親の言いなり
『私……どうしたらいいの……。こんなに自分が優柔不断だと思わなかった。ピオネ達の話は理解出来る。でも……お父様に領主を辞める様に言うのは……それにお母様を説得するのはもっと難しいはず……でも……でも……白山領が取り残されるのは……でも……でも……でも……』
私の頭に『でも……』と言う言葉が溢れる。
『これまで私は本当の意味で自分で何かを決めた事があったのだろうか。今回の風大領への使節団の特使も初めから決まっていた様だった。領主官邸の秘書見習いもお父様に言われて始めたものだった。使徒の絵本からの伝言をみんなに披露したのも私1人では何も出来なくて、誰かに助けて欲しくて話した様な気がする……』
コンコン
「タリア。アイが来ました」
与えられた個室にノックの音とアンの私を呼ぶ声が聞こえる。
「……はい」
私は返事をすると気持ちを切り替えようと深呼吸をした。
「お久し振りですね」
「お久し振りです……タリア様」
アイは私の挨拶に伏し目がちで答える。
「これからよろしくお願いします。アイも私を様付けではなく呼び捨てで呼んで下さい。これから長い旅になるのですから」
「タリア、その事なんだけど。アイは私達と一緒には行けなくなったんだって」
「一緒に行けない?」
「そうなのです。実は私と一緒にこの町まで来た亀の獣人のリクなのですが、本当は魔人国の風大領まで行くはずだったのです。ですが……予定が変更になりまして、玄海領へ戻ると……それで私もその旅に同行する事になってしまって……」
「それはゴウケン様も了承済なのですか?」
「はい。私はリクさんと同行する様にと言われたのですが」
「それは行き先が変わってでもですか?」
「そうです。父からは『リクさんの護衛をして騎士になるための実績を作る様に』と……」
「それではアンも?」
「私は『タリアの護衛をして来い』と、父からはそれで騎士にするからと言われています。『目的地が同じならアイと協力しておけ』とも言われていたので。多分、私の護衛としての能力に不安があったんだと思います。ですからアイの力を借りて私にも実績を作らせたかったのだと」
『この2人も私と同じで親の言いなりなのか……』




