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それぞれの魔法


昼食にリアナ皇女は参加しなかった。四人は楽しく話をしながら昼食をとった。同じ志の仲間同士は打ち解けるのも早くまるで幼いころからの友達のように仲良くなった。食後の紅茶を飲みながらそれぞれの趣味や好きな食べ物など十代の少年少女はたわいのない話をしていた。「ところで、午後の授業はどこでやるんだろう?」カルロスがそう言った時セリオが現れた。


 「この城の裏側に森がありその一角に開けた場所がある。今からそこに移動する」そう言って庭園を横切り歩き始めた。寛いでいた四人も慌てて立ち上がりセリオについて歩き始めた。先頭にセリオ、そのすぐ後にグロリアとカルロス、そしてダフネとクララの順で歩いている。クララはこのナバスの城の全体像がいまいちわからない。おそらく十字型になっていて東西南北に塔がある。クララがいるのは南だが、皆がどの部屋にいるのかは知らない。なんとなく、、聞いたらいけないような気がして聞けない。それにおそらく部屋の場所にも意味があるのかもしれないと思った。


「レオン、遅いわよ!!」ダフネが声をかけてきた。考え事をして歩いていたので少し遅れてしまった。「すみません」クララは皆に追いつく為走りまたダフネの横に並んで歩き出した。「レオンって本当マイペースよね。」ダフネが笑いながら言った。「マイペース?」クララは自覚のないことを言われ驚いた。「ええ、マイペースだと思う。なんとなくだけど、自分の世界があるのかしら?ちょっと変わってるよね」ダフネは自分の長い髪の毛先を触りながらクララに言った。「変わってる?、、そうなんだ、、」クララは言った。あまり自分の事を考えたことがなかったのでダフネの言葉が新鮮に感じた。「ダフネありがとう!」クララはダフネに笑いかけお礼を言った。「プッ!本当変わってるわ!!でもいい意味でね」ダフネは笑いながらクララの肩を軽くポンっと叩いた。


 十五分ほど歩くと森が現れその森の中の小道を進んだ。その小道は馬一頭通れるほどの道で綺麗に整備されており歩きやすかった。ひたすらまっすぐに進むと突然森が開け広大な草原に出た。「ここで魔法を見せてもらう」セリオが言った。


 ふと草原と森の境を見ると白い馬がいる。こんな所に馬が?そう思った時リアナが馬の影から現れた。美しいリアナの姿はまるで絵画のように感じた。リアナの周りがキラキラと輝いて見える。そんな姿に見惚れていたら目があった。その瞬間心が弾んだ。クララは緊張しながらすぐに一礼をして目を逸らし高鳴る鼓動をおさえるように胸に手を当てた。リアナ様が素敵すぎて意識しちゃう。

 

 セリオはリアナの姿を確認し、四人を整列をさせた。リアナが整列しているクララ達の前に立ちセリオが号令をかけた。「リアナ様に礼!」全員リアナに一礼し顔を上げた。

 

 リアナは長い髪を一つに結びセリオの横に立った。ただ立っているだけで美しく、上品で、威厳を感じさせるオーラ、これが王族なのだとクララは改めて思った。私より二つ年下なのに、、大人っぽいし素敵、、。クララはリアナを見つめこんな人が同じ人間だなんて。私もリアナ様のように凛とした人間になりたい。クララはリアナに対し憧れを抱き始めた。


「では、それぞれの公爵家の特徴である魔法を見せてほしい。どんな魔法でも構わない、今自分ができる最大限の魔法が好ましいが、それは各自に任せる。準備ができたものから始める」セリオはそう言って四人を見つめた。四人は「はい!」と返事をし、それぞれ集中し始めた。


 クララは最近魔法のコントロールが効かず魔法を使うことを躊躇している。簡単な小さな魔法にしよう。そう思い顔をあげた。「準備ができました!」グロリアが言った。セリオはグロリアに始めるようにと伝え、グロリアから少し離れたリアナの横に立った。きっと何かあった時に守れるようにするのだと思った。


 グロリアは両手を軽く開き掌を下にし目を閉じた。「ゴゴゴッ」何か音が聞こえて来た。その音は次第に大きくなり少し地面が揺れた瞬間地下水が吹き出して来た。その高さは十メートルを超える勢いで噴き上げ、その水がそのまま龍の形に変わり大空を泳ぎ始めた。クララは初めて見る水の魔法に見惚れていた。その龍が動くとその後は虹が現れとても美しい魔法だった。グロリアは指をパチンと鳴らすとその龍は水滴に変わり雨のように大地に降り注いだ。とても美しく見事な魔法だった。

 リアナはその魔法をみて頷き、セリオはグロリアに「素晴らしい魔法だった」と言った。残りの三人もグロリアに「素晴らしかった」と称賛した。グロリアは褒められた喜びを態度に出すことはせず令嬢らしくすまし顔で「ありがと」と言ったが直ぐに三人にウィンクをし「三人も頑張って!」とエールを送った。そんなグロリアをみてカルロスは「おい、レオン。グロリアって一見冷たそうに見えるけど可愛いとこあるんだな!」と耳打ちしてきた。「ちょっと!聞こえてるわよ!」グロリアはカルロスを睨みつけ「でも、まあ,褒め言葉として受け止めておくわ」と言ってカルロスの肩をポンポンと叩き少し乱れた髪を撫で付けながらダフネの横に立った。「グロリアのそのギャップにカルロスは惚れたんじゃない」グロリアはカルロスを揶揄うようにクスクスと笑った。

 その言葉を聞いたカルロスは「レオン、女には勝てそうにないな。言葉には気をつけような!」と言ってため息をついた。クララも「女の子に勝てそうもないよ」といって同じようにため息をついた。私も女の子なんだけどな、、そんな事を思いながらも、気兼ねなく付き合える仲間に出会えたことはクララにとって大きな励みになりつつある。今までは独りぼっちだったからこそ、こうして好き勝手に自分の言いたいことを言える仲間が出来たことに大きな喜びを感じていた。


 四人の様子を見つめていたリアナは「皆さんとても仲良くなったようですね」と言って微笑んだ。四人はその言葉を聞き「はい!」と口を揃え笑顔で返事をした。セリオはその様子を見て頷いた。四つの公爵家の代表達がお互いに信頼しあえる事こそがなによりも大切だからだ。


 「それでは残り三人は準備をしなさい」セリオはクララ達に号令をかけた。

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