今日の宿
「それで、タリアの返事は?」
「ピオネに協力するかの返事?」
「そう」
「…………」
私は答えを出せずにいた。
『ピオネ達の言う通りこのままだと白山領は取り残されてしまう可能性が高い。お父様の説得……多分、説得は出来る。しかしお母様は……それと騎士団……』
「悩む様ならまた後で話をしよう。どちらにしても私達もお客様を待たせている。これ以上はゆっくり話してる暇は無いんでな。ユキ、後は頼んだ。宿を紹介してやるといい」
「そうですね。分かりました」
ピオネはそう言うと急ぐ様に行ってしまう。
「じゃあ、宿に案内するから着いて来て」
「待って、その前に私達この町で待ち合わせしてる人がいるのだけど」
アンは案内しようと歩き出したユキを止める。
「アイの事?」
「そうだけど……何で? アイと知り合い?」
「まあ、知り合い……だね…一応。玄海領からのお客様の連れだったから」
ユキは言葉を選びながら答える。
「玄海領からのお客様って亀の獣人の事?」
「そう。そっちとも知り合いだったんだ。それなら話が早い、同じ宿にしようか」
そう言われて私達はユキに着いて行く事にしたのだった。
私達の案内された宿は外観からもかなり大きく立派な建物で、宿泊費も高そうに思えた。
「タリア、ここに泊まるの?」
アンは建物を見上げながら聞いてくる。
「その様です」
「旅の資金は大丈夫? 私達の旅はまだ始まったばかりで、これからの魔人国の旅程の方が長いんだよ」
「分かっています」
「どうかした? ハハハ、もしかして宿泊費の心配? 大丈夫、ここは私達が経営している宿だから。ここは各領からのお客様のために建てたのよ。だからタダで泊まらせてあげるから」
私達が小声で宿代の心配の話をしているとユキは笑いながら宿代が掛からないと言う。
「でもよくこれほどの建物を造れましたね」
「ああ、それはエルフと魔族と人族と獣人族と亜人族みんなが協力して造られた建物だから。それにここは先月出来たばかりなのよ」
ユキは出来たばかりだと言う宿の扉を開けた。
「うはぁ~」
思わず溜息混じりの声が漏れてしまうくらいの内装も立派なものだった。
「タリア達は3階の部屋に泊まってもらうわ。後でアイを呼ぶからまずは休んで。それから夕食はどうする? 外に食べに行く? それともここで食べる? ここの食事は聖人ミカ様から教えてもらったレシピで作られた特別な食事よ」
「「「ここで食べる!」」」
そうユキに聞かれ私達は声が揃ってしまった。




