ピオネの組織ともう一つの組織
「アイは玄海領に行くのね?」
「そうです。これは私にも私の家にも利益になります」
「それはどうして?」
「リクさんはピオネの頼みで予定を変えて玄海領に戻るんです、なのでピオネにも恩を売れます。白山領がピオネの計画に加わっても加わらなくても、どちらにしても我が白犬家には利益になると思いませんか? タリアもアンもどちらかを選ぶのではなく、どちらになっても自分達が有利になる様に行動すべきですよ」
「そうね……」
アイの言う事はもっともだ。
「それと、これはまだ内密な話ですが……実はピオネの他にもう一つ各地から仲間を集めている集団があるみたいです」
「どう言う事?」
「私もまだ詳しくは分からないんですが、どうやら魔族が裏で糸を引いているみたいで、獣人のピオネに従うのではなく自分達主導で世界を支配したいらしいです」
「魔族が世界を支配! それは大変じゃない! どうして内密なの! 早くお父様に知らせないと戦争になるわよ! それとピオネはこの事を知っているの?」
「どうでしょう……知らないと思いますよ。それか知らない振りをしているのか……」
「何で!」
「魔族が裏で糸を引いている様ですが獣人とも友好的なのだと聞きました」
「誰から?」
「リクさんからと……それと従姉の桃犬カウヨがその組織に潜入しているんです」
「潜入! 魔族の組織に……危なくないの?」
「それが意外と獣人にも友好的だと……」
「魔族が?」
「ええ。カウヨの他にも朱森領の赤鷹族の者や玄海領の黒鯱族の者もいるみたいです」
「信じられない……」
アイの話は私には荒唐無稽なものだった。
それからもアイからピオネの組織についてや、もう一つの組織についても詳しく話を聞いた。だがアイもそこまで詳しい内容までは分からない様で、ピオネの組織については明日ユキから直接聞いた方が良いとアドバイスされ、もう一つ組織についても「魔人国に行くならカウヨを紹介するから直接聞きて」と言われてしまう。
「ねえアイ、リクさんは本当は何しに風大領に行くつもりだったの?」
私とアイの話が一段落ついた時、アンがアイにそう聞いた。
「会わないといけない人がいるらしいよ」
「でも、今回はそれを止めて玄海領に戻るの?」
「そうみたい。「個人的な用事より、今回はお世話になった玄海領を優先する」って言ってたから。何か恩を感じているみたい。よく分からないけど……リクさんは親がいない捨て子だったらしいわよ。それを領主様が引き取ってくれたって言ってた」
アイは国境の町に来る間にリクさんから身の上話を聞かせてもらったらしい。




