セリオ・アルカイン
「エリアス様、そろそろ地下に行きましょう」
セリオが五人に声をかけた。クララはその声に顔を上た。
(セリオ様!!)
クララはセリオの声に我に返りいても立ってもいられなくなった。
(会いたかったセリオ様がいる!)
湧き上がる喜びに体が動く。
「セリオ様に挨拶をして来ます」
クララは少し離れた場所から優しい瞳で見つめるセリオに頭を下げ歩き出した。セリオに対する思いが溢れる。いつもそばにいてくれたセリオはクララにとって実の親よりも大切な存在だ。セリオに再び会えた喜びが爆発し、セリオに向かって走り出した。
「セリオ様!!セリオ様!!」
クララはセリオに飛びつきセリオは優しくクララを抱きとめた。
「セリオ様、会いたかったです!セリオ様の魔法石が心の支えでした。セリオ様にまたお会いできて、本当に、本当に嬉しいです!!」
エリアスに忘れられて辛く悲しい時、セリオの魔法石が心の支えとなり今日を迎えられた。
「クララ、一人でよく……頑張ったな」
セリオはそう言ってクララを優しく抱きしめた。
「セリオ様がいて下さったから……」
クララは感極まり涙をポロポロとこぼした。夢のような現実。エリアスの記憶が戻り、セリオがクララの前に戻ってきてくれた。
「クララ、そんなに泣くと私がクララを泣かせたと言ってエリアス様が飛んでくる」
そう言ってクララにハンカチを渡した。クララはセリオからハンカチを受け取り涙を拭いながらお礼を言った。
「セリオ様の魔法のおかげで、エリアス様に思い出してもらえました。本当に……」
クララがセリオにお礼を言いかけた時セリオが言った。
「クララ、お前が私を助けてくれた。エリアス様がダーインスレイフを使った瞬間ナバス帝国を覆う神力が強くなり私は異変に気がついた。すぐに神殿の中で時の精霊を召喚した。時を戻す為だ。しかし、神の番人セルゲイが私をエクスカリバーで刺し、そのまま私の魔法石を奪った。私は意識を失い死線を彷徨っていたのだ」
セリオはそう言いながら魔法石を取り出した。
「セルゲイはそれを庭園に捨て、クララが拾った。私の時の精霊、エスパディエンはエクスカリバーによって魔法石になり、ダフネが偶然にそれを手に入れ、クララに渡しこうしてまた私の元の帰ってきてくれた」
セリオは泣き続けるクララの頭を撫でた。そこにダフネも泣きながらセリオに抱きつきカルロスもグロリアも加わった。エリアスは、
「私も行ったほうが良いか?」
と笑いながら聞く。
「遠慮いたします」
とセリオが答え、クララ達はそのやりとりを聞きクスクスと笑い出した。
セリオ達を見つめながらエリアスはわかった事があった。セリオが時間を巻き戻す瞬間、クララは一度死んだ。その瞬間クララの精霊の全てがエリアスを主人とした。時が戻りまた精霊達は再びクララを主人としたが、その一瞬でクララの精霊がエリアスに真実を教えてくれた。
イフリートはクララが生まれた瞬間にクララを主人として選んだ。なぜならクララが精霊王の封印を解く鍵になるとわかり、イフリートは主人となるクララを守っていた。そしてクララの母親はウーゴに殺されていた。
薔薇の精霊ロサブランカ、クララとエリアスが主人のロサブランカはフランシスカの事を愛していた。あの美しい心を持ったフランシスカが辛い思いをし、本音を隠しどんな想いを抱きルカスを愛し続けたのか、ロサブランカを通し改めて知った。そしてエリアスがクララを忘れてから二年間のクララの苦悩。庭園でエリアスに愛を誓ったクララの心、クララは自分が死ぬ事を予感していたこと、フランシスカは二十二で死に、クララもそれ以上生きることはこの運命ならば無理だろうと思っていた。実際セリオがいなければその通りになったのも事実だ。
クララはいつも私のことを考えて,変わらず愛してくれていた。私を救うことだけを考えて心臓にナイフを刺されても倒れないほど私を愛してくれていた。黒龍との戦いでクララを助ける為にダーインスレイフを使おうとした時クララは死を選んだ。私に忘れられるくらいなら死にたいと、そう言ったにも関わらず私の思いだけでダーインスレイフを使った。そのせいでクララが死ぬほど辛い思いをすると考えずに。 私はこれほどまでにも彼女に愛されていたのだと知った。
命ある限りクララを大切にし、おしみない愛を彼女に注ぐ。
エリアスは心に誓った。
「そろそろ、地下に、精霊王の心の中にいこうか?」
エリアスは全員に声をかけた。