教室
「・・・・・・ゃん、・・・ちゃん?・・・・・・・・・」
「あっ、(自分のことか)、なぁに?」
「もうとっくに帰りのホームルーム終わってるよ。」
気が付いてるよ、りこ。
「だねぇ。りこは帰ってなかったの?」
「うちは呼び出しくらってたからね。帰りたくても帰れないってやつ。もしかしてそっちも呼び出しくらってた?」
そんなヘマしないから私達。
「んまぁ、ちょっとね。」
「そうなんだぁー。おそろいだね♪」
やめてくれ。やめてくれ。
「あはっ、そーかも。」
苛立ちはとは正反対の顔で悪戯っぽく笑っておいた。
「じゃあねん、ばいばぁい。」
「気をつけてねー。」
静寂が再び私達を取り巻く。
レイラ、お家に帰りたい?なんて思いっきり帰宅拒否を示しながら問うものだから、可愛くって仕方がない。笑いをかみ締めまだ此処にいたいよと言うと、なんで笑いながら言うのーと口を尖らせながらつんとする。
「おいで、優子。」
両手を差し出すとじゃれつく子犬のように懐へ飛び込んでくる。おまけに胸に顔を擦りつけて来る始末。頭を撫でながらほんとに子犬だなぁと心中で呟くと、しっかり優子に伝わっていた。
「わんこじゃないよぉ。」
ぷうっと頬を膨らませそれだけ言うと、再び顔を埋めた。
どれくらい抱いていただろう。太陽はすっかり沈み夜陰が忍び寄ってくる。優子が顔を上げ、柔らかなものを合わせる。くちゃり。舌は絡み合い互いに離れようとはしない。さらに深く。このままどろどろになって溶け合ってしまえばいいのに。ちゅっと唇を離すと銀糸が二人を繋いだ。
「「帰ろう。私達の住処へ。」」
しっかり指と指を組んで正門から堂々と学校を去った。月が大きかった。