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タピア家の裏切り


クララはこの事実を知っている。タピア家の歴史書を読んだからだ。タピア家の汚点。


 タピア公爵家当主はその歴史を自らの口で次期当主に伝え、王家との薔薇の契約もその時にその内容を伝える。しかしタピア家当主だったクララの母は誰にも伝えることが出来ず死んでしまった。母の義理の妹アマンダもその内容は知らない。クララはタピア家の行く末に不安を感じ火事で焼け残った歴史書を密かに手に入れていた。今はもうこの世にいないが、乳母だったカリサがクララに託した物だった。だから真の歴史を知っていたのだ。けれどそれを知っていてもクララは次期当主では無いどころか、死んだことになっているのでどうしようも出来ない。ミラネス王家との薔薇の誓いについて歴史書には記載が無かった。王家との誓いが随行できないかもしれない。不安になる。タピア家がまたミラネス王家を裏切るのでは無いかと心のどこかで考えてしまう。父のウーゴ、母が亡くなっても涙一つこぼさなかったと聞いた。あ、こんなこと考えてはいけない。クララは頭を左右に振り小さくため息を吐いた。


 タピアの真紅、炎に薔薇、、五百年前はタピアの色はオレンジレッド、紋章は炎だけだった。


 あの真紅はフランシスカの血の色。フランシスカは揺るぐことのない忠誠を誓った当主だとクララは思っている。罪人として処理されているがフランシスカは絶対に王家を,皇帝を裏切らなかった。セリオは皆に話さなかったが、フランシスカはカンタンの皇帝、憎き相手に身を捧げ側室になりけれどその精神は決して屈せず皇帝ルカスとの約束を守る為カンタン帝国をたった一人で内部から滅亡させた人。その人の血を忘れてはならない。



「レオン、昼食だよ?」カルロスが声をかけた。「あ,ごめん、考え事してて、、」クララは慌てて立ち上がり出口の方を見た。リアナ皇女がクララを見つめ微笑んで出て行った。クララはそのリアナの微笑みをどう受け取っていいのかわからない。イフリートの主人になってしまった今、私は一歩間違えたら反逆者になってしまう。リアナ皇女はどう思っているのだろう。先ほどの話を聞いて背筋が寒くなる思いをしている私の後ろ姿を見て、この子にそんな大それたことが出来るわけないと思ってくれたら良いけど、、、。


 クララはカルロスと共に昼食が用意されている中庭に向かった。カルロスのメイドとカルメラが先を歩き、その後をついていった。城の中心にある大きな階段を下まで下がりそのままエントランスホールを通り正面の大きな扉ではなく、小さな通用口から表に出た。そこから白い大理石の階段を五段ほど降りて馬車が止まる停車場を横目に城を背後にして左側の庭園に入った。


 その庭園は薔薇が咲き乱れており先日振った雨のせいなのか一帯に優しい薔薇の香りが漂いクララはさっきまでの重い気持ちが和らいでゆくのを感じた。そのまま進んでゆくとテラスがありそこにテーブルと椅子が設置されておりグロリアとダフネがもう座っていた。カルロスが二人に手を振り歩き出した時突風が吹き、クララのリボンが飛ばされた。「あ、リボンが、、カルロス先に行っていて」クララは飛んでいったリボンを追いかけた。そのリボンは大きく空に舞い上がり、それからヒラヒラと螺旋状に周りながら薔薇の枝に引っかかった。


 クララはリボンを取ろうとその薔薇の所に行った。リボンが引っかかっているその薔薇は真っ白な花弁の中に真紅の花心がある変わった薔薇でクララはその薔薇を見つめた。不思議な美しさがある。クララは花を傷つけないように枝に引っかかったリボンに手を伸ばした。「あ!!」手を伸ばした先に棘があり指先に刺さった。ああ、指を切ってしまった。ポタポタと指先から血が流れ先ほどの薔薇の上に落ちた。その血の色は薔薇の花心と同じ色だった。クララはもう片方の手でリボンを掴み、ポケットからハンカチを取り出し指先に巻いた。「血をつけてごめんなさい」クララは薔薇に謝りその薔薇にキスをして皆の所に戻っていった。

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