クララとレオン
水の公爵家、アドモ公爵家のグロリアは五歳ごろ後継者として覚醒した。水の精霊ウエディーネの祝福を受け、水魔法が使えるようになった。アドモ公爵は娘のグロリアが覚醒した事を喜び、公爵領地の民は一年間税金を納めなくて良いと宣言し、領地民もグロリアの覚醒を喜んだ。
そのグロリアは今年で十四歳になりこの春からナバス城に行くことになった。
大地の公爵家アンヘル公爵家のダフネは十歳の時、大地の精霊ノームの祝福を受け覚醒した。ダフネは大地の魔法が使えるようになった。アンヘルム公爵は娘の覚醒を喜び、全領地民に金貨を配った。大人から子供まで全員に配り家族五人いる家庭は金貨五枚、一年何もせず暮らして行けるほどの価値がある。 領地民はダフネの覚醒を喜んだ。
ダフネは今年で十四歳になりこの春からナバス城に行くことになった。
風の公爵家モリーナ公爵家のカルロスは九歳の時風の精霊シルフィードの祝福を受け風の魔法が使えるようになった。モリーナ公爵は息子の覚醒を喜び、領地を解放し、自由に商売が出来る権利を一年間続けると宣言した。そのおかげで経済活動が活性化され領地民の収入は三倍に上がりみなカルロスの覚醒を喜んだ。
カルロスは今年で十四歳になりこの春からナバス城に行くことになった。
炎の公爵家長女、クララ・タピア
母であるタピア公爵家当主のエルバが臨月の頃、屋敷が火事になりクララは炎の中で産声を上げた。エルバはその時亡くなった。そのすぐ後に父親のウーゴは新しい妻を娶り息子レオンが生まれた。レオンが三歳の頃、炎の精霊イフリートが姿を現したが、一向に魔法が使えない。しかしある日長女のクララが炎の魔法が使える事がわかりタピア家は混乱した。
なぜなら、イフリートが現れたことで祝福を受けたであろうレオンは魔法が使えず、イフリートが現れた形跡のないクララに魔法が使える。しかしその後レオンは炎の魔法が使える様になったがクララに比べると子供騙しのようなレベルだ。
けれどタピア家に魔法が使える人間が二人いることはあり得ないこと。なぜならミラネス王家の神との誓約、王家と公爵家の誓約では一公爵家に魔法が使える人間は一人と決まっているからだ。
けれどタピア公爵家はその事実をミラネス王家に秘密にした。あり得ない事が起きた時点で公爵家として存続できなくなる事を恐れた。そしてタピア一族はクララとレオンのどちらを後継者にするのか意見は割れ混乱を極めた。
けれどレオンが十四歳になり、父親のウーゴは強引にレオンを後継者として発表した。タピア公爵は全領地民に貴重な砂糖を配り、領地民はレオンの覚醒を祝った。
「クララ様、ウーゴ様がお呼びです。」
普段、ほとんどこの部屋を訪ねる人がいない中でメイドがクララを呼びにきた。
そんな時は決まって嫌なことが起きる。
実の父親であるウーゴはタピア公爵家当主だった母の婿としてタピアに入った。亡くなった母とウーゴとの仲は私にはわからないが、私を折檻する時、母の行いが悪いからお前のような娘が生まれるんだと口癖のように言っているのを聞くと、母も私もウーゴにとって憎しみの対象なのかと思ってしまう。同じ父の子でもレオンはウーゴに愛されて育っている。それを見るたびに私はウーゴにとって邪魔な存在なのだと思っていた。だから出来るだけ関わらないように、彼の目に入らないように生活をしていた。
最近愛息のレオンが次期タピア公爵家当主に決まり機嫌がよかった日々が続いていた最中の呼び出しだ。嫌な予感がする。
お父様が私を呼ぶときは必ず私が望まない事を強要する時だ。
十六歳のクララはため息を吐きながら父の執務室に入った。