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空の精霊と神の像

「うーん」

 目が覚めたクララは自分がどこにいるのかわからなかった。ガバッと起き上がり自分がモリアーナ家にいる事を思い出した。そして昨夜ワインを沢山飲んだ事も思い出したが、いつこの部屋に戻ったのか記憶がない。

 (たしかワインを飲んで、沢山おかわりして)

 クララは天井を見上げ考えた。しかしワインをおかわりした事までは覚えているが、それ以降記憶がない。しかし、二日酔いは無く清々しい気分だ。

 (あ、そういえば今日カルロスが空に落ちる湖に連れていってくれるって言ったわ!)

 クララは飛び起き、身支度を整えているとメイドが朝食を持ってきてくれた。


「クララおはよう!眠れた?」

 カルロスは朝食を終えたクララを見て優しく微笑んだ。

「おはようカルロス。あのね、昨日のこと全然覚えていないんだけど、私、すごくすっきりして気分が良いの。本当にありがとう」

 クララもカルロスに微笑みながら言った。カルロスは照れ臭そうに髪をかき上げながらクララに言った

「そっか、よかったな」

 クララは私に言葉を聞き目頭が熱くなった。涙で滲みそうになった顔を見られたくなくクララは俯いた。

 (きっとカルロスは何かを察してくれたのだわ。昨夜のことは覚えていないけど、カルロスあなたが私を自由にしてくれたのね。ありがとう)

 クララはもう一度心の中でお礼を言った。


「よし、クララ、空に落ちる湖行くか?」

 食後の紅茶を飲んでいる時にカルロスが言った。

「ええ,行きたい」

 クララはティーカップをテーブルに置き言った。今すぐにでも行きたい、そんな表情を浮かべた。

「んっじゃ行くか!」

 クララの気持ちを察したカルロスは立ち上がり、二人は空に落ちる湖に向かった。


 モリアーナ公爵邸の裏は整備された美しい森がある。木漏れ日が差し込む森をトコトコ二人で歩いているとカルロスが聞いてきた。

「クララ、何を抱えているんだ?」

 クララは不意打ちのようなカルロスの言葉に一瞬胸が詰まった。しかしすぐに答えた。

「抱えてはいないの、自分の思うように、自分の納得する人生を送るためにやるべき事をやってるだけなのよ」

 カルロスは昨日のこと全て覚えている。

 (クララは神と戦うと言った。どう言う意味だ?)

「クララ、俺、なんだかわかんないけど、お前には幸せになって欲しいと思っているんだ。その為にお前やっているんだよな?」

 カルロスは真剣な面持ちでクララを見つめ聞いた。

 (こんなカルロスを見たことがない。本当に心配し言ってくれているのね)

 クララもその気持ちに応えるよう真っ直ぐにカルロスを見て言った。

「カルロス、ありがとう、間違いなくその為だよ。たとえダメだったとしても納得いくなんて言えない。それを成し遂げることができないなんて許されないから絶対に成し遂げる。きっといつか、私が成し遂げた時カルロスにもわかるよ」

 クララがカルロスを見つめ言った。

 (その時私はいないかもしれない、でも皆が幸せでいられるなら悲しくないし怖くない)

 カルロスは黙った。今クララの言った言葉の意味をわかる日が来る。それを信じて待つことしか出来ないのかと両手を握った。しかし今のカルロスができることはクララを信じ、クララが探している精霊を見つけることだ。できることがそれだけでもクララを支えられるなら。

「わかったよ。クララ俺、クララが成し遂げると信じているよ」

 カルロスはそう言ってクララに頷いた。

 (信じてくれてありがとう)

 クララもカルロスに頷いた。二人は顔を見合わせ笑い、森の奥に進んだ。


 

 森を抜けると目の前に湖が見えた。その湖は水面が揺れることなく鏡面にように空が映っている。まるで湖に空があるように見える。

 ふわっと優しい風がクララの髪を揺らす。その風は湖にも吹き込んだが水面は揺れ動くことはなかった。クララは直感でここだとわかった。

「カルロス、私ここに用事がある、ちょっと行ってくる。先帰ってていいよ。数日かかるかもしれないから」

 そう言ってクララはカルロスの返事も聞かず湖の中の空に飛び込んでいった。

「全くあいつ、、」

 カルロスはため息を吐きその場に寝転んだ。

「仕方ない。ここで待つか」

 カルロスはここでいつ戻るかわからないクララを待つことにした。


 クララは湖に飛び込んだ。このまま下に落ちてゆくと思っていたがいつのまにか空に昇っていることに気がついた。

 (このまま昇り続けたらどこにいくのかな?)

 そう思っていたら見覚えのある場所が見えた。水龍のいたあの場所。クララがエリアスの為にミスティルテインを手に入れた音のない世界の思い出の場所だ。


「私、クララともうします!空、大気の精霊様はいらっしゃいますか?」

 クララは前回のリヴァイアサン同様声をかけた。音のない世界は夜明け前の、これから光に溢れる世界に変わると希望を感じる色をしている。暗闇から抜け出しつつあるこの景色は精霊王の力が戻っている証拠。

 (この空間が光に溢れた時何かが変わるのかもしれない。)

 クララは明るくなりつつある音のない世界を見つめエリアスを思い出した。

 (必ずエリアス様!必ずあなたを解放します)


「お前がクララか」

 どこからか声が聞こえる。だが姿は見えない。

 クララは瞳を閉じ耳を澄まし返事をした。

「はい。私がクララです」

「我らが王を助けると言ったがそんな力、お前にあるのか?」

 その言葉を聞いたクララは言った。

「無いのなら力をつけるまで、難しいことではありません」

 クララの揺るぎないその言葉は声の主の心を動かした。

「わかった、私はエアリアル、クララお前を試してみよう」

 声の主はクララの目の前に姿を現した。

 エアリアルは女神のような容姿をしており大きな槍を持っていた。エアリアルはその槍を構えクララを攻撃してきた。クララは咄嗟に避けたが、戦いにきたわけでは無い。クララはギリギリのところを避け続けたが埒が開かない。

「エアリアル様!私は戦いに来たわけではありません。どうかエアリアル様のお力をお借りし、精霊王を助けたいのです!。どうかお願いします」

 クララはエアリアルに言った。エアリアルは動きを止めたクララの喉元に槍突きつけ言った。

「このままお前を殺すこともできる」

「……もしそうしたならばあなた様は永遠にこの寂しい世界に居続けることになるのです。それで良いのなら私を殺ししてください、などと言えません!私は絶対に成し遂げなきゃいけないのです!!お願い!!」

 エアリアルはクララのその言葉を聞き槍を手離した。

「面白い!クララ,その約束が守れない時、この槍でお前を殺す。それでも良いのか?」

 エアリアルはクララを見つめ言った。

「必ず成し遂げると誓います」

 クララがエアリアルに誓った瞬間、空が輝き一気に音のない世界の夜が明けた。


 *



 エリアスは翌日も聖女と神殿で神についての話をしていた。しかし突然ガラスの割れるような鋭い音が地下から聞こえ驚き立ち上がった。

 バシッ!!

 耳をつんざくような音がし神殿に設置してある神の像に突然ヒビが入った。驚いた聖女は神の像の前に行き震えながらその像を見上げた。

 その神の像は両目を布で隠してあり、両手は胸の前で組まれている。これがこの国で信仰している神の姿だ。

 その神の像の目が布と共に崩れ落ちた。

 聖女は震える手でその布を握り苦しげな表情を浮かべ言った。

「炎が見えます。この炎は神を攻撃する炎。そして薔薇。ああ、神を守らないと世界の均衡が崩れ崩壊します」

 エリアスは布を握りしめる聖女を見つめた。不安よりも喜びのような感情が湧き上がる。

 (一体何が起きたのだ?私は今何を感じているんだ?……炎と薔薇……タピア公爵家)

 金色の短い髪に青い瞳。エリアスはクララ・タピアの姿を思い出した。

炎と薔薇を読んでくださる読者様へ。


ハイペースのアップにお付き合いくださりありがとうございます。

数ヶ月分の更新を本日一日でこなしました。(書き溜めしたものを手直ししアップしています)

とにかくこの物語を完結させ、その一心です。


誤字脱字チェックありがとうございます!お任せしてしまいすみません。

私の拙い文章は皆様に支えられ成り立っております。


大きな感謝を込めて。


ねここ


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