4話 森の奥に潜む謎の巨大生物とかを追え
「ああ、やっぱり貴女でしたか。こんな時間に失礼します」
ドアを開けると、先刻別れたばかりのアリアさん達が立っていた。
何の用だろう?………って、まあ予想は付くけど。
「君なら話は早いな、森の案内を頼みたい。どうも目的の場所は君が狩場にしている辺りらしいんだ」
(うん、知ってた)
村の人に目的の場所はある女狩人が狩場にしている所らしい。そんな話を聞いてきたそうだ。
森に出入りしている狩人は多く無く。まあ、私の所に来るのは必然というか。そう言う話になるんじゃないかとは思ってた。
ジンさんが所々が傷んだ昔書かれたという地図を見せてくれる。
ん……ちょっと違う……川の位置なんかが変わってるけど村周辺みたいだね。これだけ違うって事はかなり昔って事か。
「150年程前の物だそうだ。地形は多分変わっているが、おおよその場所は分かると思う」
「そうですね………この辺り、岩場になってるんです。いくつか狭い洞窟があって数日掛けて狩りをする時や悪天候時の避難なんかに使われたりしてます」
「狭い洞窟ですか……そういうダンジョンもありますから可能性はありますが……」
地図の目印、位置的に森の中手前、下が岩場になってる場所だと思う。その先は崖があって洞窟がいくつかある。
泊まり掛けで数日狩りをする時に便利で、何度か使った事があった。
でも普通の洞窟に見えたけどな。
「ダンジョンと言っても色々あるんだ。自然に発生するタイプは普通の洞窟から変化する場合も多い。冒険者になれば講習会とかで教えて貰える事だけどな」
(冒険者かー。異世界物じゃ定番だけど、興味はあるよね)
そりゃRPGとか好きだったし。でもリアルで命を掛けてってのは考えちゃうよ。勿論狩人も危険はあるけど……大物にさえ手を出さなければ、私でもなんとかなってるし。
(ゲームと違って死に戻り出来る訳じゃないからねー。命を大事に、だけどさー)
夢と浪漫。誰も見た事の無い景色。神秘と謎が君を待っている。謳い文句は様々だけど、リアルという高難易度に疲れた心は、そんな言葉にワクワクしたものだ。
「どうかしましたか?」
「いえ、その辺りなら案内出来ます。出発は明日ですか?」
「そうですね。村にはダンジョンの事は伝わっていない様ですし、都合が良ければお願いします」
あとは簡単に行程なんかの確認をしてアリアさん達は宿に戻っていった。
食材などの在庫はあるけど、野営になるし色々確認をしておかないといけないね。
──と、その前にご飯だった。
《空間収納》に入れておいたから熱々だけど遅くなっちゃったな。
翌朝、 私達はダンジョン跡向けて出発した。
目的地は森の中心部には行かないが、外縁の奥。普通に歩いて翌日の昼頃には辿り着けるとは思う。行った事はあるけど、普段の狩りで行く事はあまりない場所だ。
「それじゃ調査の為に集まったってチーム事ですか?」
「まあ、そうなるな」
道中は特に問題は起こらず、私は三人の話を聞く事が出来た。
銀ランクのPTなら色々冒険してるのかと思ったが、今回の依頼の為にチームを組んだという感じらしい。
ジンさんとシュルツさんは普段は単独、大物の討伐依頼ではチームを組むスタイル。アリアさんは普段は教会関係……というか冒険者よりはそっちがメインで今回は回復役として。三人共にギルドに要請された特別チームみたいな感じらしい。
「わざわざ調査チームを集めるものなんですか?」
「こういう依頼はそれなりに実積と信頼は必要ですが、独占する為に虚偽の報告をする場合もありますから……」
「あー、身内で隠しちゃう可能性はあるって事か……」
「以前、そういうケースがあったらしくてな」
ダンジョンは資源の宝庫だ。難易度やドロップ品はピンキリだけど、魔物を狩っても沸いてくる。もし希少価値のある資源が産出するダンジョンが手付かずで発見されたら?確かに独占しようとする者もいるかもしれないな。
善良な者でも魔が差す事はある。普段は単独ならその可能性は減るって所だろうか?
「今日はこの辺りで休みましょう。近くに川もあります」
そろそろ夕暮れといった頃、少し開けた場所にたどりついた。この先はあまり良い場所が無いので、森の奥に入る時はここで休むようにしている。《生活魔法》で水は出せるけど水場もある方が便利だし。
道中、冒険者の話なんかを聞きながら大分森の奥までやって来た。獲物になりそうな動物や魔物は殆ど見掛けて居ない。
やはり「何か」が起こっているんだろうか?森を糧に生きる狩人としては獲物が居ないのは問題だけど………ダンジョンと関係あったりするのかね。
「荷物が少ないと思ったら《収納》持ちか」
野営の準備に《空間収納》から個人用のテントを出すとジンさんが覗き込んでくる。
《収納》スキルは珍しくはあるけど、それなりに持っている人はいる。容量なんかは色々みたいだけど。私の《空間収納》はどうやら規格外らしいので普段は《収納》スキルという事にしてる。使えないのは不便だからね。
「ええ。それ程大きくはないんですけど獲物を運ぶのに助かってます。やっぱり珍しいんですかね?」
「まあ珍しくはあるな。容量にもよるが《収納》持ちは重宝される」
冒険者なら今日のように野宿になる事も多い。また戦闘などで荷物を無くす事だってある。だが《収納》に入れておけばその心配はなくなるのだから、そりゃ重宝されるだろう。
「容量が大きければ商人や……国にも目を付けられる。商品の輸送や補給に便利だからな。まあ就職先としては真っ当な所なら良いんだが……な」
容量の大きい《収納》持ちが居れば馬車も少なくてすむ為、各地を回る商人に雇われる者は多い。冒険者の依頼でも運送とかあるそうだ。
輸送も本人だけで保管所要らず。ゲームでは当たり前みたいな機能だけど現実では破格のスキルだよね。
でも悪用すれば密輸や窃盗なんかにも使われかねない。ジンさんが言うのはそう言う事だろう。
便利だとは思っていたけど、改めて超大容量で時間停止機能まである《空間収納》、やっぱりチートすぎだと思った。バレないように気を付けないといけないね。犯罪なんかに巻き込まれたくはない。
夕飯は焚き火で簡単な料理を作る。
やっぱり保存食だけじゃ味気無いしさー。温かいご飯は必要だよ。
(またお肉ばっかりだし……)
お肉を取り出す私にユキトが文句を言ってくるが、とりあえず無視。
《空間収納》には調理済みのストックもあるけど、収納から温かい物が出てきたらまずいので。
メニューはブロック状にカットした鹿肉をニンニクとオリーブ油で炒めた物と、豚汁ならぬ鶏汁だ。
鹿肉は事前に麦酒に漬け込んで臭みを取り、なんか適当なハーブを投入。大雑把だが家では定番の料理なので味はそれなりに自信はある。
ユキトが煩いので、鶏汁は人参とゴボウに大根の根菜トリオに玉葱も。これだけ入ってれば文句無いでしょ。
「お、わりいな」
「私達までありがとうございます」
三人にもお裾分け。ニカっと笑顔のジンさんに、ぺこりと頭を下げるアリアさん。シュルツさんは無言だけど少し笑みが浮かんでいるように見えた。
しばらくご飯を食べながらまったりした時間。陽も落ちて真っ暗な森の中を照す焚き火って、なんか良いよね。
素人料理だけど、幸いご飯も三人の口に合った様で一安心。
「天気も悪くないですし、予定通り明日の昼には目的の場所に着けそうです」
「良かったです。ユエさんもお仕事あるでしょうし、出来れば早目に調査を済ませてしまいたいですから……」
「私も森の奥側の様子を見たいと思っていたので大丈夫ですけど……何も無ければ良いんですが」
今の所、獲物になりそうな動物や魔物が少ないだけで特に変わった様子は無い───が、この森は豊かで一年を通して獲物がまったく居なくなる事はほぼ無いのだ。それには理由がある筈だった。
狩人以外が森に入る事は少なく、その狩人も私を入れても数人。森辺でも十分に獲物を得られるので奥側まで踏み込む事はない為、あまり知られてはいない。何かが潜んでいる可能性は──ある。
(むしろ大体そういうお約束な気がするなー)
いや、プロローグ的にはおっきなモフモフで神話に出てくる魔物とかがいてご飯とかに釣られて仲間になったり、レア種族とかお姫様とかな美少女が襲われてたりとかするんだけど、そんな面倒事はいらないってば。
「ダンジョンが発生しても直ぐに魔物が溢れてくる事は無い筈だ。例の洞窟を見たのはどのくらい前だ?」
簡単に今の森の様子を説明すると、少し難しそうな顔をしてジンさんが聞いてくる。
「雪解けの頃なので三月程前だと思います。隈無く調べた訳じゃないですが、その時は異常はなかったですね」
「その後発生したとしても、魔物が溢れてくるには早すぎる気はしますね。例外はあるでしょうが……そもそもダンジョンが発生してるとは限りませんし別の理由の可能性の方が高いかと思います」
「今の所、特に変わった痕跡は無いと思うんですけど………やっぱり何かあるとしたら奥地の方ですかね」
「まずはダンジョンの確認だろう。異常が無ければ、また考えるさ。とりあえず今日は休もうぜ」
手掛りが無い以上、あれこれ議論しても推測でしかない訳で。
雑談を終え、この日の夜は休む事に。目的の洞窟はまだ先だ、体力は温存しておかなきゃね。
お読み下さりありがとうございます。更新遅くてすみません。




