勧誘
「タリアは白獅子の里が脱税していると疑っているんでよね? でも、そもそもこの町は絵本の国でも魔人国でも無い特別な町のはず。なので脱税には当たらない」
「だから白獅子の里の税金は変わっていないと言うのね。でも、それは成り立たないと思うけど?」
「なぜ?」
「それはこれだけの人と荷物がこの町に集まっているなら、その手前の獅子の里を通った事になる。すると領内を通るための通行税があるはずだわ!」
「ウハハ。残念。通行税は掛からないんだな」
「どうして」
「それは……白山領を通らずに荷物を運んでいるから」
「だからそれはどうやって!」
「着いて来て」
ピオネはそう言うと私達を町の中心部へと連れて行った。
「ここは?」
「ここは絵本の国と魔人国の中間地点。本当の国境」
「それがどうしたの?」
「ここから北に続く道と南に続く道があるのが分かるよね?」
確かに私達の来た東の街道と十字に交わる道がある。
「ここを真っ直ぐ北へ向かうと玄海領に着く。そして南へ向かうと朱森領だ」
「そんな訳……無いはず。絵本の国で他領に行くには絶対に領都と中央神殿を通らないといけない決まりが……」
「でもここは白山領じゃない。だから……」
「それは詭弁だわ!」
「タリア、時代は変わるんだよ。いつまでも魔物に脅えて旅をする時代じゃないんだ。私達の新たに造った街道なら魔物との戦闘をせずに安全に荷物が運べるし、人も行き来出来る。素晴らしと思わないかい?」
「それは……」
私はピオネの話に何も言い返せなかった。
「ねぇタリア。タリアも私達に協力しない?」
「協力?」
ピオネに代わってユキが話す。
「そう。タリアが協力してくれれば領主のターガツ様も説得出来ると思わない?」
「お父様を説得する……何の説得?」
「領主の実権をピオネに譲る説得」
「それはお父様に領主を辞めろって言うって事……だよね?」
「別に領主を辞めなくてもいいんだよ。ピオネに実務を任せてもらえればね」
「……お父様は了承する気がしますが、お母様や他の高官達はどうでしょう」
「それなら大丈夫。私が父を説得するから。後は騎士団を説得出来れば……」
そう言ってユキは私の後ろにいるアンを見た。
「……え? 私? 私に父を説得しろって? 無理無理! 無理! 絶対に無理!」
「そこまでか……それなら戦うしかなくなるけど良いの? 私は強いよ!」
そう言ってピオネは銃を構えた。




