お互いを知る
「ごめんなさい」クララはワイングラスをテーブルに置き謝った。自分が女の時と男になった今とは作法が違うのだと気がついた。女性をサポートするのが紳士の務め。
ここはカルロスを見て学ぼう。早速カルロスはリアナ皇女に話しかけた。
「リアナ様、ワインはお好きでしょうか?」
クララは驚いた。まさかリアナ様に話しかけるとは!カルロスは緊張しないの?!自然に話しかけるカルロスが大人に見えた。
「ええ、ワインは好きですわ。特にこの真紅のワインが」そう言ってクララを見て微笑んだ。クララはその微笑みを見てどう反応して良いのかわからなかった。タピアを比喩しているのか、それとも牽制をしているのか。思わず目を逸らし先ほどのこぼれ落ちそうになっていた花瓶の薔薇を見つめた。
?!
うそ、全部咲いてる。さっき蕾あったよね?!クララが薔薇を見つめていると目の前のダフネもその薔薇を見つめクララの顔をみた。
「あ、気がつかれました?!」クララはダフネに言った。「ええ、これ先ほど蕾でしたよね?」ダフネも言った。「あ、私はレオンと申します、レオンとお呼び下さい」クララは自己紹介をした。「ダフネよ、ダフネと呼んで!ところでこの薔薇不思議だよね」ダフネはペールイエローのドレスーに薄いベージュのマントを羽織っている。そのドレスを見て羨ましくなった。かわいい。
「本当に一瞬で咲いてしまいましたね、室内が暖かかったのかな?」クララは言った。
「どうかしましたか?」リアナが話しかけてきた。「はい、リアナ様、先ほどのこの花瓶の薔薇は咲いているものと蕾があったのですが五分も経たないうちに全部咲いているので驚いてしまって、、。」ダフネが言った。「まあそうですか!なるほど。、、レオン、一輪取って下さらない?」リアナがクララに言った。クララはリアナに声をかけられて一瞬緊張が走ったが、ワインのお陰もありすぐに自然と対応が出来た。
「はい、リアナ様」クララは返事をし、花瓶の薔薇を見つめた。その花瓶には二十本ほど色とりどりの薔薇が生けてある。クララはその中で白にうっすらとグリーンが入った薔薇を手に取った。なんとなく、この薔薇が光って見えたからだ。
「どうぞ」クララは立ち上がりリアナのところに歩いて行き手に取った薔薇を差し出した。リアナはそっとその薔薇を親指と人差し指,中指で茎のところを持ち「ありがとう」と言ってクララを見た。うわぁーー美しい!!リアナ様と薔薇の組み合わせは絵画のように美しいわ。クララは美しいリアナを間近で見て妙な緊張感を持ちながら頭を下げ席に戻ろうとした。
「沢山ある薔薇からなぜこれを選んだのですか?」リアナは微笑みを浮かべ覗き込む様に首を傾け言った。うわー、素敵すぎてドキドキする。クララは頭を上げ少し緊張しながら先ほどの事を正直に話すか躊躇した。けれどこれ以上嘘はつきたくない。「この薔薇が、、光って見えたからです」正直にリアナに言った。リアナは驚いた顔をしてクララに言った。「やっぱりレオンは薔薇に愛されているのですね。この薔薇の花言葉をご存知ですか?」リアナは優しくクララに微笑みかけ言った。
やっぱり?どんな意味なんだろう、、「いいえ、、、」クララはやっぱりと言う言葉が気になったが、美しいリアナに薔薇に愛されているといわれ喜びで頬がほんのり赤くなった。そしてリアナの美しい微笑みをみて胸がときめいた。何このときめきは?女の子同士なのに、、。クララは恥ずかしくなり目を逸らし俯いた。
恥ずかしそうに下を向く様子を見ながらリアナは言った。
「この薔薇の花言葉は絶対なる忠誠、そして、あなたの色に染めてください、主従関係ならば絶対なる忠誠、恋人同志ならばあなたの色に染めて下さい、、うふふ、レオンはどちらかしら」リアナは無邪気な笑顔でクララに聞いてきた。
「も、もちろん、忠誠を誓う方でございます!!ここ恋人など滅相もございません!!」クララ顔を上げ慌てて言った。顔が真っ赤になりすぐに両手で顔を隠し頭を下げた。下を向きながらクララはリアナを意識してしまい心臓の音が聴こえるのではないかと思うほど鼓動が激しくなった。火照る顔を隠しながら私こう見えて女です!!心の中で叫んだ。
その慌てぶりがおかしかったようで全員がクララを見て大爆笑をしている。リアナは「フフ」と笑いその白い薔薇を近くのメイドに渡し「部屋に飾っておいて」と言った。
その言葉を聞いたクララはただ薔薇を選んだだけなのに飾って頂けることに喜びを感じた。気持ちを落ち着け顔を上げリアナに深く頭を下げ席に戻った。
席に戻るとグロリアがクララに話しかけた。「私はグロリアよ。グロリアって呼んでね」グロリアはシルバーのドレスにシルバーのマントを羽織っていた。とても綺麗な光沢がありグロリアのイメージにあっている。「あ、レオンです。レオンと呼んでください」クララも自己紹介した。
「今度わたしにも薔薇を選んでほしいわ、恋人に捧げたいから」グロリアはそんなことを言った。「はい、お役に立てれば!」クララはそう言ってグロリアに微笑んだ。
その後、和やかな雰囲気で食事会は続いた。