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時間がない

 クララはエアリアルを手に入れた。

 カルロスは目の前にある空に落ちる池が突然変化し始めたのを見て立ち上がった。池が虹色に輝き出しその不思議な美しさに見惚れているとその虹の中からクララが飛び出してきた。濡れている様子はなく水面の上に浮かんでいる。クララが精霊を手に入れたのだとわかった。

「カルロスただいま!待った?」

 クララは安堵の表情を浮かべ見つめるカルロスに聞いた。

「いいや待ってない。ま、三時間くらい?」

 カルロスは頭をかきながら言った。

 (うふふ、ずっとここで待っててくれたのね。)

「ありがとう、カルロス」

 クララはカルロスに礼を言うと、その背後に隠れるようにいたモリアーナ一家の姿に泣きそうになった。皆クララを心配し見にきていたのだ。カルロスの母カタリーナはクララにワイングラスを見せ『お帰り』と笑った。


 クララは風の公爵家モリアーナにエアリアルの祝福を与えた。モリアーナ一家は簡単な風の魔法が使えるようになった。皆、大喜びで踊り出した。いい具合に酔っている。彼らはクララを待っている間にワインんを嗜んでいたのだ。本当に明るく自由な一家だ。


「モリアーナの皆さんが風の精霊をずっと大切にしてくれたから精霊が皆さんに祝福を与えました。どうかこの地に精霊殿を作ってください。精霊は神とは違います。私たちに寄り添ってくれる精霊に感謝を捧げられるように、お願いします。」

 クララは言った。

「わかった。すぐに作るぞ!」

 カルロスは祝福により魔力が上がった。カルロスはクララが何かに気が付き動き始めているように感じている。クララが言うならば間違い無いだろう。

 ただ、なぜだかクララが生き急いでいるように感じ一抹の不安も感じた。


「カルロス、ありがとう、私はダフネのところに行くわ。」

 カルロスは頷いた。

 (グロリアとダフネに連絡し、クララを見守ろう)

「じゃ、クララ、今夜は飲むぞ」

 その言葉を聞いた一家はクララを座らせ再びどんちゃん騒ぎが始まった。

 クララはまた飲み、泣き,笑い、モリアーナの優しさと酒に溺れた。


 翌朝、二日酔いを抱えクララはモリアーナ公爵家を旅立った。カタリーナはクララに言った。「泣きたい時ここにおいで」そう言ってクララを強く抱きしめた。クララも滲む涙をそのままにカタリーナを抱きしめ、

「ありがとうございます。また来ます」

 と言って別れを惜しんだ。


 *


「炎と薔薇といえばタピア家。タピア家はミラネス王家を攻撃しようとしているのでしょうか?世界を手に入れようと?」

 聖女クルスが連れてきた神官が言った。

「タピア家はミラネス王家に忠誠を誓っている公爵家、その公爵家が再び転覆を図るとは考えられない、何かの間違いだ」

 エリアスは言った。

 (クララは私に愛を誓った。そんな人が私を陥れようとするとは考えられない)

 聖女は黙ったまま神の像を見つめていた。


 *


 クララには時間がなかった。


 フランシスカ・タピア。私の前世。フランシスカは二十二で死んだ。私ももうすぐ二十二歳。きっと私に二十三歳の誕生日はやってこない。エリアス様に愛を捧げられたことだけで個人の思いは充分満たされた。あと、残りの時間はエリアス様を救う為に使う。この呪われたループを終わらせ、真に自由な世界を取り戻す。それが成就したらきっとそこから運命の軸が変わる。もう二度とエリアス様と同じ時に生まれることは無いだろう。でもそれでいい。もう覚悟はきめている。だからお願い土の精霊、時の精霊、私に力を貸してください。


 クララはアンベル公爵領に向かう馬車の中で祈っていた。


 昼過ぎにアンベル公爵領に入るとすぐに馬に乗ったダフネが迎えにきてくれた。

「ダフネ!!急に来てごめんね!」

 クララは馬車の窓からダフネに言った。ダフネは馬を操りながら、

「クララ!待ってたのよ!会えて嬉しいわ!!とにかくついてきて!」

 馬車はダフネについて走り出した。


 広い草原を抜けると大きな邸宅が見えてきた。石と木で建てられたその邸宅は草原の中にあり、独特の存在感があった。

「クララようこそアンベルに!」

 ダフネは馬車から降りてきたクララと抱き合い再会を喜んだ。

「ダフネ、素敵なところに邸宅があるのね!」

 クララは草原に佇むアンベル公爵家と、その眼下に広がる街並みを見ながら言った。

「あの街にも邸宅があるんだけど普段はこっちに住んでいるの。自然の中にいると気持ちが安らぐでしょう?」

 ダフネはクララの手を握り邸宅に入った。石と木で作った邸宅は有機的な温かみがありクララはその木々に精霊の恩恵を感じた。

「アンベル公爵家は精霊ノームに日々感謝しているのね。この家からその気持ちを感じるわ」

 クララは壁の木に手を当てながらダフネに言った。

「我公爵家はいつも自然と共にある公爵家なの。今晩も父と母が狩で入手した動物の命をいただくのよ。日々生きられるのは彼らの命のおかげ、感謝しないわけにいかないわ」

 ダフネはそう言ってクララを部屋に案内した。その部屋は木の温もりを感じる部屋で大きな窓があり草原の風景が目前に広がる美しい部屋だ。

「すごく綺麗、自然っていいね」

 クララは美しい緑を見つめながらダフネに言った。

「クララ、で、何の精霊探しているの?私にできることある?」

 ダフネが言った。

 

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