ラムメェからの勧誘
私達の案内された部屋はとても豪華なものだった。
「ここは領主を泊める部屋ですよ。なので家族やメイドなどの部屋も複数あるのです。3人で泊まるには丁度良いからとユキから言われたのですが、気を付けて下さいよ。調度品も高い物ばかりなので……」
羊族の女性に言われバァーテスが入口近くに飾られていた花瓶に触りそうになって手を引っ込める。
「何で私達をこの部屋に?」
「一応、魔人国への使節団の特使と聞いたからですよ」
「私達が使節団だとどこで聞いたのですか?」
「それは私も商人なので情報はいろいろな所から入って来ます」
「商人なのですか! 私はてっきりピオネの部下の方かと……」
「部下……ピオネの協力者ですよ。私達の組織に明確な上下関係は無いので。ピオネは纏め役で組織の顔が役割なだけ。私は予算と商売関係の調整が役割……」
「もしかして白羊族って事はコットン商会の関係者?」
「私はラムメェ。コットン商会の会頭です」
「会頭! 会頭って商会のトップ!」
後ろでバァーテスが驚きの声を上げる。
「世代交代ですよ。いつまでも老人達に任せていては時代に乗り遅れますからね」
「会頭自ら案内してくれるとは……」
「フハハ。人手が足りないのでね。今は特に……なのでユキは貴女を私達の組織に誘いたいのでしょうね。父親が現領主と言うのも価値がある。それに貴女も父親が騎士団の将軍ですよね、仲間に欲しい人材だわ」
「私は秘書になるんです」
「秘書? それならピオネの秘書……いや私の秘書になれば良いよ!」
そう言ってラムメェはアンを勧誘したのだった。
「考えておく……」
アンはそうラムメェに返事をして部屋を出て行ってもらった。
「仲間を集めている様ですね。ユキの話し振りからピオネ達は各領から参加を確約されていると思いましたが、ラムメェの話からするとそれほどでもないかもしれませんね」
「そうですが、それなら参加するのは早い方が良いとも言えませんか? 後での参加では存在感が埋もれてしまうかもしれませんよ」
「アンの言う通りかもしれませんが、私の一存では参加を決められませんから……」
「それなら私達が参加すると言うだけなら問題無いのでは? ターガツ様や私の父とは関係無いと念を押しての参加ならば、私達はまだ秘書見習いなのですから。正式には白山領の職員では無いかと……」
「そうですね。明日一度話し合ってみますか」
「待って下さい。私はどうしたら……私は白山領の正式な騎士なのですよ!」
「ああ……バァーテスは……まずは使節団として風大領へ行って帰ってきてからの話ですからバァーテスはその間にどうするか考えておいてもらう事に……ね。私達もどうするかまだ決めている訳では無いのですし……ね、アン」
「……はい」
私はそう言って全部を曖昧にしようとしていた。




