どうしよう、なぜこんなことに?どうしよう、どうすればいいの?クララは驚きと焦りとパニックで何も考えられなくなった。どうして良いのか全くわからず顔が青ざめ指先が冷たくなった。魔法が暴走しコントロールも出来ず、解除も出来ない。何度も指を鳴らすがパチンという音だけが鳴り響いていた。


「レオン、、これが君のいう最小の魔法か?」セリオは眉間に皺を寄せながらクララを見つめ言った。ああ、こんな状況をみたら反逆者と疑われてしまう!最小限の魔法がこんな強烈な魔法だと誤解を与えてしまう。イフリートの強烈な力を見せつけ、いつでも王家を攻撃できるんだと言っているように思われてしまう。「ち、違います、なぜこんなことになったのか、、私自身戸惑っています。本当です!!」クララは瞳を潤ませセリオに訴えた。その様子を見ていたリアナはスッとクララの方に顔を向けそのまま歩いてきた。クララはパニックになりながらも頭を下げ目線は上げて恐る恐るリアナを見上げた。リアナ様にも疑われてしまったんだわ。もう終わりだわ、、。どうしたらいい?クララは泣きそうになりながら唇を噛みリアナを見つめた。リアナは泣きそうになっているクララの頭をポンポンと撫でるようにさわり顔を覗き込み微笑んだ。クララは思いもよらないリアナの行動に体が硬直し胸の鼓動が高鳴った。まるでリアナが「大丈夫よ」と言っているように感じ甘酸っぱい喜びを感じた。リアナはその場にそっとしゃがみ込み一面に広がった真紅の薔薇の花びらに触れた。その瞬間真紅が一気に真白に変わりパッと消えた。リアナはそれを見て「フフフ」と笑いクララを見て「良いものを見せてもらいました」と言って微笑み、セリオに「戻ります」と声をかけ城に向かって歩き出した。すぐに待機していた近衛兵達が馬を引っ張りリアナの元にゆき、リアナは馬に飛び乗り去っていった。クララは自分の魔法が引き起こした惨劇を忘れ、美しく優しいリアナに心奪われその後ろ姿をずっと見つめていた。


 

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